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貞操逆転世界で裏垢に性癖を呟いたら、クラスの美少女たちがなぜか本気で再現してきた 〜俺の裏垢がクラスの美少女たちに監視されている件について〜  作者: 月城メロン
第3章 文化祭

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第19話 たまにはこういうのもいいかな

 放課後、俺と柏木さんだけが教室に残った。


 というのも、文化祭が近づいてきたからだ。文化祭の時期に近づくと、ホームルームでは実行委員が男女一人ずつ選ばれるのだが、柏木さんは自ら立候補した。


 そして、無言で見つめてきたから、俺も渋々手を挙げたわけだ。

 そんなこんなで、ほかに立候補する人がいなかったから、実行委員はすんなり俺と柏木さんに決まったのだ。


 こうして教室に残っているのはもちろん理由がある。

 実行委員でクラスの出し物を決めるというちょっとした打ち合わせ。


 机を挟む形で、俺と柏木さんは向かい合って座った。

 さすがにこういう時に性癖だのなんだの言う場合じゃないって分かってるからか、柏木さんは大人しく手元のノートに案を書き込んでいる。


 そんな柏木さんの真剣な顔を、俺は見とれていた。


 少しだけつり目気味の瞳は、思っていたよりも丸みがあって、どこかつぶらにも見える。

 その中に光が入ると、きらりと反射して、やけに印象に残った。


 睫毛は長すぎるわけじゃないのに、一本一本が綺麗に揃っていて、変に飾ってないのに目元を際立たせている。

 すっと通った鼻筋は主張しすぎず、それでいて顔全体を引き締めていた。


 唇は自然な桜色で、余計な手入れなんてしてなさそうなのに、形が整いすぎている。

 どのパーツも、これ見よがしじゃないのに、全部ちゃんと綺麗で。


 だからこそ、目を逸らす理由が見つからなかった。

 こんなふうに、柏木さんの顔をちゃんと観察するのが初めてで、少しドキッとした。


「私の顔になんか付いてるの?」


 髪をかきあげながら顔を上げる柏木さんは、夕日に照らされていた。

 いつもの威圧感はなく、ただ不思議に思っただけ、みたいな問いかけだった。


「ううん」


 俺は頭をぶんぶんと横に振る。


 見とれていたなんて当然言えるわけもないし、かと言って嘘つくのもなぁ、と思った。

 俺は柏木さんにとってただのおもちゃであって、万が一にも付き合うという可能性はないだろう。


 俺みたいな陰キャは、この女性が積極的な貞操逆転世界でも、あわよくばなんてことは思わない。

 期待したら傷つくだけだ。


 実際、俺にラブレター渡してきた2人の女の子は揃って変態だったわけで……。

 一応白雪さんはほんとに俺のことが好きっぽいけど、それはそれ。


 柏木さんも俺のことが好きだなんて思い上がったりはしないのだ。


「綾人くんはなにがいい?」


「なにって?」


「クラスの出し物」


 うーん、俺的にメイド喫茶が好みだけど、この世界では執事喫茶のほうが集客率高いし、クラスのことを考えたらやはり執事喫茶あたりだろう。


「執事喫茶、かな?」


「ふーん」


 俺の返事を聞いて、柏木さんはつまらなそうに鼻を鳴らした。


「本音は?」


「メ、メイド喫茶……」


「綾人くんらしいね」


 一応この世界にメイド喫茶もなくはない。

 

 元の世界で言うなら、執事喫茶みたいなものだ。

 ニーズは少ないが、まったくないわけではない。


「考えておくわ」


 そう言って、柏木さんはくすくすと笑った。

 目尻がきゅっと下がって、とても可愛らしい。


「あと、演劇のほうだけど」


 ノートを指さして、自分が書いた候補を見せてくれた。

 その中には『ロミトとジュリエッオ』とか『白雪王子』などがあった。


 不思議なことに、この世界にある童話は元の世界の男女逆転のものが多い。

 だから、俺にもすぐに理解できた。


「か、柏木さんは、その、やりたいやつない?」


「そうね、私はやはり……」


 言いかけて柏木さんは視線を落とした。


 そこに書いてあるのは、『シャンデレラ』という、前世の『シンデレラ』がモチーフの名前だった。

 少し意外。でも確かに柏木さんは王女役に合うかもしれない。


「いいと思うよ」


「ありがとう、もちろん綾人くんがシャンデレラ役ね」


「えっ!?」


「なによ」


「いや、俺なんかが主役務まるわけない――」


「そういうのは嫌よ、綾人くんが自分を卑下するの」


 俺の言葉を遮って、柏木さんは顔を背けた。


 俺に呆れているのだろうか。


 そりゃ、柏木さんならなんでも似合うと思うけど、俺は自分に対して自信が持てないのだ。

 

 モテないから持てないのだ。


 あはは、今のちょっと寒かったな。


「いい? 綾人くんはシャンデレラやるの。そしたら私も王女役に出てあげるわ」


 それはまたお願いというより命令だった。


 だから俺は、


「うん、分かった」


 と言うほかなかった。


 俺の答えに満足したのか、柏木さんは目を細める。

 そして――




 靴を脱いだ。




「な、なにしてるの!? 柏木さん!」


「脚を曲げてるの疲れたから、伸ばさせて」


 それって普通に座ってるだけだよね、と思ったが、口には出さなかった。


 そっと、柏木さんの足が俺の膝の上に乗っかった。

 柏木さんにしては控えめな行動だった。


「撫でて」


「え?」


「私の足、撫でてくれる?」


「う、うん」


 こくりと、喉を鳴らした。


 そして、ゆっくり柏木さんの足に自分の手のひらを載せる。

 華奢で細長い柏木さんの足は少し冷えていた。


 だから、俺はそっと手で柏木さんの足を握って、


「こうしたら少し温かくなると思うから」


 と自分に言い聞かせるように言った。








 まさか文化祭が――


 俺と柏木さんの関係を変えるきっかけになるなんて、この時は思いも寄らなかった。

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