第15話 殻の中の恐怖
こんにちは、初めまして、本作を開いて下さりありがとうございます、最後まで読んでくださると嬉しいです
目の前に立つ少女、全ての過去を捨てたわけじゃない、だが持ってきた過去も、捨てた過去も、すでに恐怖にはなり得ない、それは全て、父さんが晴らしてくれた
「王国を滅ぼされる訳にはいかないな」
手をかざし、父の落とした刀を引き寄せる、不思議と邪魔されない
「叩き落とされると思ってましたが」
「その腕が叩き切られるかもしれないから」
勘のいい、確かに狙ってはいた、がこちらの刀がとれるならそれはそれで好都合
真打と影打、二振りを手元に戻す、白鞘ではあるものの、手に馴染む感覚は、盲になる前の父の温かみがあった
「今更ですけど、なぜ滅ぼすのか聞いても? 」
「役目だから」
「その役目とは? 」
そこが引っかかった、ラナンさんの話を聞くに、この災いたちは世界そのものを滅ぼし続けている、そこに目的や意思がなく感じられた、支配ならまだしも、壊し尽くして残った灰と塵、それらが新しく形をなしても同じ末路を辿らせるこいつらが、なにを考えているのか
「あなたたちの言う、機械や機構に意思があるのか?」
「つまり自身を機械などと同じと」
なら、それに命令を加えたのは? そしてやはり、その先に見ているのは?
「なら壊し尽くした先に、あなた方は何を望むのですか?」
「永遠の栄光、終わらない賛美を、」
飛び出た言葉は、目の前の無感情な顔から出るものとは思えないほど、人間くさい物だった、何より壊すことで誰から栄光を受けるのだ? だれが賛美を送ると?
「主人に」
「主人? 」
災いの主人? つまりただでさえ強いこの災の上がいると? そんなのラナンさん言ってたか?
「いずれにせよ、無からは賛美も栄光もありませんが」
「それは全て完璧な世界に、ここがそうなら残る、違うなら滅ぶ、それだけ」
まるで世界を試すような言い方、何を試しているか、さっぱりだが
「さて」
話もそこそこにと言わんばかりに、陣が少女の周囲に現れる
水面が荒れ、水流が陣へと集まる、同時に少女の手には三日月のような弓が握られる
「月弓」
陣に集まった水は光になった
「まだ、終わってないよ」
空気を裂くような速度の光の弓が放たれる、番えられた1本、陣の数分4本、合わせて5本
「さすがに早いな、だが」
弓の対策はもう父に教わった、使うことなんてないと思ってたが、人生分からないものだ
「"居合抜刀・飛沫斬り"」
放たれた三本は落とし、内2本は躱す、しかし既に次を構える少女、不安定だが
「"烈迅の矢"」
躱したまま、天と地が逆さまな体制のまま弓矢を作り放つ、風は水面を裂き少女に向かう
「足りない」
しかし矢は少女の1射で散ってしまう、烈迅の矢は風を纏う性質上、距離が遠ければ威力が増す、逆に
「近すぎる」
近ければその威力は決定打には程遠いものとなる
「隙だらけ」
「"壊世の焔"」
(鎧纏、重盾、)
「グッ」
当たった箇所に鈍重な痛みが響く、神秘で強化してこれか
「回生」
「させない」
速い!回復が発動する前に二撃目が入る、仕方ない
「鎧纏・疾」
大きく距離をとる、同時に中断した回復を済ませる、同時に確信が一つ
神秘の流しが早すぎる、技の回転率、切り替えは敵わない、というか神秘での勝負はやはり勝ち目がない
(決めきれない)
神秘の扱いはどうあっても私が上、だけど決めきれない、すんでのところで躱された、いつもならこれで致命傷なのに
私の知らないところなら、彼に分がある、とはいえ些事、彼では勝てない
やっぱり今回も駄目かな
「ならこれはどうかな」
水面の全てが集まる、それは陣へと集まり、やがて空を覆う月となる、
「"月弓・新月"」
月は、弓と矢に、光輪の後ろにあった月は役目を終えたかのように新月となる
手で矢を番え、足で弓を押す、奇妙な構えだが、こもる神秘は先の矢よりも膨大
(まだ余裕そうにも見えるけど)
放たれた矢は遅いが、避けられるような大きさではない、斬るしかない
「虚」
虚ろを開く、真打を取り出し、炎を纏う
「燎原・大太刀」
刀身は前よりも長く、炎は前よりも熱く、鼓動は前よりも早くなる、相手はまだ余裕そうに見えるのに、こちらは余裕がない、ジリ貧もいいとこだ、ならここで、進化するしかない
「鎧纏、破衝、重撃」
「居合抜刀・夕陽」
光と炎がぶつかる、握る手が、支える足が、震える
逃げたいなんて思わない、前へ、進むために、刀を前に、明日に
「っ、はぁぁぁぁあああああ!!」
紅い一閃が、光の矢を斬り裂く、息付く暇もなく、少女を見る
「残念、終わりじゃない」
二つに割れた光の矢は、およそ百数十の矢に変わる、速さは前より速い、避ける
(いや、何があるか分からない)
斬り落とす、父に習った技と神秘を合わせれば...体が持つか、神秘と技が噛み合うか
(ぶっつけ本番、好きじゃないが)
炎はそのままに、圧縮し元の刀身に戻す、風を刀に同時に纏う、散った矢の風も全て手繰り寄せて
「"疾風怒濤・死垂焔"」
(斬撃が分かれる攻撃、でもそれじゃあ)
「威力が足りないよ」
「いや、十分です」
全ての矢が薙ぎ払われ、斬り落とされた
「まさか」
そのまさか、放たれた斬撃は全て本物、無論父の方が早かったが、神秘がある以上、空想の父の速さに追いつける
「腕が持つか分かりませんでしたが」
振るった腕から肩にかけての激痛、舌を噛み表情を殺す
ちょうどいい距離、体勢も申し分ない、腕だけだが
「鎧纏、破衝」
再度風の矢を構築する、今度は先よりも多く、戦闘の余波でできた風も全て使って
「お返しです、"烈迅の矢"」
先程よりも到達時の威力は期待できる、射った瞬間、後方に大きく吹き飛ばされる
だが、おそらくこれだけでは決定打にならない、撃つ前に見た少女の、あの警戒する素振りすらなかった姿勢、おそらく万全であるならこの矢ですら、防がれる
「"世駆"」
「なっ」
だから少女の背後に飛ぶ、目の前の矢の神秘のせいで、移動の神秘は感知できないだろうと踏んだが
「大当たりですかね」
背後にまわられた、だけど彼は素手、神秘があってもこの間合いで素手は無防備すぎる
「功を焦ったかな」
「いえ、充分慎重ですよ」
瞬間、彼が手を振り払う動作をする、まるで剣を握っているかのよう
「はっ? 」
違和感を感じて腹部を見る、血だ、今までで、一番の出血量、それより何で?
