第14話 廻る星は未来を照らすため
こんにちは、初めまして、本作を開いて下さり嬉しいです、是非最後まで読んでくださると幸いです
目の前の老いた男が刀を拾おうとする、
「所詮は偶像、霊体のようなもの、どう足止めする気で? 」
「決まっている、ただ戦うのみ」
男が刀を拾い上げる、瞬間体に重圧がかかる、空気は冷たく厚く
「なぜ、一体どうやって」
「見ていたからだ、ずっと刀から」
「、付喪神か」
「それは知らんな、ただ覚えているのは、あの時、肺の焼けるような痛みの中で、最後に一振の刀を見た」
男が鞘から抜く、呼吸は静かに、目は虚、凪いだ水面が老人の足元に広がったように見えた
その老人に、恐怖はない
「参る」
流れる水のように、しかしそれより
(速い)
刀の軌跡も見えない? 後ろに引く、いや間に合わない
「幽玄風渡」
「ふむ、」
咄嗟に神秘の術を使い躱す、同時に、目の前の老人の神秘が見える
「老人、そのまま戦えば消え失せるぞ」
神秘は今、彼を成すのに最も必要なもの、刀に宿るにせよ、それは魂魄ではなく神秘があってのもの、それを使い切れば当然
「無論気づいている、しかし止まる理由にもならん」
「何? 」
再び老人が刀を振るう
(同じことを)
また風を起こす、だが刀は前より早く、こちらの風が全て切り裂かれる
「バカな! 」
「"白柳"」
風が裂かれ、必死に避ける、後ろの光輪が割れ、月に亀裂が走る
「ありえない、この光輪を」
「儂は既に死んでいるはずの身だ」
老人の神秘が全て刀に流れ込んでいる、文字通り命懸けというわけか
「古い星が死に、新たな星が光るように、過去がそこにありすぎては未来の光は何処へゆく? 月の少女よ」
消えかける老人、その目は恐怖を抱かず、その足元に見えた水面に波は立たない
「私は永遠に在る、君たち人間とは時のあり方が違うよ」
「そうか、そう想うか」
老人の変わらなかった表情が、少し緩んだ、笑み、まるで父のような笑みだった
「だが、あいつは違う、まだ歩もうとする者だ、過去の月から離してもらうぞ」
〜仮想現実、蒼恐の鏡内部〜
燃え盛る私の家だったもの、それに背を向け、歩いていく父、十数歩あるき、振り返る、実感が再び襲う
もう、私の家はないのだと
「その通りだ、だが今がある」
また景色に白が走る、やがて持ってきたのは、つい最近までいた孤児院
「ここは楽しかったか? 」
「どう、だったかな、楽しいことはあったけど、楽しい居場所ではなかったかな」
表の通り、街道を歩く、車もなく、会話も息もなく、そこにあるのは、少し前の過去、その骨組みのみ
だがそこに父の声、姿があった、あるはずのない過去が重なり、眼前に広がる、戦いのことなど忘れてしまいたい
「あの時のことを引きずっているのか」
「自分のせいだと思うことすら、あなたに失礼だと思ったから」
その言葉を聞き、父はため息を着く、また景色が飛ぶ、白ではなく、蒼い空、水面に立つ
「わしはあの時、何も見えていなかった、目ではない、お前のことも、お前の母も、何も」
父が歩み寄ってくる、水面に波が立つ、それまでずっと遠かった父が、ようやく近くに来てくれていた
「気づけばお前は歳を重ね、世界を超えた、だと言うのに、過去の壁をそのまま未来に持ってきていた」
父が手を取りその手をゆっくりと見ている
「いや、わしが持たせてしまったんだ」
「そんなことは」
言い淀む、そんなことないと言いきれない、どこかに、そう思っている私がいたし、それが間違っているとは言えない、言いたくない自分がいた、未熟だろうか
「わかっている、お前はそれを儂のせいだと言っても、責任の全てを儂にあるとはいわないだろうな」
「まぁ、そうですね」
父の目を見る、盲目になって以来、目を合わせるなどしなかった、いつぶりだろう、父の目を見て話すのは
「あの時は互いに見えていなかった、いやわしが見えないからとお前たちの目まで覆ってしまった」
頭を下げようとする父を止める、それは多分望んでいた景色じゃない、お互いに
「今は見えてる、それでいいよ」
「っはっは、そうか」
笑った父も久々だ
「お前の手の豆、背も顔も、何一つ変わらんのに、随分と成長したな」
思いにかかっていた霧が晴れる、あらゆる視界のぼやけが取れ、忘れかけていたことを思い出す
恐怖はある、だけど
それはもう壁にならない!
