第27話 そう言えば……
前回のあらすじ
竜殺しになっちゃった
その日の夜。
野営地では、ちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
というのも……。
「アリシアさん! ウチのパーティーに入ってくれ!」
「いや、ウチのパーティーに!」
「是非とも私達のパーティーに! あと、お姉様と呼ばせてください!」
「あ、あはは……」
周囲を冒険者達に囲まれながら、わたしは苦笑いを浮かべるしかなかった。……なんかどさくさ紛れに、スゴいこと要求してきた人がいたような?
こんなことになっている原因は、わたしが単騎でワイバーンを討伐したからだった。
それでわたしは、他の冒険者達から熱烈なアプローチを受けていた。
わたしが困り果てていると、とても頼りになるナイト様が現れた。
「ごめんね、みんな。アリシアは僕とパーティーを組んでいるから、他の人とは組めないんだ」
そう言いながら、アレンは両手に料理の載ったお皿を持ってわたしの隣にやって来た。
「アレン」
わたしがそう言うと、周りにいた冒険者達がどよめいた。
「アレンって、あのアレンか?」
「まさか、『氷炎の魔剣士』?」
「マジか!? SSランク冒険者の!?」
「そんな人とパーティーを組んでるって、アリシアさんの実力ってとてつもないのでは……?」
「……俺じゃあ、実力が釣り合わないな。諦めよう」
「オレも」
「私も」
すると冒険者達は、わたしの前からぞろぞろと立ち去った。
そしてこの場に残ったのは、わたしとアレンだけだった。
アレンはわたしの隣に腰を下ろし、お皿を差し出してくる。
「はい、アリシアの分」
「ありがとう」
お礼を言ってから、お皿を受け取る。
お皿の上には、ワイバーンのお肉を唐揚げにした物が載っていた。アレンの方にも同じ物が載っている。
このお肉はわたしが討伐したワイバーンの物で、食材としても美味らしいから、わたしはコレを調理してもらうことにしたのだ。
そしてこのお肉は、他の冒険者達にも振る舞われている。
一口大の唐揚げにフォークを突き刺すと、中からじゅわっと肉汁が溢れてきて、それを口に含む。
ワイバーンのお肉は鶏肉に似た食感で、とても美味しかった。
二、三個食べたところで、わたしは気になっていたことをアレンに尋ねる。
「ねぇ、アレン。SSランク冒険者って何?」
「えふえふはんふほうへんひゃっへひうほは」
「食べるか喋るかどっちかにしよう?」
「…………(もぐもぐ)」
食べる方を優先したらしい。
そして唐揚げを嚥下すると、ようやくわたしの質問に答えた。
「……SSランク冒険者って言うのは、Sランク冒険者の上のランクなんだよ。今のところ、僕しかいない」
「何をやらかし……何をして昇格したの?」
「今やらかしてって言いかけてなかった?」
「言ってない」
アレンから視線を逸らしながら、そう答えた。
前世でアレクは、常識を疑うようなことを色々とやらかしてきた。
たった一人で、当時の魔王軍四天王最強を討ち取ったり。
空を飛べないなら、風属性魔法で翔べばいいと言って、実際にやってみたり。
挙げ句の果てには、わたしに逢いたいという理由だけで、単身魔王城にやって来たり。
まぁとにかく、色々と常識外れのことをやらかすのが、アレクという勇者だった。
今回もその類いだと思ったけど、違ったのだろうか……?
「まぁいいや。SSランクに昇格したのは、グリフォンを単騎で討伐したからだよ」
「グリフォンって……Sランクの魔物じゃなかったっけ?」
そう聞き返すと、アレンは肯定するように首を縦に振る。
Sランクの魔物は、Sランク冒険者が複数人いてようやく五分五分になるから……。
やっぱりというか、案の定、アレンはやらかしていた。
答えを予想しつつ、そうした動機を尋ねる。
「なんでそんなことをしたの?」
「なんとなく」
予想通りの答えが返ってきた。
アレンは時折、後先考えずに行動することがある。
……いや、そうでもないと、魔王と付き合おうなんて思わないか。
そんなことを考えていると、アレンが肘でわたしの身体をつつく。
「そんなことより、早くしないと唐揚げ冷めちゃうよ?」
アレンに促され、残りの唐揚げも全て平らげる。
機会があればもう一度食べたいと思うくらいには、美味しい食材だった―――。
◇◇◇◇◇
今日の夜の見張りは、三番目だった。
昨日と同様、アリシアと仲良く一枚の毛布にくるまって見張りをする。
索敵魔法も使って周囲を警戒するけど、今のところどこにも異状はない。
ふとアリシアの方に目を向けると、彼女はうつらうつらとしていた。
「アリシア、眠いの?」
「……んぅ、大丈夫……」
そう返事をするけど、アリシアの目は眠そうにとろんとしていた。
僕は何回か夜半の見張りの経験はあるけど、冒険者に成り立ての彼女にはキツいようだ。それが初めてなら尚更。
「見張りは僕がするから、アリシアは寝ちゃってもいいよ」
「でも……」
「いいから、気にしないで」
「うん……」
そう言ってアリシアは、僕の肩に頭を預けてくる。
それから少しして、規則正しい寝息が聞こえてきた。
アリシアはあどけない表情で眠っていて、僕は優しく彼女の頭を撫でる。
すると彼女は口元を緩め、幸せそうな顔をする。
それを見て僕も、口元が緩む。
そして次の人と交代するまでの間、ずっとアリシアの頭を撫で続けていた―――。
ワイバーン肉の唐揚げ……。(ゴクリ)
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