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第25話 星空の誓い

前回のあらすじ

竜人の里に向けて出発した

 

 夜になり、商隊は移動を止め野宿の準備をしていた。

 その間に、商隊の護衛をする冒険者達で話し合いをして、夜の見張りの順番をパーティー単位で決める。

 その結果、わたしとアレンは一番最初の見張り番になった。




 ◇◇◇◇◇




 毛布にくるまりながら、夜空を眺める。

 少し肌寒いけど、空気が澄んでいるおかげで星がキレイに見える。


 商隊が野宿している場所は、見晴らしの良い平原だった。

 ここなら、夜行性の魔物が現れても不意打ちを喰らうなんて事態にはならない。


 わたしは地面に座って星を眺めつつ、索敵魔法で周囲の状況を確認する。

 今のところどこにも異状はないようだ。


 するとアレンが、マグカップを二つ手に持ちながらやって来る。


「はい、アリシア。温かい飲み物」

「ありがとう」


 お礼を言ってからマグカップを受け取り、その中身を口に含む。

 熱い液体が喉を通り過ぎ、冷えきっていたわたしの身体を芯から温める。


 ホッと一息つくと、アレンはわたしの隣に腰を下ろす。

 彼は防寒具の一つも羽織っていなくて、わたしは気になって尋ねた。


「アレン、寒くないの?」

「少し肌寒いけど、我慢出来る寒さだから……」

「わたしの毛布に入る?」

「いいの?」


 コクリと頷くと、アレンはわたしの毛布に入ってくる。

 彼とお互いの身体が密着する形になり、さっきよりも温かく感じる。

 アレンは飲み物を飲みつつ、わたしに尋ねる。


「僕が来るまで何してたの?」

「星を眺めてた」

「……見張りは?」

「ちゃんと索敵魔法で辺りを警戒してたから大丈夫。問題ないよ」


 アレンの肩に頭を乗せながら、わたしはそう答える。

 するとアレンも星を眺めるように視線を上に向けて、わたしも彼につられるようにして再び星を眺める。


 しばらくお互いに無言のまま星を眺めていたけど、やがてアレンがマグカップを地面に置き、ポツリと呟く。


「…………ごめん、アリュー」


 何について謝っているのか分からず、わたしも空になったマグカップを地面に置きつつ、彼に聞き返す。


「……何が?」

「キミを守れなかったこと。そして、キミを……手にかけたこと」


 そう言うアレン……アレクは、自責の念にかられているような気がした。

 わたしは彼の肩から頭を離して、首を左右に振る。


「謝らないで、アレク。わたしは納得して、貴方の剣を受け入れたんだから」

「だけど……! 僕はずっと、アリューに謝りたかった! 僕がもっとしっかりしていれば、あんなことには……!」


 アレクはわたしの方に顔を向け、そう叫ぶ。

 声量は抑えられてたから、わたし以外の人にその叫び声が聞こえるようなことは無かった。


 アレクは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。

 そんな彼をわたしは優しく抱き締め、彼の胸元に顔を埋める。


「そんなに自分を責めないで、アレク。わたしは後悔してないから……」

「なんで……」

「だって、好きな男の子の手で逝けたんだよ? それ以上に幸せなことって、あの時は無かったもの。それにアレクは、わたしとの約束をちゃんと果たしてくれたんでしょう?」

「ああ……。それくらいしか、残された僕に出来ることはなかったから……」

「じゃあ、赦すよ。世界を平和にするっていう、わたしとの約束をちゃんと守ってくれたんだから……」


 わたしがそう言うと、アレクはわたしの身体をきつく抱き締めた。

 まるでもう二度と手離さないように、きつくきつく……。


「ありがとう。こんな情けない僕を赦してくれて……」

「情けなくなんかないよ……。アレクは今までも、そしてこれからも、わたしのたった一人の勇者だよ」


 そう言って、わたしも彼を抱く腕に力を込める。

 二度とアレクと離ればなれにならないように……。


 ちょうどいい機会なので、わたしはずっと気になっていたことを尋ねる。


「ねぇ、アレク。世界を平和にした後、アレクはどうしたの?」

「勇者の座は、妹に譲った」

「妹って……イレーナちゃん?」

「うん、そうだよ」


 アレクとは付き合っていたから、彼の妹とも面識がある。

 イレーナちゃんはおとなしい性格で、誰にでも優しく接する、とても兄想いな女の子だった。

 そんな彼女は、わたしが魔族だと分かっても態度を変えず、寧ろわたしとアレクのことを祝福してくれてもいた。


「それでアレクは、どうしたの?」

「勇者を引退した後は、山奥でひっそりと暮らしてたよ」

「結婚とかしなかったの?」

「しないよ。アリュー以上の女の子なんてどこにもいないからね」


 とても嬉しいことを言ってくれる。


 わたしが勇者の血を引いていると知った時から、わたしはアレクの子孫なんじゃないかって思ってたけど、違ったみたい。

 わたしはイレーナちゃんの子孫だったようだ。


 するとアレクは抱擁を解いて、わたしの身体から離れる。

 顔を上げると、彼は真っ直ぐにわたしを見つめていた。


「前世で果たせなかった誓いを、今果たすよ」

「何……?」


 そう聞き返すと、アレクは前世では叶うことの無かった永遠の誓いを口にする。


「僕はずっとアリューを……アリシアを守ってみせる。そして幸せにする。今度こそ、必ず」

「わたしもアレクを……アレンを支え続けることを誓うわ。今度こそ、絶対」


 そう誓い合うと、どちらからともなく顔を近付け、そして唇を重ねる。




 満天の星の下、わたしとアレンは、前世で果たすことが出来なかった誓いのキスを交わした―――。






書いてて砂糖吐きそうになりました。(実話)




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