第25話 後始末、風が運ぶ残香
初めまして こんにちは
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朝、アースディーさんに呼び出され、村長の家へと向かう
「失礼します」
「来ましたか、お掛けください」
不思議な方だった、目は閉じられていて、村の人達より、随分と古びた服
仙人という者が居れば、きっとこう言う様相なのだろう
「随分と、若い声、だと言うのに老練の剣士よりも静かで、研ぎ澄まされた気配」
掠れそうな声で、そう言われる
尚も目を閉じたままの老人に、しばらく目が離せないでいた
「この目が不思議か」
「え、えぇまぁ」
老人がようやく目を開く、その目は、おそらく何も見えていない、
だが何かを見られている気がした、誰かに似ているな
「もう光は映さないがな、代わりに儂はよく影を知るようになったのだ」
「それで、今回の用件は? 」
アースディーさんが、そう話を切り出す、老人はまた目を閉じ窓の外へ、顔を向ける
「影が見える、硝煙臭い影が、"恐れを"携えて」
老人は語る、その場にいた自分と、アースディーさんが首を傾ける
「祭りが近い、対して影がこすぎる、お前たち2人で何とかして欲しい」
〜宿屋にて〜
「さてどうしますかね」
「というか、他の奴らはいいのか」
この場には、アースディーさんと自分しかいない
「祭り、がなにかわかりませんが、賑やかなら彼女たちは楽しませたいので」
コップの水を飲み干し、窓の外で賑やかに話す三人を見やる
影は十分知っただろう、しばらくはいらないはずだ
「なるほどな、ならさっさと方をつけよう」
アースディーさんも、水を飲み干す
バレないよう、裏から出て問題のエリアへ向かう
村より900m東、そこが問題のエリアだった
村長曰く、影が無数にいるらしい
「そも影がなんなのか、分かりませんけどね」
「魔物か、山賊か、いずれにしろ祭りができなくなるのは、いただけないな」
エリアに着く、森と聞いていたが
見渡す限りの焼け野原、黒い平原だった
「これは、一体」
「戦火の後か? いやしかし」
辺りを見渡していると、後ろから何かが、頬をかすめ飛んで行った
矢、ではない、何かが炸裂したような音
「銃? なんで」
後ろを見ると、銃を構えた無数の兵隊、騎馬隊、無地の旗
異様な光景に、思わず足が下がる、アースディーさんも冷静を保つが、涼しい中に汗が伝う
「おい、なんだあれ、災とか言うやつか? 倒したんだろ? 」
「少なくとも、前とは別ものでしょう」
あの時とは違う、冷たいという訳ではなく、押し潰されるような重い気配
肺の焼けるような熱風、硝煙の匂い
神秘が、漂っていた、まさか
「引けねぇな、これは」
星空が広がるーー
地に、空にーー
「星空を歩く者」
今度は、目の前の兵士たちに星が着く
「身体強化」
アースディーさんが弓を構える、鉄の弓に矢、尋常なら引けぬそれを番え
空に放つ
「なにを? 」
「俺は星の旅人だ、目指したものが地にあるなら、着かない道理はない」
放たれた矢は、流星のように降り注ぎ、兵士たちに降り注ぐ
回避を許さず、全てが星を、兵士を貫く
だが不思議と、悲鳴は聞こえない
瞬く間に、影の兵士は消え失せた、残った神秘の残滓を虚にこっそり閉じ込める
「弱いな」
「弱いですね」
そう、異様なままでに弱い、雰囲気こそあれという感じだ
とはいえ、アースディーさんも強い、狙ったとこに確実に当てる、魔法となるのか
「一旦村長のところに戻るか、報告を」
「そうですね」
〜村長宅〜
「影は消えた、よくやった」
やはり解決らしい、手応えこそないが、違和感の残る結末だ
宿に戻って、ルナにこのことを話す
しばらく話を聞いていたルナは、やがて暗い顔になってしまう
「羅だね、戦の災を務める子」
「やっぱり、ならあれは分体ですかね」
「多分、パスが切れた時私の恐怖の神秘の力も全員に渡ってる、消えた感じじゃなかったんだ」
「まじですか〜」
思わず、椅子の背もたれにもたれかかる、次は戦の災が降りたのか
「まだ全然時間はある、戦は特に回りくどい、それに弱いと感じるなら本体もまだ来てない」
対してルナは余裕があった、ひとまずまだ先の話かもしれないと、息を抜く
「そういえば、お祭りのこと、聞いた? 」
「祭りがあることだけは、何の祭かは」
すると、部屋の扉がバンッ! と開き、リリーとレナイトが飛び込んでくる
「「なんで任務に連れてってくれなかったんですか!! 」」
