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第19話 帰還

こんにちは、本作を開いて下さりありがとうございます、ぜひ最後まで読んでくださると幸いです

夢を見ていた、過去の夢、お母さんとお父さんと、食卓を囲む夢、自分はとても笑顔だった


記憶にある、一番楽しかった時期だ、ずっとここに残っていたい


手を伸ばす、自分に、小さかったあの頃の自分に


伸ばした手は、すり抜ける、ここに私の居場所はなかった


「違う、ここじゃない」


わかっていても、足は重い、それでもと前へ歩き出す、視界の端は霞んでいて、頬を伝う涙だけは、そこに残っていった


ドアを開け外に出ると、家が燃えている、目の前の小さい自分は、それを見て泣き叫ぶことはなく、静かに膝をつき崩れ落ちる


崩れる家屋の音、燃え盛る炎の音、それらが全て自身の慟哭であるかのように、絶えず鳴っている


「そうだった、あのときでさえ僕は、それを直視しなかったんだ」


反省しようか、あの時の僕は目をそらすことしかしなかった、でもこの後悔は、先へ持っていくには視界が曇りすぎる


「まだ先かな」


少し進むと、また景色が変わる、刀を取りに行ったあの日だ、家はなんの音もせず、自身のただいまという声だけが、寂しく木霊する


用を済ませ外に出て、初めてその世界の混乱に目を向ける、4つの歪な星が、空を覆い隠す異常な景色


緋色の空は、色に反して異様に冷たく、周りは混乱と恐怖に満ちていた、周りの人々の反応は混沌とかしていて、でも、私は目を向けた上で、なお後悔と未練がなかった


「まだ先」


少し歩くと、景色は飛び、何故か空へ投げ出されたかのよう、下にはロベルティア王都が目に入る


「あれ? 死んだか? 」


幽体離脱、のような感じだ、国が損害を受けながらも修復しているのが見えた、一先ず再興が始まっているなら良かった


「いやよくないよくない」


私と世界ってリンクしてるんだよね? なら死んでるの不味くない?


「あら、本当に重い魂ですね、すみませんが自分でここまで上がってください」


そんな声が上から聞こえてきた

声のする方には奇妙な神殿が雲の上に建っていた


「どうやって」


そう愚痴をたれながらも、下の国を見ながら悩む、本当に登ってしまっていいものか


「大丈夫ですよ、こちらに来てさえくれればしっかり身体に戻せますから」


怪しさ満載だが、打開策が思い当たらない、仕方なく上へと登る決意をする


「それで、どうすれば? 」


言うが早いか、急に風が吹き上げてきて、私を目的地まで運ぶ、最初からそうしろと言いたい


「おっと、」


雲の上、前にも行ったことがあるがやはり慣れない,この足場とも言えぬ軽さ、なのにしっかり立てるのだから不思議なものだ


「あの時は横に」


横に賑やかな人がいた、桃色の髪の少女が、修行とはいえ楽しかったんだ、でも


霊体? のような状態でも、ラナンさんの攻撃で負傷した腕が痛む、それが事実を突きつけてくるかのようで、必死にこらえた


~神殿~


「ようこそ、見知らぬ方よ」


そう出迎えたのは、長身で白髪の女性、何故か目は閉じていた


「ようやく来たか! 強き者よ! 」


そういい、ガシッと肩を組んできたのは、赤い髪の大男、肩幅なんか私の数倍ある屈強な男だ


「あの、ここは?」


そう聞くも、まずは席へ、と案内され、5つあるうちの一つの席へ座る机にはガラス板のような透明なものが埋め込まれており、その机自体は宙に浮いていた


「貴方をお呼びする機会を図っていたのですが、少々困惑させる形になってしまいましたね」


そう白髪の女性が頭を軽く下げて言う、ならまずは


「ここがどこか聞かせて貰えないと、困惑が止まないのですが」


とにかく現在の状況だ、戦いが終わったと思えばこれ、早々に戻りたいのもあるが


「ここは、私たち、4人の神殿、魂そのものの知覚が出来ないと、来れない場所」


突如、前の席から声がした、さっきまで誰もいなかったそこには、薄い水色の髪をした少女が座っていた


「本来魂だけになったところで、誰もここには呼ばん、だがお主は例外だ」


そう声のする方には、細身の眼鏡? をかけた男が座っていた、多分こんなかでいちばん身長が高いな


(いいなぁ)


