第29話 魔法の最奥 ティジェルの村
初めまして 本作を開いて下さりありがとうございます
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「ティジェルの女王、といえばわかるか」
そう語りかけてきたその人は、優雅に、怪しく笑いかける
差し込む木漏れ日を、黒い蝶が遮る
耳飾りとして下げたちいさな時計は、あらぬ動きをし、時を狂わせるかのように
全てが異質なその人は、女王と言うのに、充分な風格を有していた
「そう警戒するな、他の奴らも着いておる、案内しに来ただけだ」
そういうと、一瞬で彼女の手には杖が握られる、杖にある石も、中は霧がかかっているような
異質な存在であることを、ヒシヒシと感じた
「着いてこい、森の最奥、ティジェルの村へ案内しよう」
そういうと、森が形を変えていく、木々の位置が変わり、地形が変わっていく、しかし音はなく、まるで幻をかき消すかのように、景色を変容させていく
「これは、一体」
呆気にとられて、思わず言葉がこぼれた、それを聞き、自慢げに髪を手で流す女王
「なに、かけていた魔法を解いたに過ぎない、固有魔法だから、珍しいのはわかるが」
次第に、森からは完全に怪しい気配が抜ける、風も、空気も、この森をただの森と語る
「行くぞ、離れるな」
怪しい、というか怖い、訝しみながら後を着いていく
〜ティジェルの村〜
王都や村とは違い、木漏れ日が光を担う、森の中でも先程とはまるで違う、とても落ち着けるところだった
「ほかの四人は、休養中だ、辛かっただろうからな、案外元気だったが、あいつは寝込んでる」
おそらく、アースディーさんだろう、やはり負担を肩代わりするのは負荷が大きかったんだろう、はやる気持ち、しかし目の前にいる人の話を、遮っていいものか、不安が残る
「あやつも友を得たのか、全く嘘つきめが、自分は一人で居続けたほうがいい、なんていっていたのにな」
恨み言を吐きながら、歩いていく、周りにいるエルフたちの視線は冷たく刺さるような、嫌悪があった
「エルフは基本、人が嫌いだ、無論私もな、とはいえ客人、こちらから呼んだのだ、案内はするさ」
歩いて歩いて、やがて辿り着くのは、木製で作られた塔、そんなに高くもなく、大きくもない
何の変哲もない塔だった
「入れ、アイツらも中で待っている」
そう言われ、後を追って中に入る、そこには信じられない光景があった
「こ、これは」
天井が見えない、棚には数え切れぬ本と、何かしらの道具、そして扉、異様なその光景に、一瞬呼吸を忘れる
「ふふっ、そう驚かれると気分がよいな、こちらだ着いてこい」
女王が手を空で仰ぐと、影のような透き通った黒が、やがて階段のようになり、ひとつの扉へと道を作る
カツッ、カツッ、とどこか心地いい足音と、あたりの本がパラパラとめくれる音だけが響くその空間で、しかし私だけは、不安にかられ続けた
アースディーさんは無事か、ほかのみんなは何もされていないか、この人を信じていいのか、仮に敵対意識があった時、私が勝てるのか
初めてでは無いだろうか、この世界のものとしての枠組みで、ここまで恐れたのは、やはりそれほどまでに、目の前のそれは異質だった。
やがて、ひとつの扉の前にたどり着く、中から声が聞こえる、数えて4人、どれも元気そうな声だった
「安堵した顔になったな、全く、私はどうも警戒されがちなんだ、寂しいものだ」
やれやれと、扉を開いてくれる女王、するとすぐに、小さな影が抱きついてくる
「兄さん、無事でよかった」
やはり、リリーだった、安心もつかの間、泣かせてしまっていた、涙を見て、こちらの胸までも苦しくなる
その苦しさは、心地よくて、けどあまり味わいたくないとも思った
「無事で何よりです、本当に、よかった」
レナイトも、我慢こそしているが、目が潤んでいたのがわかる、仲間を案じての行動だった、けれどそれはかえって、仲間を苦しめた
「おかえり、しっかり戻ってきた、よかったよ」
