第22話 勝利を告げる明日~出立の日~
「おはようございます」
小さい声で、そう呟く、誰に言ったのでもない、世界を超えた、ただの癖だ
あるいは、賑やかな風を期待していた、のかも
「おはよう」
やけに布団が狭いと思ったら、またルナさんが紛れ込んでいた
あの不思議な白い布のような服から、随分と様変わりしていた
「貰ったんですか、その服」
そういいながら、布団から出て身支度を始める
「昨日鍛冶屋のあと、みんなと」
そういえば、私は部屋に戻って調べ物をしていた時、3人はどこか出かけていた
身支度を進めるルナさんを見ると、だいぶ服やら色々買っていた
「どうかな、これ」
そういい、クルクルしながら服を見せてきた、
同じ白のワンピースに、首元の青いリボン、窓からさす光が、雪のようにその人を照らす
「いいと思いますよ、綺麗ですね (服が)」
「、そう、ありがと...」
そういいながら、プイッと後ろを向いて身支度に戻る
仕草がレナイト様やリリー達に似てきているな〜
「じゃあ私は2人と合流しに行く、門の前で待ってる」
「ではまた後で」
そういい、城で一旦別れる、最後に鍛冶屋に刀を受け取りに行かないと
道中で、商店街でいくつか買い物をする
「取りに行くのはこれだろ」
後ろから、いつか聞いた声がした、なんだろう、怖かった記憶が蘇る
「アースディーさん? どうしてここに」
「用事があってここに戻ってきたんだ、ついでに鍛冶屋によったらお前に渡せと言われたんだ」
手渡された刀は、見事な鞘と柄が付いていた
二本とも、白い鋼らしき鞘、柄も同じようなものだ
鍔は黒く、金で縁どっていた
「随分とオシャレに仕上げられましたね」
想像よりも綺麗なデザインで返ってきたのに面食らっていた、国の宝は伊達じゃない
「そういえば、よくわかりましたね、ここにいるって」
「それが俺の特技だからな、じゃあ要件は済ませたぞ、またな」
そうヒラヒラと、手を振り去っていく
そういえばどうしてここにいることがわかったのか
そしてまたな、とは
~門までの道中~
何故か、人々が紙吹雪を投げ、私を送り出す、言っていないはずだった
「これ持っていってください」
「また帰ってきてくれよ! 」
民の声は、いずれにしても暖かいものだった
果物やら、パンやらを渡され、背負う荷物が重くなっていく
ようやく門前に着いた頃には、髪に紙吹雪が付いていたり、荷物が一回り大きくなっていた
「貴方たちもですか」
他3人も、荷物が少々大きい気がする、
レナイト様に至っては、馬車に載せないと運べないほどになっていた
「よく馬車を貸してくれましたね、お父様も」
レナイト様が出立するにあたり、荷馬車を貸してくれていた
移動はひとまず、そこまで苦にはならなさそうだ
門を開けると、そこには、また壮大な見送りがあった
「行ってらっしゃいませ、レナイト様、ご一行も」
騎士団長、副団長、並びに数人の騎士団が、剣を掲げ、見送る
「気をつけていけよ、レナイト」
「はい、姉様」
頭を撫でるルーシア様は、いつもよりも砕けた笑顔で、お姉さんをしていた
こちらが素なのだろう、レナイト様も、甘えたような笑顔だった
「行く場所は決まってるの? 」
「昨日調べた、ティジェルの森に向かいます、途中村に寄りますけどね」
数日はかかるが、特段危険もない道だった、メイジギルドというのも気になる
また、とある連絡をあちらから貰っているのもある
要約すると、ベンチャーギルドから報告を受けたらしく、国の長が説明を要求したらしい
今回はその説明として行くというのもある
「次降りてくる災はなんでしたっけ? 」
「戦、がいつも最初だけど、パスが切れてるからあの子達がどう動くかまでは、もう分からない」
「いつ頃とかも分かりませんか」
「分からない、けどひとつ言えるのは、私が降りてきている、しかも席から外れた」
馬車に乗りながら淡々と語る、しかしそこまで語って、少し顔をしかめてこちらを向く
「あの子達は、私ほど理性はない、早く降りてくるかもしれない、これは悪い知らせ」
「ではいい知らせがあると? 」
「うん、災は同時に顕現できない、だから同時に戦闘はないよ」
同時に戦うことになったらどうしようかとも思っていたが、ひとまず安心だ
ただ、嫌な考えが頭を過ぎる
「それってつまり、一人一人強いから、とかルール的なものじゃ」
「正解、同時に顕現すると強すぎる力がぶつかって飽和する、そうなると、両方、あるいは全員がまともに戦えなくなる」
「でも、私は今恐怖の神秘は剥奪されてるから、これから来る子達は関係ないけど」
そう、ルナさんから恐怖の属性、らしきものはなくなったらしい、指輪の契約の効果だろうか
「なら尚のこと、そればかりにかまけていられませんね」
そういい、手綱を握るレナイト様の隣に座る
馬車に全員が乗る、様々な荷物も、余すことなく載せて
「みんな、またいつか、それまでお元気で」
