第30話 実戦訓練 短剣と狼と月
初めまして、こんにちは
本作を開いて下さりありがとうございます
是非最後まで読んでいってくださると幸いです
窓に石が当たる、その音で目を覚ます
エルフの子供だ、人への嫌悪があるとは聞いていたけど
「一年、間違いだったか? 」
「そうでもない、あれは嫌悪より興味だ、そも嫌悪があるのは私と同年代ほどの老獪ばかりだ」
部屋にいたのは女王グロリア、そういえば私だけ部屋で色々話を重ねるうちに寝てしまったのか
「案ずるな、何も間違いはなかった」
「下らないこと言わないでください、下品ですよ」
初めて会った時と打って変わって、ジョークも言う結構フレンドリーな方と言うのがわかった
見た目だけなら、怖いのは変わらないが
「素振りに行きます、どこか適した場所は? 」
「なら塔を出て、少し右に行くと、訓練所がある、私の許可があるといえば使えるさ」
一応と許可証も出してくれ、とりあえず外に出ようとする
「朝ごはんは任せておけ」
「任せます、ルナさんには作らせないでください」
首を傾げる女王に念を押す、何ができるか、想像もしたくない、ホントニ
〜塔付近訓練場〜
木刀がぶつかる音、声
騎士団のそれには人数で劣るが、その誰もが精鋭の動きであった
「お前、ここに何の用だ」
「日課の素振りをしに、一応許可証も」
そういい、女王認可の許可証を出す、大袈裟な気もするが、ここで頼れる伝手がこれしかない
「はっ、そうかよ人間風情、しかもただの素振りか、好きにしろ」
酷く小馬鹿にされる、がこういうのには慣れている、今更どうとは思わない
空いたスペースに、水を置き、木刀を構え、いつも通り素振りを始める
遅く、遅く、何も切らず、何も動かさず、風すら切れぬこの一振
これをしばらく続ける、ただこれが昔からの習慣で、やってる理由はほとんど覚えていない
しばらく続ける、周りから嘲るような笑いが聞こえる
何をしてるんだ、意味ないだろうと
いや全くその通り、私も習慣ってだけで、理由を覚えていない
(でもまぁ、過去に持ってきた数少ないもの、そうそう捨てれないさ)
とはいえ、そろそろ終わりにしないと、回数もいつもの50に達している
「ふっ!! 」
一瞬で風を割る、終わりの一太刀、それはあらん限り全てを斬れるように、そう教わった
(まだ未熟だな)
力のこもり方にムラがあった、多少イラつきはするものだ
とはいえ、あたりの騒音が一瞬にして止まった、嘲りも、蔑みも一瞬で消える
「さて、戻ってご飯にするか」
辺りが呆けているのを見て、少し気分が良くなる、水を取り一息に飲み干して、帰路へつこうとする
「まて! お前何者だ! 」
一人のエルフが声をかけてくる、嘲りも蔑みもせず、無関心に訓練を続けていた者だ、珍しいので覚えている
「何者、と言われても人間ですよ、ただの旅人としか」
「いや、そんなわけが無い、その技は我らですら届き得ぬ領域」
飛躍しすぎだ、そんな大それた領域などではない、しかし自身は神だ、なんといえばいいのやら
「なにか秘訣があるはずだ、教えてくれ」
熱心な若者、いや何歳かは聞きたくないけれど、若そうなエルフに詰め寄られ、それを皮切りにほかの者たちも詰め寄ってくる
(調子のいいやつらだ)
と言うよりは、ただその分野において好奇心と探究心がある、そのふたつの前に種族など些細なものなのだろう
案外、悪い種族ではない、ただ人で言う子供のように、純粋なのだ
まぁしかし、イラッときてはいるので
「教えるなんて、器用なことはできない、知りたければ直接かかってきて、見て学べ」
父の口癖だ、私も口頭で学んだことなど極わずか、その大半がこの一言で片付けられた
「最初に詰め寄った貴方、相手するので他の人たちは見て学ぶように」
お人好し、では無いが、教えるあたり自分も面倒な性格だと、つくづく思う
「では、よろしくお願いします」
エルフが剣を掲げ挨拶らしきものをする、それに対しこちらも木刀を腰で収め、礼をする
審判のエルフが、ルールを読み上げる
「勝負は片方が降参と言った方の負けで、身体強化以外は魔法禁止」
エルフが構えをとる、それに合わせこちらも木刀をとる
(学ぶほど、時間はかけないが)
「身体強化」
エルフが距離を詰める、リリーと同等の速度、砂埃は足跡になる
「はぁ!! 」
気合いの入った一撃、重い、太刀筋もかなりしっかりしている
「流石、長年鍛錬を積んだだけはある」
我流の勇者と違い、洗練された動きは酷く美しく、実践的なものだった
剣の残す軌跡は、流水のように滑らかで、時に荒れる暴風のように激しくもなる
が、型を重視した動きには、必ずと言っていいほど、規則的な隙もある
「居合・光芒」
父が使っていた、最速の技、動きを先読みし、敵の攻撃の意識の先をいく技