「時間だ、あちらのもうひとりの儂が、月の少女の術に綻びを作る」
言う度に、父の体が消えていく
「なんか薄くなってるけど」
「そうだな、この全てに儂の全てをかけた、神秘、お前に生まれたその力が、ただ宿るだけの儂を刀から出してくれた」
刀を差し出してきた、それを受け取ると全てが消えてしまいそうで、受け取りたくなかった
「文字通り、その神秘を全て、存在の全てを賭けた、綻びから出した瞬間わしは消える」
父が刀を手放す、咄嗟に、それを受け取ってしまう、安心したような顔をする
落ちた刀は手に、こぼれた涙は足元に落ちた
「勝手に安心すんな」
「わしの息子だろう? 儂が儂を信じるように、お前を信じている」
初めてだ、こんな汚い口を、笑いながら使ったのは、ましてや相手が父とは
「行ってこい」
「行ってきます」
涙がこぼれる、嬉しくて、悲しくて、全部グチャグチャで、でも晴れ渡っていた
空間に亀裂が走る、そこに向かって走る、小学校の頃、家から学校に向かう時のような軽い足取りで、けど背負っているものは何一つ忘れず
〜現実にて〜
「儂もやったことがないがな、月を斬るなぞ」
そういい、刀に手をかける、懐かしい、この刀に何度救われ、何度狂わされたか、その全てが色鮮やかだ
「関係ない、もうあなたは、私にすら触れられない」
全く恐ろしい、災い、神なんて前の世界の儂には未知すぎる領域だ
「だがな、壁なら幾度となく斬り伏せた、貴様はあいつの、わしの誇りの愚息の壁だ」
腰を落とす、構え、武者震いが刀にかけた手に渡り、金属の音が鳴る、その全ての雑音を意識から外す
しかし、笑みがこぼれる、こんなに華やかな終わりがもう一度与えられるとは
「参る」
不敵な笑みを浮かべる老人、いや武士というものなのかなこれは
「手は、抜かない 」
初めてだ、こんな感情、敵に対して、今まで作業的だったのが、どこか相手に信頼と、尊敬がある
遥かに広がる平原が無間に続く水面に、蒼く深い術、これを守護神意外に広げることになるなんて、
「無間の水面」
神秘が沸き立つ、今自分にある、繋がっている神秘全ての表出と同時並列使用を可能にする技
「この水面全てが、私の力の全て、人ではこの水面全ては斬れない」
「そんなもの初めからわかりきっておる、だから」
水面から雫がたつ、老人が刀を抜くのと同時に、私も刃の無い柄に焔をともす、
それは全ての恐怖、人々が抱く恐怖全ての集まり
足元に広がる水は、柄に集まり、焔となって、刃となる
「"死んだ世界の恐怖すら、時を超え世を超え、今を殺す"」
祝詞を口ずさむ、焦り? 気のせいかな
「"壊世の焔"」
「"光芒"」
老人の間合いに入る、それはつまり自身の間合いでもある
鋼の打ち合った音、それは鈴の鳴るように静かに、だが過集中の2人にも聞こえるほど長く響く
緋と白の一閃が、暗い空と水面に、夜明けがごとく光を落とす
「グっガハ...」
後ろで、老人が刀を落としたのがわかる、老人の一撃は、腹に当たったが、この神秘の鎧は何も傷がなかった、所詮は人、だがここまでやるとは、今までの人の中でも最も未知だった
勝利したとは思えない、重い足取りで、老人の前に向かう
「初めてですよ、私が恐怖する相手なんて」
そういい、焔の刃を老人に向ける、なお不敵に笑う老人、目的こそ違えど、最初に殺せてよかった
「役目は果たした、この首くれてやる」
いいながら、首を落とす前に光の塵となって消える、後ろからも、光の塵が舞う
「えっ、そんな」
光輪が切り裂かれていた
2発、腹に一撃、これはついでとでも言うの? 通り過ぎて振り切る直前の刃で、斬った
「しまった! 」
走る先、ようやく亀裂が近づく、光の塵が私を導いた、過去が今へ導いてくれる、そして、今にある壁を切り裂いて