ルナが肩をポンと叩く、まぁ死なないことはわかっていたのだろう、さして苦しんでいるようには見えなかった、けれど安堵の声が出る程度には、心配したのだろう
「よく戻った、すまなかったな、どこぞの阿呆のせいで、完全に星が消えちまった」
「ハハッ、ほざきよる、星の明かりがなければどこへも行けぬ小僧が、4人の負荷を受けて無事でいられると思うとは、どちらが阿呆だ」
睨み合う2人、元気そうだな、うん
さて、と部屋で女王が腰をかける、ポッドが浮き、コップも浮き、茶が注がれる、そのままふわふわと宙をうき、それぞれの所へと届けられる
「そこの阿呆以外には、名はまだだったな」
アースディーさんが、なにか小さい星を飛ばした気がした、それを軽くあしらい、小馬鹿にしたように笑う女王
「名をグロリアと言う、先も言った通り、この辺り一帯を治めている」
そういい、顔にかかった黒い布を魔法かなにかで消す、怪しく笑う口元、目は引き込まれるような深紅だった
「永守と言います、ロベルティアより報告の件でまいりました」
「聞いておる、お主のこともな、国を救った英雄、災とやらを倒した1人の青年、先の戦いを観ればある程度納得はいく」
そう語る女王、アースディーさんとルナ以外、渡されたお茶など到底飲めなかった
「そう身構えるな、森のことは謝ろう、しかしまぁ、これだけ生きても好奇心には勝てんのだ、あとはそこのボンクラに、勝ち続けられても腹立たしいのでな」
仲がいいのだな、でなければこんな軽口やからかいは飛ばないだろう
「言うじゃないか、既に二回破られているのに、未だ降参の声すら聞かないのはあれか? 最後寿命で勝つための言い訳かなにかか? 」
再び二人が睨み合う、仲が、いいんだよな、多分
「っと、話がそれかけたが、私達もできるだけ、その災に関して知りたい、随分大きい話だったからな」
そうですね、と、初めてここでお茶を飲む、味はしなかったが、かろうじて乾いた舌が、喋れるまで回復する
〜しばらくして〜
守護神、それら秘匿すべきこと以外の全容を話す、ラナンさんのところで、少し顔が曇ったり、最終的に死傷者無しと聞き安堵のため息が漏れたり、人が嫌いと言いながら、随分感情豊かであった
「ふむ、大方わかった、しかし厄介だな、魔王がいる最中、第3勢力とは」
「勇者もそう言っていましたね、しかしこの件は、私たちで何とかします」
「そうか、まぁ好きにすれば良い、我らは自身等の森が守れれば良い」
「相変わらず身勝手なことだ」
アースディーさんがチクッと嫌味で刺す、しかし女王は冷静に返す
「もちろん手伝っても良い、がその際私が出る訳にも行かない、かと言って他の者に行けとも言えぬ、それは、自らに死地に赴けと命令すること、守る者にそんな命令出来るものか」
至って正しい、だからこそ、胸に刺さる、私は今のこれが正解なのか、本当は一人で行くべきではないのか
「そりゃもちろんだな、なら自らついて行くと言ったものはどうする」
「それもまた好きにすれば良い、現に勇者の一行には、この村の生まれがいる、彼女が行きたいと願ったものだ、去るもの追わず、というより、その者の判断を、否定する権利は、誰も等しく持ち合わせていない」
その一言が、多少救いになる、が、私の規模感に合わせて良いものか、アースディーさんは気を使ってくれたんだろうが、払拭は出来なかった
「報告感謝しよう、しばらくゆっくりしていくと良い、嫌うものたちは確かに多いが、私が認めたのだ、普通に対応してくれるだろう」
「どれくらいここにいる? 」
ルナの問に、そういえばどうしようかと、考える、旅の難しいところだ、目的はあっても小さな行きたい箇所がない
「あっ、ここって学校とかあるんですか? 」
「ガッコウ? なんだそれは」
「えっと、何かに関して、子供が学ぶための場所です」
「あぁ、学び屋のことか、人はガッコウと呼ぶのだな、あるぞ、ここは魔法の聖地だ、魔法に関して、あるいは実技的な戦闘に関して学ぶ"ティジェル魔法学舎"というところがある」
