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ケイが意識を取り戻したのは、スタート地点と然程変わらない場所であった。どれくらい意識を失っていたのかも分からない。

「敵に見付かってたら死んでたな。」

足元には幾つもの武具や袋が転がっている。ここに来た時には無かった物だ。

「え?えー?俺、疲れてるのかな?そういえば身体は気だるいし、下半身は違和感があるし。もしかして夢遊病?そんな馬鹿な。」

拾得物は有り難く戴いておこう。だが今日はここまでだ。疲れているのなら休むべきだ。

部屋に戻ると宿も城下も静かな時間になっていた。時計はないため何時かはわからない。崩れるように布団に潜り込む。

「おやすみなさい。」

(おやすみなさい。)

少女の声が聞こえた気がした。


異世界での生活は10日目を迎えた。

カルナとカノンはまだ戻っていない。するべきは修行なのだが、昨日の意識を失った事が怖い。しばらくは『死者の王国』には行きたくない。他の4つの戦場から選ばなければならない。『ゴブリンの城塞群』。ゴブリンは弱かったはずだ。弱いと良いなぁ。弱いと願おう。スキルを発動した。


繁った草木の森と岩肌が見える山々。そこにいくつもの城や砦が築かれている。そのような場所の林の一角にケイは現れていた。

林を抜けた先には丸太で作られた砦が見えている。武器は持ったか?腰には片手剣、右手には刀を持っている。ならば進め。

1歩、2歩。剣と盾を装備した緑色の生物と目が合った。

・・・・。・・・・。

1歩、2歩。ゆっくりと後退する。そして互いにUターンをして走り出した。

「えー?いきなり?いきなりですか?心の準備とかあるやん。」

追い掛けてくる者はいない。いないのだが、ギーギー騒ぐ声は聞こえる。わかる、わかるよ。皆で追い掛けてくるんだね。事態が悪化しました。

息を殺して身を潜める。3分もしないうちにゴブリン達がやって来た。身長は1メートルちょっとくらい。筋肉量や装備品はバラバラ。ギーギーと騒ぎつつバラけていく。自分を探しているのだろう。残ったのは2体のゴブリン。奴らが背中を見せた隙に襲い掛かるべきだ。


パキリ


後ろから小枝を折るような音が聞こえた。ギギギと壊れたブリキ人形のようにゆっくりと振り返る。奴らはそこにいた。追いかけっこの始まりである。

「くそっ、くそっ、くそっ!!」

自分の運の悪さを呪いながら全力で走りだした。ゴブリンの群れを引き連れながらである。ギーギー騒ぐゴブリン達は少しずつ合流して数も増えていく。走りながらファイアアローを発動させる。1本の火の矢が現れてゴブリンに命中。当たったゴブリンは火だるまと成りながら地を転がった。

ゴブリン達の動きが止まる。ゴブリン達が見つめる先は火に包まれた1体のゴブリン。その目と顔には恐怖が滲んでいた。転げ回っていたゴブリンからは火が消え、焼け焦げた臭いを放っている。そのゴブリンはゆっくりと立ち上がり、数歩歩いて雄叫びをあげる。周囲のゴブリン達から恐怖が消えた。そして焼け焦げたゴブリンが高らかと剣を掲げ、前のめりに倒れて息絶える。

遅れてゴブリン達から悲鳴が響いた。

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