父が使った技で最も早く、最も重い一撃、光芒、それと神秘を合わせる
「"抜刀・光芒"」
手に震えはない、心に迷いは無い、一寸の狂いもない光の一太刀は、空間に光の道を落とす
影打を使い、少女に向かって斬りつける、相手にとって見えない刀は、間合いを知らせず、空を切るかのように身体を斬り裂いた
影打の特性、対象に武器そのものが認識されなくなること、不意打ち、それで殺すことにかけてこの刀は優秀だ
直後、白い、人とは思えぬ少女から、同じ赤い血が目に入った
地に落ちた少女、自分も地に落ちる、既に倒れそうな足を、刀を支点に何とか前へ進む、これで最後だ
「流石に勝負あり、でいいんですかね」
刀を支点に、体が持たれる、地面にあった水は既になく、目の前の少女も、神秘も体も弱って見えた
「そうだね、君の勝ちだよ、今回は」
今回は? 逃げられるとでも
「言っておきますけど、弱っていても逃がしませんよ」
「逃げないよ、こんな体でこの子が逃げられるわけない」
少女の目を見る、あの時のオーガと同じ、目の前の少女ではない何かから見られている感覚
「本体は別ということですか」
「正解、君たちは私の本体を見つけるまで、彼らと戦うことになる」
恐怖の本質、それは終わらないことだ、幾度倒して、どれほどの日々を前に進んでも、終わらない戦い
「流石、恐怖の災、恐ろしいことこの上ないですね」
もう体力なんて残ってない、支える足も、手も既に痙攣している、限界だ
(回生、いや無理だな、神秘はあっても集中して回せる体力がない)
「そうだね〜まさかこれも本体じゃないなんて」
聞きなれた軽薄で、けどどこか安心する声が背後から聞こえた
「ラナンさん? いつの間に」
「おつかれ、永守くん」
そのいつもの会話をした瞬間、敵を前に足も刀も倒れかける、咄嗟にラナンさんに支えられ、何とか持ち直す
「幾ら力があったとはいえ、初見でよくここまで」
「いえ、本体じゃないようなので」
「前守護神、その前も、恐怖の本体は見つけられなかったって、前の方々の考察だけど、"世界"にいないんじゃないかって」
世界にいない、どういうことだ、世界の外、あの時の雲の上のような場所か? そんなの
「探すのにどうすれば...」
世界の外、それはもうひとつの世界か、独立したなにかか、似たようなものが観測できたか?
「そろソロ、この接続モ切れマすので、では」
光が消えかけた時、ふと神秘が少女の光輪と、月と繋がっていた、まるで神秘が月に流れるように
(終始消えることのなかった月、蒼い月、光の月、新月、それらはずっと光輪と)
そして最初、そこに閉じ込められた、あそこは別の世界、狭くとも作られた孤立の世界というのが父の考察だった
「もし、当たっているなら」
真打を取り出す、刀を月に向ける
「世界にいない、それはこの世界にないから見えない、ならその"月の中にあった世界は? "」
「ラナンさん、神秘少し回してください」
「いいけど、なんで? 」
「な二をするツもり? 」
真打の特性は、本来斬ることができないものを斬ることが出来るもの、世界が隣接していて、その隣接する壁が目の前にあるなら
「その"壁"を斬ればいい」
「! まさカ」
月そのものを斬る、最初と逆、月の外から中に、更にそこから、作られたものではなく
「本来の、隔たれた月へ」
新月がひび割れる、目の前に倒れる少女の神秘、それが流れる先の月が中に隠した世界
「な、こ、これは」
ラナンさんが驚くのも無理はない、私だって驚いた、月の中にあるのは
「研究室、ですね」
白い床、黒い空が辺りを包む世界、いやこれではまるで部屋だ、広い、果てしなく広い虚無の部屋
その先に、小さい白いベットがあるのが見えた、
「行きましょう、この先に居るはずです」
最後まで読んでくださりありがとうございます
特段書いておきたいことは、あることにはあるのですがこの話だと、となりました
なので簡単に影打ちの話をしておこうと思います
武器を対象に認識させなくなる、というのが付随した能力でした、
例えとして言うなら、相手からは永守が空を握っているようで、しかし神秘を感じようとしても感じられない、全てにおいて不可知と言うのが能力になります
弱くね? と私も考えた当初思ったのですが、戦う際、間合いはおろか、多少朧気にそこに何かある、という感覚すら得られず、ただ急に手を横に振った動作で切られるのは、結構意味わからないだろうなとも
それではまた次回も、読みに来て下さると嬉しいです