「なら、リリーとレナイトはしばらくそこに通わせてくれませんか? 」
「えっ私もですか? 」
「レナイトも、リリーと年の差あんまり無いですし、いい機会ですよ」
「私は兄さんの教えだけでいいです」
そういいながら、服の裾を掴むリリー、しかしそうもいかない
「それでは知識に偏りが出てしまう、もっと広く色んなものを知った上で、自身にあったものを確立させるんだ、あとは経験上、そこは大変ではあるものの、結構楽しいものだ」
昔、高校と中学もそうだった、行かなくてもなんて口では言うが、あそこでの光景は、未だに離れない、楽しげな会話やら風景だって、あそこで学んだ、彼女たちにも、それを私以外のところで知って欲しい
「構わないが、編入のためには実技か筆記で試験を受けてもらう必要がある、合格点に満たなければ、入ることは許されない」
「ならしばらく期間を貰い、そのうえでということで」
「わかった、あちらには話を通しておこう、それでいつまでいるつもりだ」
(早くても三年は降りてこないよ)
そうルナが頭に教えてくれる、指でグッジョブとしながら、どこで知ったそんなこと
「では1年ほど」
「なんだ短いな、30年くらいかと思ったがな」
前の世界でも聞いた、生きる時間が違うと時間感覚そのものから違うと、ここまでチグハグとは
(いやまぁ、これから私もそうなりそうだけど)
私もかなり寿命が長いと、ラナンさんが言っていた、一体どれほど生きるのやら
(んー、でも世界が私と同一の命で、しかし世界を死なせてはならない、私って死ぬのか? )
「三十年は長いですよ、人にとっては、ひとまず一年したらまた旅立ちますよ」
「わかった、ひとまず部屋は、この塔のあまりの部屋がいくつかある、そこを貸してやろう、あんまり散らかすなよ」
ひとまず、しばらくの拠点が決まる、とはいえ一年だが
「さて、明日から実技の練習です、二人とも覚悟してください」
はい、と意気込む二人、ルナも色々教えてくれるらしい
「俺は、まぁ体術と身体強化位は教えてやれる、元素系は無理だからな」
「残ってくれるんですか? 」
「言ったろ、しばらくフリーなんだ、その間は同行してやる、楽しいしな」
予想外のしばらくの同行者に、思わずにやけてしまう
明日からの日常がどんなものか、今から期待で胸が踊る、災のことも考えながら、しばしの長い休暇のようなものだ、何事もなければいいのだが、なんてフラグめいたことを考えながら、暫し夕食まで閑談する
女王も話すと案外気さくであった、これから先エルフが全員そうでないだろうが、出来る限り仲良くしたいものだ
段々と日が沈み、木漏れ日が朱くなってくる、夕ご飯を作ろうと席を立つ
ふと窓の外を見やると、日の明かりの代わりに、街灯に火では無い明かりが灯っていた
幻想的な緑と青のの優しいあかりは、自然と心が安らぐような、不思議な灯りであった
「綺麗であろう? 」
女王が窓の外を見ながら、後ろから声を掛ける
「災、と言ったか、この森がその災にあったら、お主は守ってくれるか? 」
そんな問いを投げられ、返し方に悩む
「守りますよ、私が守りたいのはどこかひとつではなく、理不尽な災に襲われる、命と時間ですから」
そういうと、どこか嬉しそうな、同時に悲しそうな表情をする、なにか間違っていただろうか
「そうか、全くやはり、お主は愚かだな」
愚か、まだその答えが分からない、助けることは、救いたいと思うことは愚かであろうか、その愚かさは間違いになるのだろうか
ーーそれも、ここで見つかるだろうか
綺麗な景色は、答えをくれなかった、ただ黙って、考える私の目を、優しく照らしていた
「料理、作らないとな」
ひとまず、目の前のことをするために階段をおりる、お腹も空いたし、みんなもだ、考え事は、腹が膨れたあとでいいだろう。
最後まで読んでくださりありがとうございました
最近出す時間がズレがちなのですが、それでも週2で必ず出していきます!
ではまた次回読みに来てください、ブックマークなどして待っていてくださると嬉しいです