ーー景色を両断したかのような一太刀はあたりの盛り上がりを切り伏せる
木刀とは思えぬ余波が、辺りを吹きさらし、やがて静寂を残す
「その木剣では、もう戦えないな」
エルフの木剣は、粉々に打ち砕かれる、こちらも亀裂こそ入ってはいるが、崩れはしなかった、後で直そう
「さて、まだ言わないのか」
「くっ、降参です」
木刀を収め、水を持って去ろうとする、去り際かなりのエルフ達に、技に関して聞かれるが、忙しいからと断る
歩きながら塔へと戻り、起きていたリリーの髪を櫛で梳かし、朝食をとる
「いただきます」
みなで手を合わせてそういう、が、女王がキョトンとしているので、教えてあげた
「面白いな、関わった全てへ感謝か、どこかで聞いたことあるなそんな文化、東だったか」
やはり東の国は、元の日本と相当似通っているらしい、機会があればなぁ
「ところで、この後実践訓練であろう? レナイトは俺と、この女王で面倒見るとして、リリーは? 」
「それは、もちろん私とルナで教えます、頑張ろうな、リリー」
顔が青ざめるリリー、それを見てルナが目を点にする
いい機会だ、短剣でできるか分からないが、いくつか技を教えてあげてもいいだろう
「ルナさんも、技のひとつやふたつ、教えてあげてください」
「いいけど、リリーじゃ腕が持たないよ、筋力付いてからね」
和やかな歓談が続き、お茶を飲んで食休みを終えると、ようやく各々が動き始める
朝使った訓練所、はリリーが気圧されそうだし、塔の近くの空き地辺りでいいだろう
〜塔付近空き地〜
「リリー、とルナ、ってなんでそっちいにるんですか! 」
「? 」
キョトンとするルナをこっちに引っ張り、実践訓練を始める、とはいったものの、教えられる技といえば
「まずは実戦だ、そこからリリー、君に教えることを決めていく」
「相手は、私がする、永守じゃ相手にならない」
「そ、そんなことないよ! 」
ひとまずなだめ、ルナに勝てたら相手をすると約束する、最も
(なんか、ルナギラついてるんだよな、本気でなくても、火がついてるなあれ)
表情豊かになって以来、結構わかってきたことがある
冷徹、残酷さはあるものの、基本日常的には、茶目っ気があったり、戦闘は純粋に楽しんだり
楽しめることを全力に楽しむタイプだ、人らしいというか、彼女は本来、ああなりたかったのだろう
失った長い時間を、人という時間の中で、いっそう楽しく、取り戻そうとしている
「一応手加減してな、ルナ」
「わかってるよ」
...目がまじだ、リリー頑張れ
「じゃあ、両者構えて」
風が吹く、練習だと言うに、二人の間に妙な緊迫感が走る、二度風が吹くが、それすらも気にしなくなった2人
ーー準備は出来てる
「始め! 」
開始の合図に合わせ、一瞬でリリーが消える
「身体強化・瞬足」
地を蹴る音がして、すぐに間合いを詰めるリリー、ここまで早いとは
「早いね」
淡々と語るルナ、だがその目はたしかにリリーを捉えていた
「! "岩撃 雨」
頭上に岩が浮かび、ルナに降り注ぐ
「月光刺す風」
ーーしかしそれを、難なく切り払い、穿ち壊す
黒いレイピアは月光とは対照的に黒い風を吹かせ、岩を地に堕とす
しかし、岩を囮に使い、ルナの背後に立つリリー、既に構えを取っている
「とった! 」
ルナに飛びかかるリリー、しかしルナの口元はーー笑っていた
「偽居合・"月の細剣"」
ーールナは私と同じ神秘の張り方をした、リリーにわかるよう魔力で網を貼り、反射で攻撃に移れる技
見ただけで、居合を習得したのか?
ーー鋼のぶつかる音がする、短剣は大きく弾かれ、宙を舞う
リリーも膝を着いていた、決着である
「おつかれ、リリーも惜しかった」
そういい顔を覗くが、唇を軽く噛んでいた、余程悔しいのだろう
対してルナ、結構嬉しそうなのは、習得した技がハマったからだろう、ふふん、なんて言っている
「今の、魔力の網、あれでそこまで攻撃が速く? 」
悔しさで落ち込むかとも思っていたが、案外立ち直ってすぐに知ろうとする、熱心で嬉しい
「うん、魔力を身体にくっつけたまま、円状に貼る、歪んだとこにそのまま腕が引っ張られる感覚」
なるほど、私の居合とはだいぶ性質が違う、が起きる現象は同じというわけだ
リリーはブラフ、おとりもできていた、速さも申し分ない、問題は
「リリーの改善点がわかった、次回直していこう、今日はここまで、あくまで試験的なものだしな」
昼飯がまだだから食べようと、レナイト達の元へ行く、アースディーさんやグロリア女王が、手加減してやってればいいが
最後まで読んで下さりありがとうございました
2章に入ってから数話ですが、もう既に書ききれるか不安になってます、頑張りますけども
また次回も読みに来て下さると嬉しいです




