第26話 迎撃
前回のあらすじ
誓い合った
翌日。
森の中を進む馬車の御者台で、わたしは頭を抱えていた。
昨日のことを思い出すと、アレンの顔をまともに見ることが出来なかった。
そんなわたしに、手綱を握っているアレンが声を掛けてくる。
「アリシア、その……。昨日言ったことは本心だから」
それは分かってる。
分かってるけど、あの物言いはまるで……。
「…………プロポーズ、って受け取るけど?」
「…………それはお互い様だろう?」
「……」
「……」
しばしお互いに無言になり、やがて沈黙に耐えきれなくなったアレンが口を開く。
「……まぁ、プロポーズかどうかはともかくとして、アリシアを守るのは本当だから」
「うん……。でも、いつかちゃんとしたプロポーズをして欲しいな?」
「うっ……。ぜ、善処します……」
わたしがそう返すと、アレンは視線を逸らしながらそう答えた。
とその時、前を進んでいた馬車が突然停まり、アレンも手綱を引いて馬車を停める。
すると、商隊のリーダーが大声で叫んでいた。
「進行方向に魔物が現れました! 冒険者の皆さんは、魔物の討伐をお願いします!」
「魔物か……」
「行きましょう」
そう言って、アレンと連れ立って商隊の先頭に向かう。
◇◇◇◇◇
アリシアと共に商隊の先頭に行くと、すでに他の冒険者達が魔物と戦っていた。
商隊の前に現れた魔物はレッサーワイバーンと呼ばれる、Bランクの竜の魔物だった。
その魔物はワイバーンの劣化版で、翼はあるけど空を飛ぶことは出来ない。
だけどワイバーンとしての能力はそのままなので、油断しているとAランク冒険者であっても命を落とすことがある。
そんな魔物を相手にしている冒険者達を見るけど、幸いにも大きな怪我をしている人はいなかった。
しばらく様子見していると、後ろの方が騒がしくなった。
「ちょっと後ろの様子を見てくる。アリシアはここにいて」
「分かったわ」
そう断りを入れてから、僕は騒ぎのする方へと駆け寄って行く。
現場に到着すると、そこにはもう一匹のレッサーワイバーンが商人達を襲っていた。
僕はすぐさま両腰の剣を引き抜き、魔物に立ち向かっていく。
するとレッサーワイバーンも標的を僕に変えたようで、頭をこちらに向けてくる。
相手はその巨体で突っ込んできて、それを僕は剣を交差させて真正面から受け止める。
相手の進路上に馬車があったから、避けるようなことはしなかった。
身体強化魔法で筋力を強化し、さらに防御魔法も展開したけど、少しだけ押されてしまった。
だけどこれはチャンスでもある。
僕はレッサーワイバーンに密着した状態から、最も得意な攻性魔法を放つ。
「《ギガファイア》!」
火属性上級魔法を至近距離で喰らい、レッサーワイバーンは丸焦げの死体へと変わり果てた。
魔物が動かなくなったのを確認した僕は、商人達の方に目を向ける。
「大丈夫ですか? 怪我人とかは……」
「怪我人は多数出たが、貴方が駆けつけてくれたおかげで死者はいない。ありがとう、助かった」
僕の質問に、比較的軽傷の商人が答えてくれた。
死者が出なかったのは本当に良かった。
「いえ、それほどでも。……それでは、怪我人の治療をしますね」
僕はそう言うと、回復魔法で次々と怪我人を癒していった。
人数が多いから、全員を治療するのに時間がかかりそうだった。
怪我人を治療していきながら、僕は商隊の先頭に目を向ける。
あちらは大丈夫だろうか……?
◇◇◇◇◇
アレンと別れてからしばらくして、こちらでも変化があった。
レッサーワイバーンは冒険者達の手で討伐されたけど、その直後に上空からワイバーンが降りてきた。
レッサーワイバーンを討伐したばかりで疲労困憊な冒険者達に向けて、わたしは言う。
「わたしが相手しますから、皆さんは後退を!」
「あ、ちょっと、君!」
誰かがわたしを止めようとしたけど、その静止を振り切ってワイバーンに向かって行く。
わたしが鞘から剣を引き抜くと同時に、ワイバーンは大きく口を開いてブレスを放ってきた。
わたしは防壁魔法で、後ろの冒険者もまとめてブレスから身を守る。
ブレスが止んだ後、わたしはワイバーンに向かって魔法を放つ。
「《メガサンダー》!」
雷属性中級魔法を喰らい体が痺れたのか、ワイバーンはその場から動かなかった。
その隙にわたしはワイバーンに接近して、飛ぶことを出来なくするために、剣で左翼を斬り落とす。
翼を斬り落とされて、ワイバーンは悲鳴を上げ怒り狂う。
ワイバーンはわたしを喰い殺そうと、大きく口を開けながら迫ってくる。
だけどわたしは冷静に対処する。
「《ギガサンダー》!」
ワイバーンの口目掛けて魔法を放ち、ワイバーンの体内から雷撃が襲い掛かる。
ワイバーンは悶絶して、やがて力尽きて地面に倒れ伏した。
すると冒険者達のいる方から、大きな歓声が上がる。
突然のことに困惑していると、商隊の後ろから戻ってきたアレンがわたしに近寄ってくる。
「お疲れ様、アリシア」
「うん。……なんで彼らはあんなに騒いでいるの?」
「アリシア。キミはワイバーンを一人で討伐したのかい?」
「え? うん、そうだけど……」
質問の意図が分からずに首をひねっていると、アレンは続ける。
「ワイバーンはAランクの魔物なんだよ。それをたった一人で討伐したんだから、彼らが騒ぐのも無理はないよ」
「そうなんだ」
「それに、ワイバーンを単騎で討伐したのも大きいね。そういった人に対して贈られる称号があるんだ。知ってる?」
「ううん、知らない」
首を左右に振ると、アレンは笑顔を浮かべながら教えてくれた。
「『竜殺し』って言うんだ。おめでとう、竜殺しの勇者様?」
アレンはわたしをからかうように言い、冒険者達がいる方へと歩いていった。
わたしもアレンの後を追って、彼らの下へと歩いていった―――。
竜殺しで元魔王の勇者なヒロイン……。属性盛りすぎでは?
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