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いきなり無職になったケイである。あと3日は宿に泊まれるという温情は貰った。第2分隊がいつ何と戦うかは聞けなかった。それはケイでは足手まといである事は分かっていたからだ。
どうするか。これから、どうするのか。
カルナ、ケイ、カノンに振り当てられた部屋にはカルナとカノンもいた。
「ケイ様、私は団長としての権限を利用してケイ様に付いていく。だが、カノンはそうはいかない。団へ帰属する必要がある。カノン、決まったか?」
「待ってください。任務に戻ればケイ様と離れる事になる。ケイ様と行動すれば国と家族を捨てる事になる。あ~、どうしよう。どうする?ケイ様、命令してください。」
カノンは未だに自分で決断ができない。いや、最初からカノンは決断ができなかった。騎士の道も親が決めた。今回の任務への志願も志願するように親が誘導していた。カノンは判断する事はあっても決断した事はなかったのだ。
「俺と来い、と言ったら来るの?それで後悔しない?家族を捨てれる?自分で決めないと後悔するよ。命令して欲しいならするよ。『自分で決めろ。』って。カノンさんはどうしたいか、じゃないの?」
人の人生を左右するような事を任せないで欲しい。
「私の名前はカノン・ビール。誉れ高きビール家の騎士。任務のために命を捨てて国を出発したのだ。・・・。いや、借金返済のお金のために任務に志願し、命を捨てる覚悟は持てなかったのだ。」
目を閉じて、懺悔のように自分語りをするカノンには初めて会った時のような凛々しさがある。
「すでに家族には別れは告げたのだ。父も母も私が帰ってくるとは思ってはいないはず。私はどうしたいのだ。・・・。私には信念がないのか。したい事がなかったのか。ただ必要とされたかった。騎士物語の騎士を演じたが無理だった。」
カノンが目を開けた。
「私は・・・。弱いから自分で決めたくなかった。命令して欲しかった。そして今も決められない。いや、言って欲しいのか。・・・。」
カノンの中で結論が出たようだ。
「私は既にケイ様から離れられなくなっている。それを確認しました。」
いつもの甘えたり、拗ねたような雰囲気はない。
「ケイ様、貴方に付いていきます。どのようなご命令でもどうぞ。いつでも剣となり、盾となり、妻でも姉にでもなりましょう。さぁ、『俺の子を産め!』と命じてください!」
最後で台無しだよ。
「カノンは決まりだ。まぁ、アタシは簡単には国を捨てられないからねぇ。最後はどうとでもするけど。で、これからどうするかだね。金はあるけど、私は戦いしかできない。近距離戦ならなんでもやれる。ゴブリンくらいなら千や二千、問題じゃないよ。カノンは?」
カルナからの今後の方針の確認である。
「私は剣と槍が人並みくらい、でしょうか。その他は駄目ですね。MPもないですし、弓は持つなと言われるくらいです。盾も無くしたので壁役も難しいかと。」
カルナとカノン。この2人と何をするのか。
「出来れば第2分隊を助けたい。でもカルナさんとカノンさんを死なせたくない。」
ケイははっきりと本音を告げた。
「戦いに参加したら、無事に帰れるとハッキリ言えるのはカルナ団長だけだと思います。」
申し訳なさそうにカノンが言う。
「ケイ様にはまだ戦いは無理だね。普段の動きを見る限りじゃゴブリンにも勝てないよ。」
カルナも同調する。2人して却下である。
「戦場でケイ様に何が出来るんだい?ケイ様を守るために第2分隊の誰かが死ぬ事になるよ。」
そう言われては何もできない。
「私はその騎士団長達と会ってくるよ。カノンは私の指揮下にいる事にしとく。カノンの槍や盾も必要だしね。ケイ様は買い物でもしといてください。」
お留守番、決定であった。いやいやいやいや。決定じゃないよ。
「俺も付いて行っていいかな?この2つを渡したいんだけど。」
ケイはベルトランから渡された感状と礼状を示す。
「それは?」
当時、テントに引き込もっていたカノンはベルトランの事は知らない。しかし、カノンの問いに答える者は居なかった。
「歩きで向かうけどケイ様は大丈夫かい?それと駐屯地ではカルナ様、カノン様って呼んでもらうよ。階級はともかく、身分に拘る奴は多いからね。出来るだけ大人しくしといてください。」
カルナは余計な事はするなとばかりにケイに注意を与える。かくしてケイ達は騎士団の駐屯地へと向かうのだった。




