ソンという男
「おい、酒と女が足りてねぇぞ。さっさともってこい」
第9エリアの東端。8階建ての立派な建物に怒号が響く。
「申し訳ありません!ただいまお持ちしました。ほら、入れ」
「おぉ。ご苦労。酒も女も上物だな。入れ。あとお前、もういいから。斬首ね」
必死になってやってきた職員が青ざめている。連れてこられた女は成人になったばかりの純朴そうな見た目だ。「斬首」という言葉を聞いて泣きそうな顔になっている。
「お、恐れながら。兄は寝ずに奉公して参りました。今、妹の私もソン様に捧げております。どうか、どうかご容赦いただけませんでしょうか。兄がいなくなれば、我が家に残されたのは祖母と母のみで立ち行かなくなります」
女が地べたに頭を擦り付けながら懇願した。職員の兄もその姿を見て土下座しながら許しを乞う。
「うんうん、知ってるよ。ぜーんぶ顔に書いてるもん。だから命じているの。お前ももうめんどいから死んでいいよー」
兄妹は兵に連れて行かれた。悲鳴が城内に響く。
「んーいいね。これがたまらんのよ。そうは思わないかい」
「この声、ほんと独特よね〜。死ぬ間際にしかこんな声を出す人いないものねぇ〜」
隣でソンの一番目をかけている女が色っぽい声を出しながらいう。
この城の頂点、ソンは一族が始まって以来、栄華を極めていた。欲しいものはなんでも手に入る。身長は2メートルをゆうに超える恵まれた体。腕は普通の成人男性の太もも2本分はある。体毛は濃く、口周りの髭も男らしさを際立たせる。誰も勝てない、それに加えて人の弱点を突く神の力もある。たとえ家柄に恵まれていなくとも、ソンは男として頂点に君臨できていただろう。
ソンは浴槽から出て、女の手をひく。相変わらず兄妹の悲鳴は続いている。
「おう、一発やるぞ」
「一発じゃ終わらないじゃない〜」
「せっかく俺らの仲間に入れてやろうとしたのに、あの女はバカだなぁ」
「私一人で相手するの大変なんだから、すぐに殺さないでよねぇ」
そこに側近のジョが入ってくる。武官で槍を背負っている。
「恐れながら、寝室に入られる前に一言入れておきたきことがあります」
「ジョか。申せ」
「第10エリアから入国した者がおります」
「名は」
「ケンという者です。どうやらあの娘の兄だとか」
「あぁ、あいつのか」
「妹を探している様子と衛兵から報告を受けております」
「どうせここまで辿り着くはずがない。畑すら出れんだろう」
「私もそう思っていたのですが、北家の助けを受けて、生き延びている様子です」
「北家と接触したのか。それは厄介だな。ケンというやつに刺客を送り込んで、殺してしまえ」
「御意。直ちに」
ジョが立ち上がり、窓に向かって手を出した途端、悲鳴が止まった。ソンは女を引き連れ、そのまま寝室へ消えていった。
いよいよ戦いが始まります。今まで長々と書いてきましたが、ここからが本当に書きたいところです。
第9エリアはこれから激戦の一途を辿っていきます!
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