5話「余燼」前編
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第5話前編です!
バタン
とボス部屋の扉が閉まる
ここ……扉が閉じると真っ暗じゃねぇか
ヴェインもどこにいるか分からないし
一寸先も見えない闇になると周りから
「真っ暗だけど、どうしよう……」
や
「これで、どう戦えば良いの?」
といった声が聞こえてきた
俺も少しきついな、このままだと……
「ヴェイン、こんなに暗くて大丈夫か?」
「このままだったらきついけど、さっき扉が閉まる前に見たんだ」
「……何をだ?」
「近くの壁に魔石が埋め込まれてたんだよね、あれ、照明だと思う」
まじかよ!
ヴェインは状況把握が上手いな、羨ましいぜ……
暗くて見えないがヴェインの背中を軽く叩こうとした
「さすがだな!」
バシッ
「いった……誰?僕の頭を叩いたの!」
あ、背中のつもりが頭にやっちゃったか
気配は察せられるのに、形は正確には分からねぇんだよな……
「すまんヴェイン、俺だ……場所間違えた」
「どこ叩こうとしてたのさ」
「背中……」
そうしていると手前の壁から順にヴェインが言っていたであろう魔石が
青白く灯っていく
これで戦いやすくなるな……って、おい、おいおい
あれはなんだよ、予想以上にでけぇボスだな
目の前には
角は蒼色、体は紺色の鱗に包まれたサラマンダーが寝息を立て眠っていた
「珍しいな、寒色系のサラマンダーなんて、大体暖色系だろ?」
「そうだね……初めて見た、遺物の番人?だから違うのかな?」
そうなのかもな……
眠るボス魔物をまじまじと見ていると、後ろでヒィッと声がした
振り向くと、先程びびり散らかしてたやつがいた
やっぱこいつか、怖いんじゃねぇか
その女の子は後退りしながらぶつぶつと何かを言っている
「……にこれ……こんなの、聞いてないよ」
次の瞬間
キャァァァ!
叫んだ
「こんなに大きな魔物なんて聞いてないよ!こんなんならここに来なかった!」
おいおい、寝てるボスをわざわざ起こすようなことするバカがいるか!
小声でマスターが指示を出したようで
ハンター2人が怯えた子に近寄り
落ち着かせようとする
「君っ、静かにしてよ、起きちゃうでしょ!」
だが、その女の子は2人の牽制を振り切り
入り口の扉を押して開けようとする
が、開かない
条件を達成しないと開かないであろう扉だ
恐らくボスを倒せば……
女の子はパニックになったのか扉をドンドンと叩きだした
「なんで開かないの……開いてよ!」
2人が追い付き、口を押さえ手を扉から離す
「お願いだから静かにして!怖いのは分かるけど……」
ヴゥゥ
音に起こされかけたのか、ボスが唸る
起きちまったか?
ヴェインが横で
「あの子……ついてくるべきじゃなかったね」
と落ち込んだ様子で言う
「そうだな、来ない方が良かった」
あんなことになってちゃぁ、戦えない
生きて帰ることが出来ない
……
やっぱり、ルーナを連れてこなくて良かった
ボス部屋に着くまでもそうだが、こんな惨状を見せたら動揺させちまう
あいつは優しいからな
それはそうと、あの怯えた女の子、どうすれば良いんだ……
守るにしても限度があるぞ?
眠っていたサラマンダーがゆっくりと目を開く
その瞳は薄暗い中で瞳孔が金色に光っていた
「完全にお目覚めみたいだな……」
「そのようだね」
こうなれば、もう声を抑える必要はないな
「各自、戦闘態勢!」
マスターのその指示にハンター達は散開し武器を構える
怯えたやつとそれを宥める2人以外は
「僕は前衛後衛どちらも行けるから、とりあえずミフュの隣にいるよ」
ヴェインが俺の隣に立つ
そうか、周りのやつらも数人で塊だしたしな
そうする方がいいだろ
怯えてたやつの方はというと……相変わらず暴れている
半狂乱になった女の子が虚空に懇願し、泣き叫ぶ
「出してよ!怖い!」
助けたい気持ちは山々だが
あの女の子にも冷静になってもらわないと、どうにもならない……
サラマンダーの方に視線を戻すと、立ち上がろうとしていた
振り向いたのも束の間、サラマンダーが紫炎を吹く
炎の先には……怯えていた女の子
「マズい!」
俺は全力で走った
怯えていたやつの傍にいた2人組はすでに逃げていた
俺しか助けられないかもしれない
だけど……間に合わなかった
怯えていたやつが俺の目の前で炎に飲まれてしまった……
自分が焼かれるのを厭わず手を伸ばせば届いたかも知れないのに
「くそ……くそっ!」
この部屋に入る前に是が非でも追い返すべきだった!
