遊び人、センチになる───
◆◇◆◇◆
王都から徒歩で半日の街の路上にて俺はまぁた、大道芸をしていた。ここで格安の転移魔法で商売をしている輩の噂を聞いたからだ
きな臭いと思って来てみたものの収穫はこれと言ってなかった
「さぁ、よぉく見て?この6つの石が
あ〜ら不思議」
◆【手のひらを赤い布で覆う】
「さぁん、にぃ。いち!」
軽く発熱する赤い布による『色変わりの石』を用いた『錬金擬きの手品』を披露する
「あら、綺麗…」
「わぁ!凄い」
「どうなってるの〜?」
6色色とりどりの『宝石』を『観客』のひとりに差し出す。その青年は土に塗れた服を叩くこともせず『悩んでいる』様だった。しかも、ずっと浮かない顔をしている
「なぁ、手品師さん」
「はいはい、なんでしょご主人?」
「…女人には宝石が1番かな」
おやおや、そう云うことかいなと
「そうさねぇ」
◆【石を手のひらで転がして】
脱いだシルクハットの中に投げ込んだ。けど、どうしたもんだろうか
正直言って相談されても困る内容だった。お相手の好みによるとしか言えない。けどここで「自分で考えろ」と突き放す奴はそもそも【道化師】に向いてない
アドバイス位なら罰は当たらないか
「お兄さん
手品ってのは戦闘の駆け引きに似てるんだ」
「え?おぉ…」
「たったひとつの策で挑むことはなく
ふたつ、みっつでも足りなくて
10、100と仕込んでおくもんでさ」
仕込んでいた『手品道具』を目まぐるしく、出し入れし、そのひとつに青年が反応した
「そんで、これだって正解は存在しないんだ
それって恋の駆け引きと同じだ
そう思わないかい?」
「確かにそう、だな」
◆【花束を差し出す】
「はい、どうぞ。造花じゃなくて生花だよ
そうだなぁ、先ずはみっつ贈り物を用意すると
いいんじゃないかな?」
「そんな金は…」
「確かにお金も大事だ。甲斐ってやつもあるし
金ってのは信頼の形だからな。それを
沢山持ってる人はそれだけの人間ってことだ」
俯き加減から青年が真剣に悩んでいることが分かる
「だから、そんなお兄さんにプレゼント」
◆【花束を手渡す】
「先ずはお兄さんの好きなものをどうぞ」
「…よく分かったな」
「まぁね
んで何も難しく考えることじゃねぇのって」
「…ん?この花束」
花束を受け取った青年が花束の違和感に気がついた。流石『探窟家』だ。仕込んでいた『モノ』に気がつき、それを取り出した
「手品師さん、これ」
「おぉっと皆まで云うな。ふたつは揃ったな?」
「っ、そうだな!行ってくる」
◆【観客が拍手で見送る】
「流石便利屋ディランだな」
「相談屋じゃなかったか?」
「何でも屋だろ?」
「何年前の呼び名だよ。今の俺は道化師だよ」
歓声の上がる路上にはいつしか人が集まっていた。そんでもって、これまた懐かしい呼び方が飛び交う空間が生まれていた
◆【色々な賛辞を受けつつ大道芸は終わった】
「さてさて」
「あのー!」
いつも通り、大道芸の後片付けをしていると声を掛けられた。かなり若い声だった
「はい、なんでしょうか」
◆【衝撃的な光景】
視線を落とした先、背丈は俺の半分と少し高い程の彼女は俺を見上げていた
「私と、パーティを組んでください!!」
街中に響かせんとする大声での勧誘を受けた。あまりの急展開。前後の文脈どこいった?
「すみませんお嬢さん
今パーティは募集してなくてね」
そんなことよりも、平静を装う
最初こそ『ふくよか』と思ってい彼女のシルエットは豊満を超えた豊満、巨乳か爆乳レベルの乳房だった
胸がめちゃくちゃに大きいんだ。そこまでいくとエロさというより、クーパー靭帯とか腰とかが心配になる。成長期は大変だな…
◆【直後落ちていた硬貨の最後の一枚を受け取る】
さて、バベルへの道のりを考えようか
「あの、ディランさん、ですよねっ!?」
まだ居たのか
「うん、そうだけど
さっきも言ったけどパーティは…」
「伝説の遊び人の!」
「っ!若いのに随分と昔の呼び名を知ってるね」
とんでもない初期の呼び名が飛び出て正直驚いた。街の人達の『それ』は各地を『荒らしてた時』の呼び名であまりいい思い出がない。しかし、『遊び人』は最も最初の『やり甲斐』をもって努めていた頃の呼び名だ
それを知っているということは勇者パーティに入る前のごく短い間。そんな期間の極小規模でしか呼ばれていなかったモノだ。少し興味が湧いた
◆【取り敢えずお茶に誘った】
「なるほど、お父さんから」
「はい、あの時はとても助かったって」
「それにしてもよく分かったね
あの時の格好とは似ても似つかないだろうに」
「分かりますよ。街の人達が噂してましたし
それに…」
「それに?」
「いえ、何でもありません!うん、何でも」
表情が目まぐるしく変わって面白い子だな
「これからまたバベルに戻ります!
お金がなくて歩いていこうかと思ってたんです
けど、この街なら格安の転移魔法屋さんがある
って聞いて!でもバベル戻っても
パーティ組んでないなー、どうしようかなーって
思ってたら、ディランさんが路上でこう
とてもキラキラしてたので───」
この子めっちゃくちゃ喋り倒すな。それにバベルまで歩くってここまでどれだけ離れてるか知ってるのかな。流石に腰痛めるって
「───それで、あぁそうなんだって」
机に乗り掛かり、彼女が俺を曇りなき眼で見つめてくる。純粋過ぎないかな?俺心配
「私っ、運命だと思いましたっ!
こんなところで伝説の遊び人さんに
出会えるなんてっ!!」
◆【あまりはしゃぐもんじゃないと注意した】
椅子に戻ってくれた彼女に何と言って断るべきか、考えあぐねる。それはもちろん嬉しいのだが次のバベル訪問で俺は【遊び人】や【道化師】から一線を引くつもりでいる
『転職』をすれば積み上げるまでが大変なことは『赫灼王』とのパーティ活動で経験済みだ。あの苦労をひとりに背負わせるのは流石に厳しいだろう
「あの…」
「バベルじゃないのにパーティに誘われるなんて
珍しいこともあるもんだね。それに
昔から推してくれている人からだなんて」
「じゃあ!」
「ごめんね。パーティは組めない」
「はへっ?!」
◆【大賢者】より
『転職』が行えるバベルでの勧誘は優秀な人材を早期に囲い込める絶好の機会である。転職直後は『メタ的』に能力値が低下する
それは積み上げた先でより洗練された『何か』にその形を変化させるからだ。必要とされる技術が変わり、そこから再始動させなければならない
『メタ的』に、今まで0から10で充分だったところを50を最低条件に引き上げられた上で0から再び活動をして下さい。と言われているのが現実だ
幾ら強くなれる補償があると言っても序盤がキツいのには変わりがない。故にバベルでの勧誘というのはそんな厳しい序盤を支えてくれて、中盤・終盤と仲間として支え合える関係を築き易い場所と機会と言える
勿論のこと『珍しい』というのは、全くないわけではない。ある所ではあるのが実状だ。でもモグリの斥候や盗賊や義賊なんて雇いたいとは思わないだろう。そういうものだ
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