第二章 一幕 第28話 霧の女王
初めまして、こんにちは
本作を開いて下さりありがとうございます
ぜひ最後まで読んでくだ去ると幸いです
馬車を引いて数日、その間様々な魔物と戦った
新品だった短刀や、杖も、使っては磨きを繰り返し、気づけばそれぞれに馴染んでいた
数日だったが、疲弊もあった、その度に休憩を取り、食事をとる
悪い事ばかりでもない、リリーやレナイトの訓練、全体の協調性が、ようやく取れてくる
「付け焼き刃と見ていたが、なかなかどうしていいパーティだな」
アースディーさんの太鼓判も下りた、旅の中での小さな日々は、パーティーにあった細い糸を、より強固にしていった。
「昨日から魔物がめっきり減りましたが、森がみえてきましたよ」
木々の生い茂った、横を見ても果てのない広大な森が現れる
一見、青々とした綺麗な森だったが、ここに来るまでに、アースディーさんはこう話していた
~昨日の夜~
「要するに、あの森は外部の者を通さない、なんてぬるいものじゃない、帰してもくれないのさ」
迷いの森、そう呼ばれるあの森は、不用意に立ち入った者を、そのまま返さず、三日三晩歩き続けさせる
森の中には音すらも届かず、そこはまるで土の中のように、静かで重いのだそう
「今回はあっちからのお呼びだ、とはいえ素直に通すことは無いだろうな」
「なぜです? 」
「言っただろ、あいつは面倒臭いんだ」
そういいながら、森のある方向を見る
「旧友に会うのは、たのしみですか? 」
「? そこまで古くもないさ、ここ数年、あってなかっただけだ」
その視線は、珍しく照れているかのような、薪の火ではなく赤らんだ顔は、友人以外を示しているようだった
~現在に戻り~
「着きましたけど、霧があるようには」
やはり晴れ渡ったように見える森、目的地を間違えたようにも思えないが
「あってるさ、魔法だからな、入れば途端に、霧が辺りを包む」
そういいながら、アースディーさんが顔を見せる
「馬車から荷物を取っておけ、野盗なんかに取られたらたまったもんじゃない」
四人が馬車から降りるのを確認すると、アースディーさんが、手のひらに"星"を生み出す
"星空を歩く者"、アースディーさんの固有魔法だ、相も変わらず綺麗というか
作った星を空に投げると、あの時の青空に浮かぶ星空が、再び現れる
以前よりも星空は大きく、砂ほどの星は、地にも光を写し、やがて空と地に道を作る
「星の降る導」
そう小さく呟くと、目を閉じる
「すごーい! こんな魔法もあるなんて」
リリーが地面に映る星と、空の星を見てはしゃぐ、レナイトも呆気にとられるほど
「私も使えたらなぁ、月しか出せないし」
ルナがそうつぶやく、いやまぁ、月を出せるのも充分異様ではあるのだが
「とりあえず、地面と空の星を見てれば迷わないだろう、ただ、ちょっと問題がな」
そういいながら、不安そうな顔で森の方向を向く。
「前よりも、森にかかった霧の魔力が強い、あいつ、遊び半分で毎回毎回...」
悪態をつき、頭を搔くアースディーさんだが、やはりどこか楽しそうだ
「進みましょう、信じてますよ、アースディーさん」
「任せろ、星が、俺がお前らを最後まで森に導く、ただ道中、俺はアストロラーベを戦闘には使えない、目を開けられないんだ、戦闘は任せる」
「「任せてください!! 」」
自分が返事をする前に、リリーとレナイトが返事を返す
「戦闘面は、このメンツなら大丈夫だよ、アースディー、案内よろしく」
ルナが、アースディーさんの肩を軽く叩く
「よっし、行きますか」
~ティジェルの森内部~
音が死に、空気は鉛のように重く、空の星がなければ、方向すら分からない
中に入った瞬間、異様で、気分の悪い森だった
霧は、より星を隠そうとするが、星はそれを貫きなお光り続ける、拮抗した両者の魔法
だが、入って数分、既にアースディーさんに疲れが見え始める
「大丈夫ですか? 」
水を渡すが、遅れて反応をする、疲れと言うよりも、もっと別の何か
「あぁ、あいつ、また以前より練度をあげてやがる、ホントに面倒だ」
だが、と言い、また手の上に星を生み出す、しかし今度はそれを、身体のうちに入れる
「こうすれば、"迷いの効果"を軽減できる」
そう言った瞬間、星たちと同じように、アースディーさんが淡く光る
身体にのしかかる重圧、音のない空間、だが迷う効果、というのは感じない、それも効果なら
「もしかして、肩代わりしてます? 魔法で」
「勘がいいな、数が多いのと、お前らは魔力が強い、迷いの魔法は魔力が強ければ強いほど、効果を増す」
