遊び人、バベルに向けて歩く道中・1
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見習いの女戦士の少女ティナ、道化師のディラン。2人がバベルに向けた旅路を歩んでいた時の事
◆【未熟なタンクの指導】
「…」
ティナはお世辞にも戦士としての役割をこなせている訳ではなかった。その大きな原因というのが盾を邪魔するあの大き過ぎる乳房だ
大凡前に構え様ものなら握力の妨げになる。加えて剣を振ろうにも自らの身体が邪魔になり、威力どころかまともに攻撃ができる代物ではなかった
戦い方を教えた人間は基本しか教えなかったのだろう。『籠と箱』だ
「ティナ、盾を使う時は正面ではなく
側面で構えて、全身を活用して攻撃を受け止めろ」
「はい!」
しかし、飲み込みは素晴らしく早い。俺みたいな見様見真似の紛い物より、良い師を持てればもっと伸びる事間違いなしだろう
◆【肉体の疲労と比例する食事量】
「…」
しかし、なんだ…。技術は未熟だが身体は仕上がってるな───まさかそれが背丈の成長の妨げになっている。なんてことはないだろうな
「ディランさん」
「ん?どうしたティナ」
「お食事お口に合いませんでしたか?」
「いや、美味いよ。ありがとう」
「んへへ、では私も」
よそわれたきのこ煮込みのスープを食べながら、今後について考える。転移魔法が現実的ながらやはりと言うか、少し歩かなければいけない。到着したとしても手持ちの金ではひとり分にも届かないだろう
「ご馳走様でした」
「はい…っん?」
完食…だと。幾ら小さい鍋だからと言って俺の倍以上ある食事を一瞬で平らげた!?どう言うことだ
「ディランさん、食べ終わったら
食器持って来てくださいね」
「う、うん」
彼女の身体の基礎はその圧倒的な食事量なんじゃなかろうか。その逆もあるかも知れないが───なんと言うか、ピーキーな身体してんな
◆【洗い物をする】
川に食器をつけ、鼻歌を歌う彼女に食器を持って近づいていく、手慣れた様子で洗っていくその姿は奉仕人の面影を見せていた
「あ!ディランさん、ありがとうございます」
「いや、これに関しては俺が洗うよ」
「いいんですか?助かります」
外見から見るにやはり14かそこらだろうか
「ティナも大変だな」
「はい?」
「屋敷勤だったんじゃないか?」
「なんでわかるんですか!?すごい」
「凄かない。観察していたら
要所要所にヒントがあるもんだよ」
凄いのはティナだ。この手の仕事を進んでやり、文句ひとつも言わない。今でこそ川の水はやや暖かい、虫の多い時期はこれだからまだマシだが身が震え出す時期の水は指を割くほどに冷たいものだ。それを知らないものも多くいる中で彼女はそれを知る人間だ
「大変だったんじゃないか?」
「はい…でも!ご主人様も奉仕先の先輩方も
みんないい人ばかりでしたので大丈夫でした」
彼女が言い淀み、俯いた
「何かあったのか?」
「いえ、2年くらい前からこれが成長して
ちょっと周りの目とか反応が変わっちゃって
居づらくなって…」
「…それは、辛いな」
悩みは人それぞれだな
◆【月明かりに食器を照らす】
黒の大布を取り出し簡易的なテントを張る。光を飲み込む真っ黒な布が光が外に漏れ出るのを防いでくれる
夜間での移動は危険が伴う。動くあかりが魔物を呼び寄せ、標的になりやすいので原則的には野営が最も危険を伴わない選択だと言える
「暑くないか?」
「はい!この水色の布が
ひんやりとして気持ちがいいです」
「そりゃよかった」
虫のいる時期は寝ている間でも疲労が溜まることがある。その多くは『気温』だ。加えて熱がこもりやすいテントの中ではより疲労が蓄積することだろう
「ディランさんは大丈夫ですか?」
「あぁ、こう言う野営は慣れてるからな」
「カッコ、いいです」
「そりゃどうも」
◆【虫が鳴き声を上げる中での就寝】
「ディランさん」
「んぁ?どうした?」
「トイレについて来てもらってもいいですか?」
「…」
そんなことで起こされたの初めてなんだけど
「ひとりじゃいけない?」
「い、行こうと思ったんですけど
暗くて、怖くて…」
「…ちょっと待ってね。眠気覚ますから」
「で、で、できるだけ早くお願いします」
注文が多いな
◆【白い布を取り出してティナの後を追う】
眠いな。ティナが怯えながら歩く後ろをついていく、確かにこうも暗いと心細い。のか?
月も悪戯に雲を被っているのが余計にタチが悪い───少し歩いたあたりで白布を渡した
「ほい、これ」
「え?」
「一緒に行くのは、さすがにダメでしょ」
「私に死ねと!!?」
「俺に死ねと?」
◆【近くの茂みが鳴る】
ビクッと肩を弾ませたティナが俺を上目遣いで見てくる。面はいいな…じゃなくて、流石にそれはあかんだろうしなぁ
「【影を渡し歩くもの】」
帽子を脱ぎ、2、3度叩くと猫が現れた
「この娘を頼みます」
ひとりと1匹を見送る
◆【木にもたれかかって眠る】
「あの、ディランさん」
「ん?終わった?手は洗った?」
「は、はい」
「んじゃ戻ろっか」
肩に乗った猫を帽子の中に帰しつつ、ティナの前を歩きながら時々振り返る。ちゃんとついて来ているのを確認して、テントへと戻った
「落ち着くと、とんでもないことを
頼んでた気がする…」
気がする。と言うより"とんだ"とんでもないことを頼んでるんだよ君は
◆【旅はそれでも続いていく】