正座させられ、説教を食らう、素知らぬ顔をしたルナ、助けてと視線を送るが
(擁護できない)
頭に響く、少し笑った声
懇懇と説教が続く、失念というよりなれないものだ
「「仲間なんだから、もっと頼って(ください)」」
反芻するこの言葉は、大切にしなければと思った
「お祭り、行きますか? 」
「そういえば、祭りって? 」
「収穫祭と言ってましたよ、困り事が2つと言ってましたけど、あとひとつなんなのでしょうね」
もう流石に、あんなことはないだろうけど
「余興?」
「そう、祭りの余興が、人員が足りなくて」
すっごい平和な悩みだった、同時に、ここに来てある意味、いちばん解決が難しいときた
「私楽器できますよ」
「俺も出来るな」
「私も〜」
「もちろん、私も」
まさかの私以外全員できるらしい、なら
「私以外で手伝いに行けば」
そこまで行って、睨まれる、反芻した言葉が、急に目の前に出てきたようだ
「何も出来ないですよ」
「夜までに出来る様になればいいのです」
レナイトがそう言って、手を引っ張る、リリーには背中を押され、アースディーとルナは視線を送る
逃げられない、見えないケージだ、まるで
それから一通り楽器を教わる、まぁどれも使えるはずもなく
絶望的なまでの音痴だったらしく
「ゥゥゥゥ」
目の前でアースディーさんが倒れている、余程の不協和音だったらしい
泣けてくる
「演出で助けますよ、今回は」
そう言って納得してもらう
そしてみんなで飾り付けやら、供え物やらの手伝いをする
星ではなく、暖かい色が瞬く村の中
色鮮やかな食物や飾りは、見ているだけで自然と、笑みがこぼれる光景だった
「これまでの、命と、これからの命に、全てに感謝を、乾杯」
煌々とした中、人々の賑やかな感謝と、歓喜の声が広がった
「では皆様、今日は旅人たちと、レナイト様、アースディー様の余興にございます」
今更ながら、伝説的冒険者と、王女様って、どんなラインナップだと、ふと思う
「今日は参加させていただき、感謝します、お礼に、聞いていただけると幸いです」
そう、レナイトの口上が終わると、三人が奏はじめる
軽快で、上品よりは、酒場を彩るような曲
ケルト調と、前の世界では言っていた気がするが
「よし、やるか」
音楽に合わせ、水を風のように宙に流す
風を、川のように地に流し、客の足の隙間をゆく
火は星のように、頭上でチラチラと明かりをになう
曲の名前を、"妖精たちの戯れ"というらしい
この辺りの伝統的な曲で、毎回祭儀の時はこれをやるらしい
曲を聴いてる人達の笑顔が、やっている四人の笑顔が綺麗で
そのたった数分は幻のようだった
曲も終わり、別の人たちが壇上に上がる、ようやく祭りに繰り出せると
またもや見えないケージに捉えられた
(やすみたい)
正直、あの元素の扱い方は慣れてないせいか、少し疲労が残っていた
「行きましょう! 」
そう、レナイトに声をかけられる
幻でなく現実なら、もう少しそこに浸っていたいと
祭りに向かう
〜祭りの屋台道〜
飴細工もここにあるとは、五人分を買い、みんなに渡す
「甘〜い」
「美味しいです」
賑やかで、しかしお互いの声は聞こえる
瞬く光は眩しいというのに、互いの楽しそうな顔は、確かに見える
ほんとに楽しい時間、ほんとに楽しい世界が、そこに少しの間、たしかにあった
祭りの雰囲気も冷めやらぬまま、しかし人通りも減っていき
宿に戻る、アースディーさんも、どうやらここだったらしい
「楽しかった」
「ほんとに〜楽しかった〜」
宿の席で、各々が余韻を噛み締める、みないつもよりも、コップの水の減りが遅い
「またいつか、こんなことができたらいいですね」
いつか、それはいつ来るかも分からないのに、楽しみにさせる言葉
昔は嫌いだったし、今も多分苦手だ、でも、この五人のそれは、何故か大好きだった
「そうですね、必ず」
今日見た全てを、曲を、光を、笑顔を、あと千年、世界があり続けるまで忘れないだろう
忘れたくないから、世界を守るのだろう、これから先は
明後日にも出るが、明日はまた休暇だ、ゆっくり過ごして貰えるよう、努力しよう
余韻を噛み締め尽くし、各々がまた眠りにつく
外は一転して、静かで深く暗かった
でも帰って、余韻を邪魔なく味わえた、風が運ぶ残香は、よりそれらを鮮明にした
単純に、人として、楽しく、愛おしく思えた1日で、日々だった
最後まで読んでくださりありがとうございます
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