そうすれば死ぬことはなかったはずなのに
名前だって聞けなかったのに、どう弔えば……
追いかけてきたヴェインが言う
「これは仕方のない事なのだ」
と
仕方ない……仕方ない?
けど、何か方法があったんじゃないか?
ヴェインと怯えていたやつだったものを呆然と見る
何もできなかった……
周りのやつらも炎の威力を目の当たりにし、騒ぎだす
「こんなのやってらんない、帰らせて!」
「けど、扉が開かないじゃない!」
「なら、戦うしかないだろう……」
そうだよな
今はただ、戦って生きてここを出ることだけを考えねぇと
「ヴェイン……頑張ろうな」
「そう、だね、頑張るしかない」
マスターが騒ぐやつらに渇をいれる
「お前ら、騒いでないで陣形をとれ!生きて帰るんだろう!」
騒いでたやつらがマスターの言葉に我に返り
おどおどしながらも戦闘態勢に入った
「絶対に倒そう、ミフュ!」
あぁ、そうだな
「木端微塵にしてやらぁ!」
サラマンダーが息を吸い、紫炎を俺らの方に吹いてきた
また、あれか!
「飛風・斬風!」
大剣が風を纏い、俺はその大剣で炎を斬る
迫り来る炎が割れるように離散した
やれた……斬れた
背後でヴェインが称賛する
「さすがミフュ、そのまま斬り続けて!」
え……?
「いや、無理だろ!俺だって限界ってもんが!」
そう話しているのも束の間、サラマンダーが横に一回転
尻尾でなぎ払おうとしてきた
「うわぁぁぁぁ!」
なんだ!
……
視線の先には1人のハンターがいた
避けることができなかったのか
尻尾に吹き飛ばされてしまった
壁に勢いよく打ち付けられるハンター
バキバキッ
何か硬いものが折れる音がした
考えたくもない
「まじかよ……」
隣でヴェインが言う
「あの子って、ここで唯一のヒーラーだったはず……」
え……
回復もできないってことか
どうすれば
「これだと、消耗戦じゃないか!」
ヴェインの言葉に周りのハンターが混乱する
そりゃぁそうなるよな……
回復もできねぇ、倒すまで?出れもしねぇ
「この空間の酸素を使いきるしかない!」
マスターが発言する
酸素を使いきるだって?
……ありだな
サラマンダーの炎も酸素がないと燃えないだろう
その後に、他の属性の攻撃で一網打尽か
「そうしたら僕達はどうなるんですか!」
ヴェインになら、もしかしたら出来るかもしれない
マスターが指示を出す
「ヴェイン、皆を水のバリアで守れ!中は酸素たっぷりにだ!」
「……はい!」
ヴェインにも作戦が分かったようだな
けど、バリアの維持と酸素を作り出し続けるのはきついだろ
「出来そうか?ヴェイン」
「皆を守るためだよ、頑張る」
ヴェインは目を瞑り、バリアを作るのに集中しているようだ
1人また1人とハンターの周りに
水の膜が覆っていき綺麗な球体になる
ヴェインがマスターに展開を完了したことを報告した
バリア、作り終わったみてぇだな
……ヴェイン、すげぇ険しい顔してる
やっぱ、この人数にいつもと違うバリアを維持するとなると
相当な労力なのだろうか
それはマスターにも分かったようで聞く
「動く余力はないだろう?」
「……はい」
「なら、ミフュ!お前がヴェインを守れ、絶対にだ!」
そうだよな、今、ヴェインは皆の命綱だ
俺は、わかったと返事を返し
サラマンダーとヴェインの対角線上に立ちはだかり、大剣を構える
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