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ゴブリンへと進化した子分。面倒くさいのでコブ次郎と名付けた。ゴブ太郎はマズイ気がしたのだ。我ながらセンスはない。それでもコブリンは踊りで喜びを表現している。


ゴブ次郎はゴブリン達の遺体から武器や防具を回収して、装備品を変えている。不恰好ながら剣や槍、盾も装備し、革兜まで被っていた。ゴブ次郎がゴブリンに進化しても、ゴブ次郎の言葉はわからない。相も変わらず意思の疎通は難しかった。

「砦に入りたい。」

身振りで付きで言うのだが、伝わらないのだ。

「案内しろ。」

そう命じたら歩きだしたから付いていくのだが、不安でしょうがない。連れて行かれた場所は砦を見下ろせる丘。会話は通じていなかったが、己が砦の内部情報を知らずに砦に入ろうとしていた事に気付かされた。

「間抜けだなぁ、俺。」

火勢の弱くなっている砦の入り口付近には、ゴブリン達が武器を持って待ち構えているのが見える。そのゴブリン達を指揮する金属鎧に身を包んだゴブリンもいる。訓練された兵士を思わせる動きである。

「1対1でなら・・、勝てるかなぁ。無理かなぁ。いや、うーん。」

小規模な砦だと思っていたがとんでもない。この砦1つにゴブリンがどれだけいるのか。

「ギー!!」

コブ次郎が何かを指差しながら叫んでいる。その指差す先では土がモコモコと盛り上がっている。穴が空いたかと思ったら、次々に犬頭の人間が飛び出してくる。コボルトだ。そのコボルト達は砦の様子を窺っている。


この『ゴブリンの城塞群』の説明をうっすらと思い出した。ゴブリンの魔王が地上で覇を唱え、コボルトの魔王が地下を統治する閉鎖世界、だ。

そうだった。あの女神はなんと言った?『戦場』だ。何かと何かが争っている場所という事だ。そんな事に気付かないとは危機感がないにも程がある。レベルアップに便利な場所程度の認識だったのだ。


コボルトの遠吠えが聞こえた。砦のゴブリン達もざわつき出す。砦から離れた場所で煙が上がっていた。ゴブリン達の別の拠点が攻撃を受けているのだろう。砦内のゴブリンの半数が燃えた入り口とは別の入り口から出て行った。それを確認してから50程のコボルト達が砦へと雪崩込んで行ったのだ。ケイ達がいる丘からは、その様子が良く見えている。

「頭、良いなぁ。」

ゴブリン達がコボルト達に翻弄されている様子が良く見える。コボルト達は常に複数でゴブリン達を狩っている。金属鎧のゴブリンもついには膝を付いた。ゴブリン達に動揺が走るのが遠目にもわかる。砦にいる金属鎧を着けたゴブリンは全部で4体。他にも離れた数ヶ所から煙が上がり始めていた。

「まずは目の前だ。混乱に乗じて奴を討つ。」

ケイは刀をスラリと抜いた。金属鎧を着たゴブリンと1対1で戦ってみるのだ。砦にいたコボルト達が騒ぎ出す。一際巨大な斧を持ったゴブリンが出現していた。

「良し、様子見だ。アレには勝てない。」

ケイの判断は早かった。君子危うきに近付かず。命あっての物種なのだ。ケイは自分自身が戦えるスキルを得た事で浮かれてはいた。だが、それ以上に自分自身の力を信用していなかったのだ。

巨大な斧を持ったゴブリンがコボルト達を蹴散らして追いかけ始めた。目の前の戦いは決着しそうだった。

「あれ?ゴブ次郎は?」

ケイの側に子分であるゴブ次郎の姿がなかった。剣や槍を抱えて砦に入っていくゴブリンの姿が1つ。しかし、ケイがその姿を見付る事は出来なかった。

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