22
領主の館での夕げは続いていた。
「ぶわはぁ、そんな任務があるんですなぁ。」
筋骨隆々の翁がここの領主であり、その一族も夕げには参加をしていた。
「カルナ殿はあの調査団にも参加をしていたとか。オラァの息子達も行ってな、帰ってこんかった。」
「それは・・・。お悔やみを申し上げる。」
「なぁに。未だにあそこで戦をしちょるに決まっとる。オラァや子供を待たせたままなぁ。」
領主の瞳は眠たそうに目をこする孫達を見ていた。領主も帰ってこない事はわかっている。しかし、孫には言えなかった。
そこに若者が駆け込んできた。
「何事じゃあ。客人の前じゃ。」
「山犬が!山犬が降りてきました!!村が襲われています!!」
「鎧!槍!弓じゃ!!民を館に入れろ!客人方、失礼する。」
事は夜戦へと移っていった。
広間にも情報は伝わり、混乱が広がっていた。
「ウチらは隊長待ちやな。」
「助けて差し上げたいのですが、勝手な事はできませんから。指示を受けてから最善を尽くすのみです。」
第2分隊の者達は落ち着いている。廊下からは情報が聞こえてくる。
「民を迎えろとの指示じゃ!」
「戦える者はいないのか!!」
「子供が!子供が家にいるんです!!」
先程のおばちゃんの悲鳴も交じっていた。
『だが、足は動く。今、行かないと後悔しよう。』
オッサンの言葉が甦る。
『英雄憑依』のウインドウを開く。英雄が勿体ない?馬鹿な!!強い英雄は取って置かないと?馬鹿な!!
人を救う速さが必要だ。そして大勢を相手にする能力が。ならば、この人だ。
「行ってきます。」
ケイは立ち上がり、走り出す。
「ちょっ、待ちぃ!!」
その声ではケイは止まらない。
「『曹操四天王』『三日で五百里、六日で千里』夏侯淵、憑依を実行します。」
ケイは馬上の人となっていた。
「山犬を蹴散らす!!」
「1つ」
馬を駆けさせながら弓を引き、矢を放つ。馬の速度も恐怖を感じるくらいに速いし、何より今の標的になった山犬がどこにいるかも見えない。
「2つ!!」
そして馬を止め、矢を3つ構えて放つ。アニメの世界の行為だ。
「これで5つ!!」
馬首をかえし、悲鳴が上がる方向へと向かう。
「おらぁ!!山犬ども、この夏侯妙才様が相手だ!!」
(な、なんで叫んでるんだよ!!)
「教えてやんのよ。お前らの敵はここにいるとな。知ってるか?あいつらは弱い者から狩っていくんだ。でもな、強敵が現れると動きが止まるのよ。群れのボスに指示をください、ってな。」
そう話しながらも次々と矢を放っている。矢が突き刺さり、息絶えた山犬が何頭か見え始めた。
襲われて絶命した人、負傷して動けない人、子供を抱き締めて震えてる人、竹槍を持って戦おうとしている人。
人の集団が見えた!!
「ふぅ。良く見ときな。」
馬上で腰をあげ、弓をゆっくりと引く。体の軸は絶対にぶれない。呼吸も穏やかであり、ドクン、ドクンという心臓の音が煩いくらいだ。
放たれた矢は真っ直ぐに飛んでいく。人々の間をすり抜け、幼子に飛び掛かろうとしていた山犬の口を貫いた。
神技である。
残りの山犬は尻尾を垂らして怯えている。
「逃がすわけないだろ?」
ケイの顔で獰猛に笑った。
全ての山犬を葬った後に夏侯淵が首を傾げる。
「何かおかしんだ。しっくり来ない。まだ終わってないんだ。」
(いや、全部倒したんじゃ。)
「勘だな。空気っていうか。うーーん。」
(話してる事がわかんない・・・。)
「何ていうか・・・。まるで用意された戦場で・・。」
(これは孔明の罠だ!とでも?)
「それだ!釣り出されたんだ!!今頃館は襲われてるな。」
(え?考えすぎじゃ?いや、それなら戻らないと!)
「ケモノのやり方じゃねぇ。鮮やか過ぎる。だから失敗した。ここに来たのは俺だけだからな。」
(わかんないけど、敵がいるの?狙いは?)
「俺は軍師じゃねぇ。わからん!孟徳なら気付くんだろうけどな。だがな・・・。」
(???)
再び馬を駆けさせ始めた。
「覗いてる奴がいそうな場所は読めるし、見えるんだよ。」