そういいながら、また先頭を歩く、その足取りは、私達よりも一層重かった
「だから、空と地の星の魔法、それと迷いを肩代わりするようにしてるのさ」
「私と、ルナ、リリーにレナイト、負担は想像できませんね、すみません」
「いいさ、今回はあいつが練度を上げてるのもある」
そう話しながら、星も見えないのに、迷いなく星空を歩く
「それに、戦闘は任せるって言ったろ、そらきたぞ」
草むらから、うさぎが一匹飛び出てくる、何の変哲のない、ただのうさぎに見えた
「ただのうさぎですよ? 」
そう言い、リリーが近づく、しかし目をこらした一瞬、違和感に気づく
「リリー! 近づくな! 」
そう言って、リリーを抱えて後方にもどる、その一瞬、首に冷たく、鋭い感覚が掠める
「鋭い爪だな、その癖可愛いとか」
よく見れば、手はこびりついた赤で染まり、爪はよりいっそう深い赤が染み付いている
「ブラッドラビットです! 」
レナイトが、杖を構える、リリーも腕から離れ戦闘態勢をとる
「よくも騙したな、可愛いうさぎめ! 身体強化・瞬足」
リリーが斬りかかる、レナイトの集めた風が、リリーをつつみ、走る途中、刃が風を断つ
「"瞬閃・風薙"」
一陣の風が、うさぎに襲いかかる、が
「キィンーーー」
響いた音は、悲鳴でも、肉を断つ音でもなく、鋼がぶつかったかのような音
「つっよ、嘘でしょ!? 」
爪で、リリーの剣戟を弾く、力と言うよりは、速度に振った剣を、読んで当てた
「レナイト姉さん! そっち行った! 」
リリーの警告よりも早く、うさぎは既にレナイトを間合いに入れていた
「させない」
黒い残影が、うさぎを切り裂く
「ルナさん、ありがとうございます」
一瞬の剣戟は、あたりの木を切り裂いた、黒いレイピアを、振り払い血をとる
「ここの魔物、数は少ないけど一体が強いね、厄介」
余裕な顔して、倒しておいて、厄介と、とことん底がしれない
「終わったなら進むぞ、星も長くは浮かばない、見えなくなる前に目的地に行くぞ」
そういうアースディーさんも、限界のように見える
冷や汗はやがて滝のように、見るに堪えない、星も既に瞬いていた
「急ぎましょう、戦闘は私が一手に担います、ルナさん、アースディーさんを担いでください」
「そうだな、その方がいい、星を視界から外すな」
「了解です」
身体強化を全体にかける、なれない魔法だが、ようやくまともに使えるようになってきた
「行くよ、捕まってて」
「恥ずかしいが、頼んだ」
一気に走る、重い空気を、足と体で切り裂いて、星を辿り、木の上を跳んで行く
「また魔物です、右から一体、左からも、さっきと同じやつです」
「レナイトも皆も先に行ってください、すぐ追いつきます」
そういい、その場に残る、星がいつ消えるかも分からない、なるべく早く
「黒い、うさぎ? 」
先程よりも、早く重い一撃が、首元と、脚の健をかすめる
(鋭い、これでうさぎとは)
「影打抜刀、"夕陽・緋幻"」
虚を腰に、即座に刀を抜く、炎を圧縮し、刀を紅く染め上げる
一閃は森の中でも、異質に赤く輝く、2匹は斬られた瞬間も塵となる
「くっそ数が多いな」
寄ってくる、3匹、7匹、10匹
構えを変えて、敵を待つ、重い空気の中、草むらを掻き分ける音のみが、生死を分けるーー
静寂を破り、同時に襲いかかってくるうさぎ、鳴き声に耳も貸さず、自身の刀に意識を預ける
「"居合・紅耀月"」
範囲に振動が走る瞬間、刀は赤い月を描き、敵を切り裂く
刀を振り払い、血糊を落とす
「しまったな、星が」
星が消えている、他のみんなは着いたのだろうか、どうやって進もうか
「見事な戦いぶり、しかも死ぬかもしれないと言うのに、自己犠牲をするとは、"まるで人の様だな"」
後ろから声がする、その声は、霧の中でもはっきり、何も焦らず問いかけてくる
「誰ですか? 」
そう問いかけると、後ろから少しクスッと聞こえ、やがて霧と、空気の重みが嘘のように去っていく
振り向くと、紫紅色の髪、黒いドレスに、長い耳に時計の耳飾りをした、不思議な女性が立っていた
辺りを黒い蝶が飛ぶ、黒いベールに包まれている彼女
木々から射す光は怪しく笑う口元を照らし、目が見えない
「察しが悪いな、"霧の女王"といえばわかるか?それとも"ティジェルの女王"の方が通りがよいか? 」
最後まで読んでくださりありがとうございます
なんだかんだ2章に入れました、1章と違い相当長い章になると思いますが、頑張ります
それではまた次回読みに来て下さると幸いです、ブックマークなどして待っていてくださると嬉しいです




