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領主の館での夕げは続いていた。

「ぶわはぁ、そんな任務があるんですなぁ。」

筋骨隆々の(おきな)がここの領主であり、その一族も夕げには参加をしていた。

「カルナ殿はあの調査団にも参加をしていたとか。オラァの息子達も行ってな、帰ってこんかった。」

「それは・・・。お悔やみを申し上げる。」

「なぁに。未だにあそこで戦をしちょるに決まっとる。オラァや子供を待たせたままなぁ。」

領主の瞳は眠たそうに目をこする孫達を見ていた。領主も帰ってこない事はわかっている。しかし、孫には言えなかった。

そこに若者が駆け込んできた。

「何事じゃあ。客人の前じゃ。」

「山犬が!山犬が降りてきました!!村が襲われています!!」

「鎧!槍!弓じゃ!!民を館に入れろ!客人方、失礼する。」

事は夜戦へと移っていった。


広間にも情報は伝わり、混乱が広がっていた。

「ウチらは隊長待ちやな。」

「助けて差し上げたいのですが、勝手な事はできませんから。指示を受けてから最善を尽くすのみです。」

第2分隊の者達は落ち着いている。廊下からは情報が聞こえてくる。

「民を迎えろとの指示じゃ!」

「戦える者はいないのか!!」

「子供が!子供が家にいるんです!!」

先程のおばちゃんの悲鳴も交じっていた。


『だが、足は動く。今、行かないと後悔しよう。』


オッサンの言葉が甦る。

『英雄憑依』のウインドウを開く。英雄が勿体ない?馬鹿な!!強い英雄は取って置かないと?馬鹿な!!

人を救う速さが必要だ。そして大勢を相手にする能力が。ならば、この人だ。

「行ってきます。」

ケイは立ち上がり、走り出す。

「ちょっ、待ちぃ!!」

その声ではケイは止まらない。


「『曹操四天王』『三日で五百里、六日で千里』夏侯淵、憑依を実行します。」


ケイは馬上の人となっていた。

「山犬を蹴散らす!!」

「1つ」

馬を駆けさせながら弓を引き、矢を放つ。馬の速度も恐怖を感じるくらいに速いし、何より今の標的になった山犬がどこにいるかも見えない。

「2つ!!」

そして馬を止め、矢を3つ構えて放つ。アニメの世界の行為だ。

「これで5つ!!」

馬首をかえし、悲鳴が上がる方向へと向かう。

「おらぁ!!山犬ども、この夏侯妙才様が相手だ!!」

(な、なんで叫んでるんだよ!!)

「教えてやんのよ。お前らの敵はここにいるとな。知ってるか?あいつらは弱い者から狩っていくんだ。でもな、強敵が現れると動きが止まるのよ。群れのボスに指示をください、ってな。」

そう話しながらも次々と矢を放っている。矢が突き刺さり、息絶えた山犬が何頭か見え始めた。

襲われて絶命した人、負傷して動けない人、子供を抱き締めて震えてる人、竹槍を持って戦おうとしている人。

人の集団が見えた!!

「ふぅ。良く見ときな。」

馬上で腰をあげ、弓をゆっくりと引く。体の軸は絶対にぶれない。呼吸も穏やかであり、ドクン、ドクンという心臓の音が煩いくらいだ。

放たれた矢は真っ直ぐに飛んでいく。人々の間をすり抜け、幼子に飛び掛かろうとしていた山犬の口を貫いた。

神技である。

残りの山犬は尻尾を垂らして怯えている。

「逃がすわけないだろ?」

ケイの顔で獰猛に笑った。


全ての山犬を葬った後に夏侯淵が首を傾げる。

「何かおかしんだ。しっくり来ない。まだ終わってないんだ。」

(いや、全部倒したんじゃ。)

「勘だな。空気っていうか。うーーん。」

(話してる事がわかんない・・・。)

「何ていうか・・・。まるで用意された戦場で・・。」

(これは孔明の罠だ!とでも?)

「それだ!釣り出されたんだ!!今頃館は襲われてるな。」

(え?考えすぎじゃ?いや、それなら戻らないと!)

「ケモノのやり方じゃねぇ。鮮やか過ぎる。だから失敗した。ここに来たのは俺だけだからな。」

(わかんないけど、敵がいるの?狙いは?)

「俺は軍師じゃねぇ。わからん!孟徳なら気付くんだろうけどな。だがな・・・。」

(???)

再び馬を駆けさせ始めた。

「覗いてる奴がいそうな場所は読めるし、見えるんだよ。」


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