第16話 研究室〜災とは〜
こんにちは、初めまして、本作を開いて下さりありがとうございます、是非最後まで読んでくださると嬉しいです
「まさか、ここまで探り当てられるなんて」
天才だ、前代、その前も私のコピーが破られたことはあっても、この研究室にまで来れた者はいなかった、それが今覆った
「指輪の神器の少年、元が人間とは思えない」
いや、元が人間だからだろうか、彼の中での時間は私達災や前の守護神と違って"速い"から、いつか再生するなんて、前の守護神のように世界そのものではなく、世界の中の全てに視点を当てられている、酷く人間くさい
「でもそれが、一番の正解なんだよね」
認めざるを得ない、私は負ける、この空間が見つかった時点で
"ようやく役目を終えられる"
「行きましょう」
ラナンさんと共に、空間に入る、酷く静寂なそこは、世界とは思えないほど、死にきった世界に見える
音は死に、風は通らず、空は光らず、地面は漂白されている、おおよそ人が、知性があるものがいられる場所ではない
「ぐっ、っ」
先の先頭のダメージが、疲労が一気に押し寄せる、視界は歪み、白い地面と黒い空が混ざり合う
「大丈夫!? 」
「なん、と、か」
膝が地面に着く、顔も付きそうになってすんでで、手をつく、その手も震えている
「支えるから、進める?」
「はい、」
肩を貸してもらう、ラナンさんは風で浮きながら高さを揃えてくれる
「杖の神器、だいぶ神秘が薄れてますよ」
「私だって無茶したんだよ、君ほどじゃないけどね」
そういいながらも前に進む、ラナンさんの風はいつもより乱れが多かった
〜虚空の研究室〜
「ここまでたどり着いた守護神はあなたが初めて」
そう語る災の少女、ベッドに横たわり、三本の管をつけられているその光景は、死に際にしか見えなかった
「そこまで弱ってるんですか」
「違う、元から」
「元から? 」
元からとは、何年前からだ? ただでさえこんな何もない空間で、どれだけこうしていた?
「私は背負った力が大きいから、他の子達から供給したり、世界から神秘を拝借してる」
「他の子達、そっか、3人の災の事ね」
ラナンさんは何か知っているようだった、いつになく険しく、しかしそれ以上に哀れみを感じる視線だった
「本来なら、私は最後の災なんだけどね、イレギュラーで私が出たんだよ」
「イレギュラーとは? 」
そう聞くが少女は弱っていて目もほぼ開いてない状態、ただでさえ器が弱っていたのに先程のあの勝負で
「っゴホ、時間ないからさ、君は役目を果たしなよ」
「いや、このままじゃ何も知らないままになる、君、いや話的に君たちは何者か教えてもらう」
「わかってるけど、っゴホ、それはそこにある紙を読んでもらうしかない」
指さす先に、机と、その先に陣が4つ、管はそこにつながれている、そして机の上に、ノート? らしき書物が置かれていた
「それを読んで、ラナン? に聞けばほとんどわかる」
そう語る少女は死を受け入れているかのように、むしろ喜ばしそうに口の端を緩める
「そうですか、っ、ほんと分からないものですね介錯なんて、習っても使わないと思ってました」
余った体力で、刀を握る、手は震え、足も立つのがやっと、こんな状態で
(苦しまず死なせてやれるか? )
「ようやく、終わり」
ふと呟かれたその言葉に、違和感を覚える
「終わりたいのですか? 」
「うん、もうこんなの止めにしたい、君ならできるでしょ? 」
どういうことだ、なぜ、この世界は完璧だとでも? いやそれ以上に
「主人に指示を貰ったと? 」
指標は主人のはず、だがここにそれらしき者は居ないし、戦いの最中、ひとつも手を抜かず、こいつは国を、そこから世界を壊しに来た、だと言うのになぜ
「あなたの言う主人は、どこにいるのです? 」
「そこに」
指を指す、その指の向かう先は他でもない
「私? 」
「正しくは君と、それまでの君の立場のもの全て、私たち災いを創ったのは」
"君たち守護神じゃないか"
「なっ、」
守護神が作った? 災を?だれが? いつの? なんのために?