そんなことを思いながらも、この異様な状態を必死に整理しようとする


「つまり、神殿にいるあなたたちは"神様"ですかね? 」


「察しがいいなぁお前」


「私たちはこの世界の四大元素の神とされています、人の間でもそれが一番有名かと」


ほんとに神様なのか、いやまぁ自分も似たような立ち位置だが、

前まで人間だったぶん、この非現実さは自身を含めて拭いきれない


「君を呼んだのは、君がこの"盤"に、映らなかったから」


青髪の少女は語る、本を顔の前から退けないので、いささか聞こえづらさもあるが


(神様にも人見知りとかあるんだ、ほんとに)


前の世界でも、神話でなら聞いたことがあるが、リアルでこうだと反応に困るのはこちらだ


「私たちは、あなたの正体、そして今後あなたをどうすべきかで悩んでいます」


眼鏡の男性がそういいながら、こちらを睨む、そうか、守護神のことをこの世界の神様は知らないのか


「本当はもうひとりのあなたの隣に居た子も呼びたかったんですけど、何度やっても阻害されまして」


ラナンさんはそこまでできるのか、とにかく説明、さて何から話せばいいのか、そもそもこの人達はどこまで知っているのか


「まぁ説明と言いましたが、大雑把で構いません、細かいところは風が教えてくれます」


なるほど、この白髪の女性は風の神様、青髪の子はおそらく水、屈強なこの人は炎、あちらの眼鏡の方は大地というわけか


(てかいつまで肩組んでんだこの人)


