遊び人、厄介ごとを目にする───
◆◇◆◇◆
「俺、もう道化師をやめようと思ってんだよ
しばらくは塔をひとりで登ろうと思って」
「はっ、へっ、そっ、そうなんですかっ
やだ、私、はしゃじゃって…」
「お、おい…」
彼女の目から大粒の涙が流れるか、頬を伝い始める。人を泣かせてしまったことに申し訳なさを感じハンカチを差し出した先には彼女の姿は消え失せていた
「ごっ、ごめんなさい」
小手の裏側の布地で涙を必死に拭い、歪んだ口元を姿勢で覆い隠した彼女は店から飛び出して行ってしまった
◆【拾ったものに責任を取れぬなら】
手持ち無沙汰になった机の上でカードをきり、本当に正しかったことなのか?と自問自答を繰り返す。事実【職業柄】が先の行いを咎めてくると同時に『一緒にいるべき』と仕切りに訴えかけているのだ
「おかわりお持ちいたしました」
「どうも」
何度目かの『おかわり』を受けた。ウェイトレスにチップを渡して、席を占領する意味は特にはない。それでも動く気になれず、時間を浪費していく、無駄にできる時間が果たして俺にあるのかと思い『30分』が経過した
◆【通りの向こうで】
「ん?」
今日で何杯目かの紅茶に口をつけた時、ふと遠方に『特徴的な身体を持った女性』の影を見た。両側には如何にもな輩を連れていた
「…【お茶会は何処で?】」
シルクハットを机に置きその縁を2、3度叩くと中から白い耳が一対出てくると鼻をひくつかせて現れた赤い目の『隣人』が俺を見た。素晴らしき隣人は俺が指した指先の『人間を一瞥』するとテラス席から大通りを挟んだ向こう側の道へと駆けて行った
「『ウケの程は?』」
舞台の評価を観察する【スキル】を使う。元来の性能は『演者』の周囲の情報の『テンション』を間接的に知れる【スキル】だ
それを『索敵』や『情報収集』に役立てる
◆【小道に到着した】
「え、格安の転移魔法サービスがあるんですか!?」
つい30分前に聞いた声が聞こえてきた
「あぁ、ここを進んだ先にある」
「ありがとうございます」
傷心者、貧しき者は藁にもすがるとはよくいうものの、これ程分かりやすい罠に引っ掛かる人が居るのかと頭痛がしてきた
「店員さん、お会計ここに置いとくね」
状況把握はできた。次は現場を押さえるべく準備を始める。迷惑料を含めて硬貨を多めに店の卓上に置いてその場から、彼女の元へと急いで向かった
◆【兎の後を追って】
「いやっ!やめて下さいっ!」
聞こえてくる女性の叫びと金属が床材と擦れる嫌な音、布擦れ音と筆が羊皮紙をなぞる音に無数の笑い声が続けて聞こえ始めた
「はぁ…全く」
無粋な輩というのは『魔王』関係なしに街に蔓延ることに心底嫌気が刺す。人攫いの常套手段───恐らく『隷属化』の魔道具を使う常套手段だ
「魔力紋入りの契約書だ」
ほらなやっぱりだ
◆【兎を追って地下へ】
長い下階段の一本道をトランプの波で滑り降りる。1段ずつ上品に降りている暇はない、何故なら兎越しに聞こえる声が悲痛なものに変わり始めているからだ
「やめ、て。はなして」
掠れていく声、力が抜けた最後の一言
「これでもう逃げられねぇな」
「まだガキだが顔がいいし、売れるな」
「胸も馬鹿みてぇに成長してやがる!」
「高く売れるぜ」
◆【勢いそのままに見えた扉を蹴破り】
「【アリスを守れ】」
一緒に雪崩れ込んだトランプに乗せてシルクハットから兎を無差別に解き放ちつつ、次々に送り込み、俺も勢いを流して着地と同時にトランプを投擲する
「ッグ!」
「グハ!」
「ってぇ!」
揃いも揃って犯罪者面のバーゲンセールか?ここは
「これはこれは、古着屋に迷い込んだみたいだ」
「あ?」
「何だ!テメェ!」
「どこから入ってきやがった?」
「…」
え?何その質問。どう考えても部屋の構造上、下階段『突き当たり』の扉───俺の背後にある扉しかなくないか。と考えていると【職業柄】が働き、親指が背後の出入り口を指差した
「【ふつうに、扉からだけど?】」
いや、答えなくても分かるでしょ?それに『これ』は修辞疑問文ってやつですよ
◆【アクション舞台開始】
「死ねぇ!」
兎が面の制圧をする中、あぶれた輩が剣を抜き放ち、こちらに迫ってきたので確固撃破していく───トランプで攻撃を受け流し、そのまま額にトランプを突き刺し、爆破する
「冒険者か!」
距離があるにも関わらず、剣を構えて突進してこようとする輩の足元に『青い布』を滑り込ませ、転倒させてからの顎を蹴飛ばし、2人目制圧完了っと
「ほいほいっと、お次はどなた?」
ゴブリンや不死者の大進行を思い出す乱戦を経て、気がつけば20名余りを制圧していた。『隣人』が制圧していなければこれ以上に酷かったのかと思うと、頭が上がらない
◆【急所は外した】
「衛兵を読んできてくれるかな?いや?
報酬を寄越せって今この状況で?」
トランプと兎、血痕と転がる犯罪者ばかりの地下室で『隣人』から『舞台』の強請りが始まった
「…」
最近渋っていたり、短く済ませていた『ツケ』がここで出るとは思わなんだ
「それより彼女は?」
不服そうに『足ダン』するのを横目に地下室の奥へと向かうと彼女がぐったりとした様子でそこにいた
◆【隷属化は済んでいた】
「あぁ、クソ!」
一歩遅かったことをありありと見せつけられた。こうなっては『舞台』の力を持ってしか、早急な『解呪』は行えない───一刻でも早く『床に転がる犯罪者』をしょっ引きたいって時に
「…」
『魔力紋の契約書』を手に取り、名前を書き込む、これで権限は俺に変更された
「『お手をどうぞ』」
せめて、陽の当たるところで『解呪』しよう。長く踊れる様な気分じゃないんだ
◆【隣人に頼み込んで衛兵を地下室に呼んだ】




