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第30話 取り立て

前回のあらすじ

借金を立て替えた

 

 その後ユハナに連れられ、わたし達が泊まる部屋へと案内された。

 その部屋は最上階にあり、この旅館で一番大きいらしい。

 窓を開けると、温泉街が一望出来た。


「それじゃあ、ウチはこれで失礼するね」

「あ……ちょっと待って」


 立ち去ろうとするユハナを、わたしは引き留める。

 まだ肝心なことを聞いていなかった。


「ユハナは何で、あの男の人に連れて行かれそうになったの?」

「あ〜、それね……」


 ユハナはバツが悪そうに視線を逸らし、頬を掻く。


「お父さんが勝手に、ウチの身柄を借金の担保にしてたの。まぁ、一言で言えば人質ね」

「それで、そのお父さんは……?」

「とっくの昔にウチとお母さんを置いて逃げたわ」

「あ……ごめんなさい」


 わたしが謝ると、ユハナは両手を振る。


「いいよ、謝らなくて。過ぎたことだし、ウチは気にしてないから」

「そう……」

「ねぇ、あの男が来たみたいだけど」


 外を見ていたアレンがそう言うと、ユハナは窓辺に駆け寄る。

 わたしも同じく外を見ると、さっき足湯の所で出会った男の人が、この旅館に向かって歩いて来ていた。

 それだけでなく、彼の取り巻きとおぼしき人達もざっと見ただけでも十……いや、二十人くらいいた。


 ユハナは窓から離れると、駆け足で部屋を出て行った。

 わたしとアレンは顔を見合せ頷き合うと、彼女の後を追いかけた―――。




 ◇◇◇◇◇




 玄関の陰に隠れて、外の様子を窺う。

 旅館の外では、イオさんが男の人達と対峙していた。

 彼女の隣には、ユハナが立っている。


「さぁ、出すモン出してもらおうか!」


 足湯の所で見かけた男の人が、ニヤニヤしながらそう言ってくる。

 たぶん、お金を返せないとタカをくくっているのだろう。


 するとイオさんが、後ろ手に持っていた麻の袋を男の人に差し出す。


「どうぞ。ちゃんと利子も含めた金額分入っています」


 イオさんの行動を予期していなかったらしく、男の人とその取り巻き達は面食らっていた。


「さっさと袋を受け取って、ウチとお母さんの前から立ち去って!」


 ユハナが声高にそう言うと、男の人は怒鳴り散らす。


「うるせぇ! カネはもらっていくが、人質のお前も一緒に連れて行く! これは決定事項だ!」


 そう言うと、ユハナに向かって手を伸ばしてきた。

 するとアレンが素早く動き、ユハナの前に躍り出る。わたしも玄関から飛び出る。

 そしてアレンは男の人の手を、鞘に入ったままの剣ではね上げる。


 アレンは二人を守るように佇み、男の人とその取り巻き達と対峙する。


「この人達に手出しはさせませんよ」

「テメェは!? その小娘の旦那!」

「あ〜……。それ、ウソなんですよ。本当は僕は、この人達に雇われた用心棒なんです」


 もちろんそれもウソだ。

 だけどこちらの事情を知らない男の人達は、それを信じたようだった。


「だったらテメェを潰して、そこの小娘を連れて行く! 野郎共、やっちまえ!!」


 男の人の指示を受けて、取り巻き達がアレンに攻撃を仕掛けてくる。


「ユハナ、イオさん。アリシアの側にいてください」


 アレンは二人にそう言い、向かってくる取り巻き達を冷静に処理する。


 彼の指示に従って、二人がわたしの側に駆け寄って来た。

 するとイオさんが、心配そうな顔をして尋ねてくる。


「大丈夫でしょうか? あれだけの人数を相手に……」

「アレンなら大丈夫ですよ。ほら」


 わたしがそう言うと、イオさんだけでなくユハナも驚きを露にしていた。


 アレンの手によって取り巻き達は全て倒されており、残すは男の人だけとなった。

 さすがに手加減していたらしく、取り巻き達からは呻き声が聞こえていた。

 それでも骨の一、二本は折れているかもしれない。


 一人だけ無傷な男の人は、腰が抜けたのか地面に尻餅をついていた。


「これに懲りたら、金輪際あの二人とこの旅館に一切関わらないでください」


 鞘に入ったままの剣を突き付けながら、アレンはそう言った。

 その言葉に、男の人は首を激しく縦に振る。


「なら早く、この場から立ち去ってください」


 その言葉通り、そそくさと男の人は立ち去ろうとする。

 そんな彼を、アレンは呼び止める。


「ああ、だけど。もし僕がこの町を再び訪れた時に、この旅館が無くなっていたりしたら……分かってるよな?」


 最後の方は少しだけドスを効かせて、鞘からほんの少し剣を引き抜きながらそう釘を刺す。


 その気迫に圧されて、男の人は取り巻き達を見捨てて一目散にわたし達の前から立ち去って行った―――。






怖いなぁ、世界最強……。




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