岩だろと思うほどの腕と手のひらがずっと肩にある、重いなぁと思いながらも相手の問に答える


「私の正体、というより役目として与えられたものは、"守護神"というものです」


~~~~~~~~


ある程度全てを話す、世界そのものを守るためのもの、継承されたということ


世界を滅ぼす災を滅ぼすのが、目下いちばんのやるべき事、その災は、初代が行ったこと


元は人間であるということ


「...なるほど、そんな方がいたとは」


「お前若く見えたが、そんなもの背負ってんのか」


さっきまで賑やかだったふたりは物静かになり、眼鏡の、おそらく大地の神である彼は、憐憫の眼差しと気まずさがあった


「んっ」


水神であろう少女が突然背後に周り、頭に手を置くと、ワシワシと手を左右に揺らす


「あの、これは」


「人間たちがやってた、慰めたり、褒めたりするなら、これがいいんだって」


小さいその手は、昔の父や母とは全く違うのに、重なって思えた


「っ、あ、あれ? なんで、」


何故だろう、さっきまでなにか抑えていたつもりもないのに、

声が、涙が、止まらない

戦うのだって怖い、痛い、ようやく打ち解けたと思った相手は行ってしまった


刀にはもう何も感じない、父も、もう居ない、唐突すぎた2度目の別れは、1度目よりも深く、内に刺さる


未練なんてないと思ってた世界に、家に戻りたい、なんとも思っていなかった世界に


"帰りたい"


自分の元の居場所が亡くなった、自分と言う本当の存在の席が無くなったんだ、今まで気づかなかった事実は

津波のように押し寄せ、飲み込まれた


たった数日で、こんなにも背負ったものが重くなるなんて、思っていなかった

元はただの人間だ、少し不運なことがあったこと以外は、他の誰とも変わらない

なんなら、この世界の魔法を使えたりする人間より、余程弱いと言っていい


そんな私が、急にこんなところに座っていた、この数日で背負ったものは、目に見える範囲にとどまらないほど、どう扱っていいか分からないまま進んでいる


そんな滝のような責任感に、声と涙が止まらなかった

そこにいた四人がみな静かに、その声を聞いていた、その沈黙が、今はただ、嬉しかった



しばらくして、ようやく収まりがついた、我ながら神々の前で、しかもその神殿で泣きじゃくるなど


「すみません、逆に困惑させてしまいましたか」


「ん、大丈夫、人、本来弱い、当然の反応」


水神はずっと撫でていた、まだ少し霞む目で顔を見る、言葉こそ淡々としているが、優しい表情だった


「とはいえ、私たち神々にも直接扱えない神秘を使うとは、ことごとくが私たちとは規格外ですね」


神ですら神秘は直接つかえないのか、となると災に関してはやはり自分がなんとかするしかないか


「どうでしょうか、そのまま使える発想がなかった、なら私たちには可能性はありそうなものです」


「ん、少し試して、助けになるなら、やってみる」


「神がこの世界に関して干渉できないなんざ、面目が立たんしなぁ! 」


今まで、守護神は神に頼ったのだろうか? ラナンさんの言い方では、不可能か試していないものだと

守護神と神の決定的な違い、それは神秘の行使の不可にあるのが今わかること


「たしかに、神秘を取り込んで直接放つのが私、他は身体が行使可能、あるいは感知の可能なものに変換しています」


自分も一度魔法を使った、その時は体の中で取り込んだ神秘を、魔力へと変換させる工程が必要だった


「神術に使う力は神力、魔力より純度の高い神秘が必要となります」


だが元は全て同じ力、なら神秘をそのまま感知できるようになれば、おそらくは使えるはずだ


「なるほど、原点が同じであれば不可能ということはないでしょう、しかしあなたの言う神秘はどういうもので? 」


そう言われ、霊体ながらにもまとっていた神秘、その制限を一部外してみる、自分にはこれが白い炎のように見えているが


「私の周りに、白い炎が見えれば、それが神秘です」


4人にジーッと見られるが、全員が顔を見合せ首を振る、どうやら見えないらしい


「知覚出来ないことにはなんとも言えませんね、これは」


「不可能では無いだろうが、試みがなかったからな」


「この声、大剣? どこから」


「国からだ、お前の神秘がはるか上空にあるもんで気になって、意識を飛ばしてみたんだ」



ーー 一通り大剣にも話してみたが、

少なからず、初代から4代までにかけては、神秘を守護神関係以外が、使用できたことはないらしい


「だがなぁ、お前さんは少し話が変わる」


恐怖の災が、水面を展開した時、それは国民にも見えていたらしく、理由が私の神秘に触れたかららしい

また、指輪で他者に与えることもできていた、

この2つのことから私は例外として、他者が使用できるようにするトリガーとしての役目を担える


「かもしれないと」


「あくまで仮定だ、見えるようになれば、後はそれを身体に慣らす、まぁ人の身には扱えんがな、出来て神が扱えるようになるくらいだろう、人には知覚こそできても、使用は不可能だ」


指輪を使おうとしたが、指には何も無かった


「意識を連れてきましたから、流石に付属品やらは」