「あぁ、やっぱり聞いてないんだね」
少女が語ろうとした瞬間、ラナンさんが神秘を構えた
「余計な話をして付け込まれないで」
「ラナン、さん? 」
いつになく怖い目、いやそんな感じじゃない
「誰、? 」
「やっぱり、ノイズがいたんだね」
2人は睨み合う、片方は憐憫と憎悪の目、もう片方は諦観と、どんな目だろうあれは、どことなく母の目に似ていた
「守護神、あなたが聞きたければ話す、そうでなければさっさと殺す、どっち? 」
「ここまでやって、何か聞きたいことあるの? 」
ラナンさんの気迫に押されそうになる、だが知りたいものは知りたい、何よりこの立場に見合うだけの責任が、私にはまだない気がしている
「聞かせてくれませんか、災のこと、あなたの知ること」
「いいよ、ならひとまず、この世界の騒音を1度止めようか」
そう言った瞬間、ラナンさんだけが白黒になる、神秘の流れも止まっている
「これは、」
「この世界では、守護神か災でないと、許しがない限り"音"を出すことが禁じられる、抑制される」
なるほど、抑制された結果だと、そして守護神がその制限のうち、無許可でいい、
「ひとまず、回生を回しますね、もちろん話せる程度だけですが」
「ほんと君はつくづく人間だね」
空間に似つかわしくない明るい光が、少女を包む
「じゃぁ、聞かせて貰えますか」
「さっきも言った通り、守護神が私たちを、ここを創った」
かつて初代の守護神が誕生した、それは世界の調停、外敵の駆除が主であり、基本世界とその外との境目での仕事であった。
故に人知れず生まれた彼は、人知れず戦い、黙々と作業をこなす
しかし下界を見ることのできる彼は、生まれてきた生物を見て感動し、コミュニケーションに嫉妬した、それは生物から学習した"感情だった"
生物には無論神も含まれた、つまるところ守護神が見ることのできたのは、世界を構築する全て、神も対象だった
やがて守護神は己が孤独であることを知り、寂しさを覚えた、それが引き金となり、守護神は自身の複製体を作り、それを誤魔化すようになる
だが生物、神、やがて人が生まれる事に敵は強くなり、この世界をものにしようとする、そんなスキマ時間、彼が見たのは、人々に称えられる英雄であった
覚えた嫉妬が募る速度を増す、なぜ自分だけ、なぜ自分は誰にも何も言われない、視線も、声も、存在すら気づいて貰えない
「こんなものになんの意味がある」
覚えてはいけないものが増え、歪む、そして初代の彼はとうとう、外敵を全て滅ぼし、外から何も攻めてこなくなった
「終わった、ようやく終わったぞ」
嬉しげな言葉と反対に、募る嫉妬は止まらない、そして彼は狂気へと足を踏み込んだ
「そして私達を作った」
「なぜ? 」
「守護神に、栄誉を、賛美を、私たちは敵役、貴方たちは英雄役」
ありえない、そんなことが
「いや待った、ならなぜここまで続いている? 」
「それも簡単、初代は私達に勝てなかった、初代は何も、この物語においての英雄が自分でなくてよかった」
「守護神の誰かが英雄になれば、守護神全体が大きな栄誉と賛美に見舞われる、それはひとりが求められる最大の栄誉だ」
「だから、受け継がせたと? 」
「そう、もちろん勝つつもりだった、ただ勝てなくても良かった、彼は負けた世界と死んだ守護神が多ければ多いほど手に入る栄誉と賛美は大きくなるし、勝てばそこで目的のものが手に入ると考えた」
「それが輪廻の理由」
「そうだよ」
「終わらないように、引き継がせた、守護神の役目として、私たちにも、役目として」
ふざけている、それではまるで、世界全体が一人の欲望のために動く劇場、失敗すればそれはただの1幕としてあっさり片付けられる、前の世界も...