「未来へ進まなければならない、私の恐怖は、世界の立ち止まる理由にならないから」
走りながら刀を抜く、神秘を込め、亀裂に向かって斬り込む、恐怖の中に生まれた僅かな亀裂
「こっからが反撃だ! 」
「万世断刀・柳」
だが過去からずっと着いてきてくれるものもある、父の教えてくれた技術、送ってくれた刀
抜刀と同時に、亀裂を斬り開き、恐怖から外に出る、あるべき未来へと、そのための反逆へと
〜現実〜
光輪が砕けた、急いで修復する、何よりも早く、水面になった神秘も回す、けれど
「遅かった」
蒼い月は砕け、空が青空になる、陽の光を後ろに、見慣れた人影が、飛んでいた
「ここに恐怖はない、もうあの月は登らないぞ、災」
水面に映る2人と、太陽の光、蒼い月の光はもうない、水面に降り立つ少年は、戦う前よりも迷いのない表情だった
「残念、何も分からず、死んでくれれば楽なのに」
〜王都ロベルティアにて〜
城壁外全てに、得体の分からない水が広がる、同時に魔物たちは全て消え、空は青空に戻った
「ルーシア姉さん、とりあえず回復を」
「わりいな」
ルーシアさんと戻って城壁内の警戒にもどる
「やっぱり、城壁内のも?」
そばに居た団長さんに聞く
「ああ、外に水が満たされたという報告と同時に、魔物たちも水のようになって外に出て行った」
「なるほどね」
これはおそらく敵の神秘だ、幸い害を及ばさない縛りか契約があるようだ
それでもこれだけの神秘、遠く、遥か遠くまで水平線、これが見えるのはこの国と、戦っている永守君だけ、神秘に多少触れたもののみ
(世界全体の騒ぎにはならないかな)
とは言え安心にはまだ早い、助けに向かうべきか、残るべきか
「ラナンさんリリーちゃんが」
酷く焦る様な顔をした副団長が口にした、名前に、思わず冷や汗が流れた
〜教会にて〜
熱い、苦しい、怖い、前に感じた"怖いが"溢れてくる、遠くから聞いた声がする
「大丈夫!? リリー!」
ラナンさんだ、けど約束破っちゃった、外に出て戦っちゃった
「ラ、ナンさ、ん、ごめん、な、さい」
優しく手を握ってくれる、あったかくて、"怖い"が消えていく、ほんとに優しくて、眠く、て...
「もう大丈夫なの? ラナンさん」
「うん、多分毒気にやられたんだと思う、解いたからひとまずは」
「聞きたいことが増えていくけれど、今は祈るだけで精一杯だわ」
「後で答えるから〜」
リリーちゃんから感じた気配は二つ、永守君と、恐怖の災、戦えてたのはおそらく、彼の武器を持っていたから、それが調和してくれていた、でも飛んでったって聞いたし、
調和が届かなかったか、意識を割けなかったか
(まだ、リリーちゃんが不安定だ、正直彼の実力よりも、この子の体力の方が危険だ)
「それに」
先へ行かなきゃ行けないのはこの子も一緒だ、残して言ったら怒られちゃうからね
「頑張れ、永守君」
どうせこの発音は何言ってるかわかんないだろうけど、聞かれているかはこの時気にしていなかった。
最後まで読んでくださりありがとうございます
神秘の扱いに関して補足を、魔力や神力は全てこの神秘の派生として扱っています、後の話でもこの辺りは触れますが、そのため基本神秘と他二つとは格が違うものと思ってください
その神秘は永守のいた世界、つまりリアルの現代世界でもあった、しかし時間によって表出しなくなった、という設定です、例えるなら昔神話や伝説、日本だと妖怪、それらの表出、生まれた理由を全て神秘に帰結させています
だから、先代は弱かったから神秘が世界の最後、現代まで表出し続けられなかった、弱まった、逆に今の守護神は未熟ながら天才的ではあるため、この様に強く表出させても平気なんですね
それではまた次回も、読みに来て下さると嬉しいです