そういえば、全裸でこそないが今の私の格好、タオルを肩からかっこよく羽織ってるだけだ、ほぼ裸である


「また次の機会でいいでしょう、私たちも他の神々にあなたのことを伝達しないといけませんから」


そう言って、大地の神は消えていく、無愛想ではあったものの、やることをやる仕事人タイプだろう


「なら俺も伝達に行かねぇとな、じゃあな少年、次会ったらその神秘? とか言うやつ教えてくれ」


そう言い炎の神は、一瞬燃えたかと思うと姿を消した、非常にわかりやすい神様だった


「私も、知らせに行く、元気でね、守護神君」


声を聞いた時には、すでに席から消えていた、水神、不器用そうな神様だったが、優しい方だった


「では元の体までお送りします、次呼ぶ時は、必ず言ってからにしますね」


「そうしてくださるとありがたいです」


風が吹き始める、この方はやはり風神様らしい

風は徐々に強くなり、足元から薄くなり始めてきた、そろそろ帰れるな


「神でありながら、現状頼ることしか出来ないのが悔しくてたまりませんが、よろしくお願いしますね」


申し訳なさそうな顔をする風神、何と返したらいいものか、任せろ、なんて言えない


「そんなことありません、頼りにしていますし、今回も助かりましたよ、荷が軽くなりましたから」


そういい笑って返す、ここに来なければ、きっとどこかで壊れていただろう


風神も、同じように笑いながら


「、そうですか、それは良かったです、ではまた」


と返してくれた


瞬間、意識は空に落ちる、あのとき見た景色と似ている、ラナンさんと初めて降りた時の世界の景色と

だが今隣に人はいない、でもあそこでみんなが、きっと待っている


飛び降りる中、体の重みこそ感じない中で、一つ決意が定まった、前飛び降りた時よりも固く思い2つの決意

曖昧だった護る決意は世界と、そこに息づく人のために

もうひとつは


「今度こそしっかり話をしましょう、ラナンさん」


去ってしまった人を、守るための決意



意識が空を飛びしばらく、視界が暗転した

重い瞼が視界を遮っていた

体には人2人が寄りかかったような、布団の重み


「ん? 重み? 」


目を開けると、数日間は目にした、真新しい天井

外は夜明け、人々が起き始め、窓が開く音が聞こえた

布団には2人ほど突っ伏していた、どうやら起きるまで待っていたらしい


「風邪引かないといいけど」


そういい、立ち上がる、近くにあった簡易的な寝床? にあった掛け布団を2人にかける


建物は崩れているものが多かったが、人々は絶望しているように見えなかった


「護れたか」


思わず漏れた一言は、自身言っただけなのに

妙な達成感を運んできた、口元が緩んだのがよくわかった




風が吹いている気がした、朝の風、程よく涼しい心地よい風が、

窓は閉めたはずなのに


「あ、」


窓の前には、見慣れた人影がたっていた、

昨日まで眠っていた人影が、窓を開け、街を見て、風を浴びていた


「おはようございます、レナイト様」


「っ、!」


思わず駆け寄って飛び込む、窓があったが、安心して胸に飛び込んだ




「おかえりなさい、リーベルさん」


おかえりなさい、そうか、ここにひとつ、私の居場所が増えたのか

目を擦り、流れそうなそれを誤魔化す、朝日の指す彼女は、綺麗な笑顔だった


「綺麗な緑色ですね、やっぱり」


「リーベルさんが選んだんですよ、これ、当たり前です」


「違いますよ、それは私が選んだものではありません」


笑いながら、服の裾で涙を拭いてあげる、疲れているのだろう、くまができていた


「しばらくお休み下さい、みんなには私が言っておきます、綺麗な色なんですから」


そういい自身の布団に寝かせる、すぐ寝てしまったところを見る辺り、やはり無茶をしていたのだ


「起きた」


声と同時に後ろから抱きつかれる、白髪の少女も同じく、白い肌には目立つくまがあった


「細かい話は後にしましょう、休んでください」


そういうと、力が抜けたように倒れ込んできた


「ごめん、力入んない」


やれやれと、抱えて布団に入れる、これだけ心配されるとは

逆に心配になると言いたいが、どことなく嬉しさがあった、これは閉まっとこう


「さて、と」


あとは扉の隙間から見える、服の正体だけだ


「zzz」


はぁ、と溜息をつくが、ここまてまくると嬉しさが勝つ、

きっと今私はこの上なく感謝している


心配してくれてありがとうと、無事でいてくれてありがとうと


寝ている彼女たちを起こさないよう、思うだけに留めて布団にいる3人を眺める


右を見れば、窓の外には守れた人々の声と町から漂う、生きているという風の匂い


左には、守れたということを確信させる、安心して眠る三人の友人


短いながらも大きい戦いが終わった、余韻は静かだったが心地のいい明日が帰ってきた




最後まで読んでくださりありがとうございました

一章もあと少しで終わりです、投稿頻度は週2から週3にしていますが、ブックマークなどしてお待ちいただければ幸いです

では次回もまた読みに来てください

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