「だから、これを辞めるなら殺すしかない、私を」
この災の立場も、ひとりが作った劇の被害者、しかもそれを知っているのに、親に位置するものを殺し、多くを殺してきた
「完璧な世界は、私たちの役目が終わった世界、それは私たちが死んだ世界、これが輪廻の解脱、初代がそう決めた」
突如、虚が開く
「そうだったな」
「大剣、どうして」
「いや何、断片的に思い出した、初代はわしの主人だ」
な、ならこの大剣は初代の守護神の神器!?
「でも守護神の神器は武器じゃダメなんじゃ」
「それはおそらく途中から、今の話を知った者が決めたんじゃ、終わったところで戦いとその栄誉と賛美を求める者がその立場につけば」
「また同じことになる」
災が納得したかのように首を縦に振る
「そしてもうひとつ、災よお前も気づいている、いや知っているな? 」
「知ってる、というか聞いたからね」
「何を? 」
「今言った通り、守護神は危険なものと途中の守護神が気づく、それを伝えた結果、お前さんの前の守護神がそれを未然に止める術を編み出した」
「そ、それなら」
「守護神の殺害」
はっ? どういうことだ、ならなぜ
「ならなぜ私を? 」
「災は、貴方にしか倒せない、貴方の事もそれと同等か、それ以上のものしか殺せない」
「だから前のやつは、次で全てを止め、予防策もこの世界に送った」
いやな話が進む、現実が徐々に鮮明になっていく
「それが、」
一人の名前が頭をよぎる、その名前は自分がつけたなんて事ない名前、いつも呼んでいた明るい
「ラナン」
沈黙が流れる、誰もがわかっていて返事をしない
ラナンさんは、世界を守るために、選ばれた守護神を最後までサポートし災を殺す、そして最後、守護神、私を殺して本当の平和をもたらすために
「少し違う」
「えっ? でもこれが今の話だと」
「守護神はあくまで、世界が先に生まれて産まれてくる存在だった、それが引き継がれてるだけ、でももし、守護神が死んだら」
「世界も死ぬ、当然と言えば当然だ、外敵はほとんど滅んだにしろいない訳じゃない、それに調停の役目があるしな、どれかひとつでもやらなきゃいかん時、守護神がいないなら、それは世界というものの死だ」
「じゃあラナンさんは」
「彼女の目的は、私的なもの、慕った恩人のために、あるいはそれが死ななきゃいけない原因となった世界への憎悪、そんな世界の死、それが」
ラナンさんの目的
「本来なら降りる前、適当な理由つけて雲隠れして、最後殺すつもりだったんだろうな、だが何らかの理由でそれが出来なかった」
「つまるところあれだな、世界そのものを呪う、妖精崩れだわな」
嘘だと信じたい、と言うよりそう思うほうが普通だ、こいつはさっきまで敵、信用するとこなんてない、はずなのに
(さっきのラナンさんの表情)
漠然とした不安が襲ってくる、これを嘘と断じて良いものか、分からなくなってくる
「どうしてもわからんなら、直接聞いてみろ」
「何言ってるんです? そんなの嘘つかれて」
大剣はやれやれと、横に体を振る、いやなんだそれ
「妖精は性質上嘘をつけねぇ、あいつの神秘はな、前の世界の"妖精"の想像から抽出されてんだ」
「だから嘘はつけないと? 」
「なら解除するよ」
唐突にラナンさんが動き出す、不思議な顔をするラナンさんが、いつもの彼女に見えて、信じたくて言葉を投げる
「ラナンさん」
「何? なんか言われたの? 」
いつになく明るい笑顔、さっきまでのがまるで嘘のようで
「ラナンさんは、世界が無くなればいいと思いますか? 失った前守護神のために」
「...」
音が死んだ空間で、何故か私の鼓動はよく聞こえた、だがラナンさんは至って静かで
「嘘つけないなぁ、まだ」
俯いてぼやく、しばらくして明るい笑顔で答えた
「正解、」
最後まで読んでくださりありがとうございます
ラナンは実は途中まで純粋なサポートとして書くか、それとも裏切らせるかで迷ってはいたんです、ただ最終的に裏切らせる形で書くことにしました、正直苦渋の決断でした...
それでは次回も、本作を読みに来て下さると嬉しいです