その言葉を置いて、震える手をしたレナイト様の手を見て、そっと肩に手を置く
少し間があき、レナイト様がまっすぐと前を見据えると、ゆっくりと進み、徐々に城壁と、声が遠くなる
「村までどのくらいかかるんですか? 」
「3日くらいだって、リリー野宿できる? 」
後ろでは談笑するルナさんとリリー
「すみません、馬車は分からないので」
「いえ、ここは私に任せてください」
レナイト様以外馬車が操作できないので、任せることになった
「この3日間教えてくださいね、レナイト様」
「では私からも、一つお願い、いいですか? 」
そういい、グイッと顔を近づけてきた
顔近いなぁ、そんなことを考えながら、正面を見ながら、視線だけ横に流す
「いいですよ、何がお望みですか、レナイトさ」
名前を呼ぼうとする途中、口を指で抑えられてしまう
「それで、レナイトと呼んでください、旅の途中様付けでは気まずいですから」
想定外のお願いに、少し驚く
後ろからルナさんも顔を覗かせる
「私も、さん、いらない、ルナでいい」
癖だから直せるか難しいのだが、長く共にするかもしれない
「わかりました、ルナ、レナイト」
そう名前を呼び、2人の目を見る、うむ、といい顔を引っ込めるルナさんに対し
レナイト様はすぐに顔を逸らしてしまった
しばらく進むと、日も落ちてきた、目の前に映る空が、紅く染まっていく
後ろのふたりも、徐々に疲れが見えてきた、何よりずっと手綱を握っていたレナイト、も、休ませないと
「この辺で、今日は野営にしましょうか」
そう言い、手綱を持っていたレナイトの肩に手を置く
「そうですね、私も疲れちゃいました」
ぐーっと腕をのばし、レナイトが馬車をおりる、後ろのふたりにも声をかけ、休ませる
荷物の中にあった適当な布を地面に敷いて置く
「あとは薪と、石か」
薪いくつか買っておいたが、石はそこら辺のものを探さないとか
「石なら任せてください」
リリーがそういうと、小さい陣から石が出てきた
「地の魔法か、よくやった~」
頭を撫でてあげる、嬉しそうに笑うリリーを見て、こちらも嬉しくなる
今更気づいたが、しっぽも耳も感情がよく出るんだな
(すっごいブンブンしてるなぁ〜)
可愛くてちょっとべた褒めして、こちらも癒されてから作業を再開する
薪に火を起こし、食料のいくつかを加熱調理する
「ん〜、いい匂いですね」
「まぁ、レナイトの口に合うか分かりませんが」
「私だって、野営の経験くらいありますよ」
そう言いながら横で手伝うレナイト
しばらくして、パンと焼きあがった肉、野菜のスープを出す
前の世界で料理しててよかった
「美味しそ~」
みんなが食べ始める中、砕けた食事、誰かと一緒というシーンで、久々に思い出した
「いただきます」
手を合わせ、前までやっていた動作をする、なんとなくこうするとしっくり来る
「それは? 」
「私のところは、食べる前にこうしたんですよ、この食事に関わる全てへの感謝、ということです」
それを聞き、食べる手を止め、みなが手を合わせる
「「「いただきます」」」
それをされ、少し目に水が溜まった気がした、ゴミは入ってないと思う
昔は父と母で、あれ以来はこんな当たり前も、誰ともやらなかったっけ
「美味しいですね、このスープ」
「お肉美味し〜、おかわり! 」
「やっぱり食事はいいね」
おかわりの肉を取りながら、みんなの会話と、食事を噛み締めて食べる
なるほど、みんなと食べると美味しいというのは、こういうことか
「ほんとに、美味しいですね」
夜、簡易的な寝袋を3人に渡す、みんなが寝た頃、1人で起きて番をする
「結構暖かいな、火は弱めでいっか」
最近はこんな独り言も増えた、前は無口もいいところだった気がするが
ここに来て色々変わった気がするな、たった数日なのに
「起きてるの」
ルナが起きてきた、隣に座り、火をぼーっと眺める
「寝ずの番、変わる? 」
「大丈夫ですよ、しばらくは私がやります」
「無理、しないで」
「無理してませんよ、リリーにはやらせる訳には行きませんし、レナイトには、馬車を任せているので」
そういいながら、引いてくれた馬が寝ているか確認する
「星、綺麗だね」
「そういえば星空が見てみたいって、言ってましたっけ」
空を見る、見事な星空だった、それと同時に何一つ知ってる星座や、並びがないことに気づく
「私が世界に来た時は、まず星空なんて無かったから」
ルナの目には満点の星空が映っていた、完全に魅入ってしばらく、また薪の弱々しい火に目を落とす
「これも悪くない、綺麗だね」
黙って頷く、欠伸をしながら、ルナも布団に戻っていく
「ふぁ、ぁ〜」
欠伸が移ったか、少し目を閉じ仮眠をとる、座ったまま
風や火の音、草の擦れる音に耳を済ませながら、意識を少し沈めていく
「おやすみ」
ルナが布団をかけ、また隣に座ったのがわかった
「おやすみなさい」
そう返すと、段々、耳に響くのは皆の寝息だけだった、パーティ組んだのは正解だったな




