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「少年、私のいた隊は全滅したそうだ。」
夜にメソメソと泣く、泣き女がいた。
「え、ええ・・。」
ウザイ。はっきり言ってウザイ。相手をしないともっとウザイ。
「私とて騎士だ。覚悟はしていたのだ。ビール家の者として・・!」
現在、夜に寝るテントでケイとカノン・ビールは2人きりである。客人だからと言われて2人で使っているが、誰もカノンの相手をしたくないというのが本音だろう。
ケイと一緒のテントで寝ようとしたカルナも「騎士ならウダウダするな!!」と叱ったが、「でもでも、だって。」とカノンが泣き出したため逃げ出した。
出会った当初の凛々しさなどどこにもない。
「今回の任務が危険な事はわかっていたのだ。しかし、任務手当てが先払いで金貨50枚。それが無ければビール家は破産するしかなかったのだ。」
何回目かなぁ。次は修行の苦労話かなぁ。最後は俺にお漏らしを見られたって言って泣き出すんだよなぁ。
「私とて月に金貨1枚は貰っていたのだ。しかし、父の酒代や母の社交費、弟の授業料は削れぬ。さらに使用人の給料も払うと月に金貨3枚は出ていくのだ。」
今度はこっちか。母親が家事すれば使用人はいらないし、母親の社交費って贅沢なランチやディナーとドレス代だもんなぁ。父親は騎士を1年で辞めて酒びたり、家宝を売り払って食い繋いでいた。希望は幼年学校に通う弟のみ、らしい。
色々指摘しても「でもでも、だって」になる。「はい、はい。そうですか。大変ですね。」それ以外の回答はお気に召さないようだ。
「うぅ~。もう戦いたくないよぉ。帰りたいよぉ。」
また泣き出した。
「誰かお金持ちと結婚して、お金の事を考えたくない!!」
今度は叫んでるよ。この状態の彼女との会話は成立しない。それは初めの10分で学んだ。この世界に来て3日目の夜だが、この人のダメダメさは加速していく。今ではテントの中では下着姿のままだ。どうしようかなぁ、と考えながらカノンの頭を撫でる。
今日は寝るまでどれくらいかかるかなぁ。
空はすでにしらばみ始めていた。
寝ぼけながらも朝飯の用意をする。見付けていたオニユリの球根の下処理を済ませる。オニユリの花で見付けたから季節は夏か?少しは暑いが山中だし、コンクリートはないためぐったりする暑さではない。コンクリートジャングル育ちを嘗めんなよ、と。
オニユリの球根を塩ゆでして完成。手軽にホクホク感を味わえる料理である。本当は醤油とか欲しいけど。
振り返るとやつがいた。
欠食分隊の面々だ。
「食べていい?食べていい?」
「タベル。ウチ、タベル。」
気配は何も感じなかった。
「ど、どうぞ。」
空は高く、陽は暖かい。食事をめぐって乱闘をする第2分隊は今日も元気だった。




