第12話 光を喰らう月
こんにちは、初めまして、本作を開いて下さり嬉しいです、是非最後まで読んでいってくださると幸いです
「災厄が来たぞ!!」
国にいた誰もが、おそらくその声を聞き逃さなかっただろう
「リリーはここにいてね、絶対外に出ないで」
いつもより真剣な面持ちで言い聞かせるラナンさんを横目に、外に出て声のした城壁へと走る、一応大剣も忘れずに
既にローブスト団長、ティナ副団長は着いており、迎撃体制をとっていた
「リーベル、来たか」
「状況は?」
「前よりも敵の統率が取れているわ、魔物の集団というより、私たち騎士団とおなじ、部隊や軍隊よあれ」
言われ外を見ると、無造作に攻撃をせずに、まるで何かを待つかのように横一列に並んでいる魔物の軍勢、なにより脅威なのは
「前回の恐怖の集合体、しかもワイバーンの」
薄々わかっていたが、1度創ったものであれば、最初から出せるのも頷ける
遅れてラナンさんも到着する
「前倒したワイバーンの、そりゃそうかぁ」
面倒くさそうにため息混じりで敵を見据えるラナンさん、やがて魔物の集団の中心、そこにいたヤツらが道を開けるかのように横に逸れる、造られた道を、誰かが歩いてきた
(あれは、一体...)
一際目立つ、白いヴェールを纏う、白髪碧眼の少女、背中にある欠けたような光輪は、妙な恐怖を起こされるよう、少女は酷く儚げで、しかしその時は異質な不気味さがあった
(ラナンさん、あれが)
(この神秘の総量、多分間違いない)
"恐怖の災い"その本体か、限りなくそれに近いなにかだ
黒いヴェールの花嫁、あの時ですら感じえなかった全身を駆け巡り芯から凍るような恐怖に襲われる、その場にいた全ての人間、生物がそれをまず間違いなく、この世のものではない、あってはならないと認識するだろう
「行け」
白い少女が小さく口を動かす、瞬間造物の魔物たちが雄叫びをあげ、城壁との距離を詰め始める
「!、魔法部隊撃て!」
ティナさんが指示を出し攻撃が始まる、右翼左翼にも別れず正面から崩しにかかってきた魔物を、城壁上から迎撃する
「城門に近づけるな!歩兵部隊を前に、騎馬隊は遅れて突撃!」
攻め寄る魔物に立ち向かう騎士、雄叫びの中、初めて武器のぶつかり合う音が戦場に鳴り響いた、
~~~
「決して、敵のリーダーには近づかず、防衛に徹してください!」
そういいながら私も刀を振るう、リーダーであるあの少女に近づくには、まだ魔物の数が多すぎる、
「グゴァ”ァ”ァ”ァ”ァ”」
振り下ろされる巨大な棍棒を、腕ごと切り落とし、首を落とす、こうも巨大なオークを倒しても、戦場の密度はさして変わらないように思えた
(せめて道が出来れば)
そう考えながら、襲い来る魔物達を切り伏せ、苦戦している騎士達をたすけながら、戦場を走り回る
少しして、何体かが、正門から西門へと動きを変える
「そう動くよな、だが」
走り去ろうとした魔物たちは、残らず深い落とし穴に落ちる、
「ベンチャーギルドの方々、感謝ですね」
とどめに魔法部隊が落とし穴に魔法を掃射する、
「今回は戦闘特化のベンチャーギルドの人居なかったけど、やっぱりこういうのは彼らに頼るのがいちばんね」
ティナさんも肩を回しながら、楽で助かると言った具合だ、あそこまで隠蔽と偽装の施された罠、言われてなければ昼でも分からないレベルだ
今のでそれなりの数の魔物が減った、当然、東門までにあるなら西門の方にもあると警戒し、動きが僅かに鈍った、その瞬間を、城壁上の2人が見逃さなかった、
「風神の怒号」
「エアリルデュラハン(神峰颪扇子)」
二つの風が魔物達を切り刻み、吹き飛ばす、これで最初から半分の魔物が減っていた、
喜ぶ暇もなく、異常に気づく、城壁内が騒がしかった、空を見ると、雲の上にワイバーンの集合体が、自身から分裂した魔物たちを、国の中へと落としていた
「そんな立体的な攻撃するのかよ!」
結界を張っていたはずだったが、難なく突破される、
(まずい、いくら神秘を下賜していても、戦えなければ死ぬ)
「ラナンさん!急いで中に!」
「ダメ!今私たちが動いたら、正面が崩される」
それはそうだ、戦える騎士たちに多く神秘を与えてはいるが、それでも私とラナンさんで、戦線を下がらないように押し止めていた、片方でも動けば、充分怪しい
それでもと城の方へと走ろうとした直後、ワイバーンの集合体が、ピンポイントで私の前に、5体降りてくる、
突破口は、今のままではない、城の中に投じられた魔物は、いまやこちらと大差ない数が放られていた、ワイバーンといった強い奴らをこちらに、他残存兵は最初から出し切らず本丸に投げ込む、殺せば殺すほど強さを増す相手にとって、最適解だ
仕方ない、この際全てをそのままに勝つなど不可能だった
"虚"を無造作に開く、誰に隠すようなことはしていられない
周りの騎士は、目を疑っただろうか、運が良ければ、似たような魔法がこの世界にあるかもしれないが、
(大剣、力を貸してください)
「騎士の皆さん全員、国の中に入った魔物共を狩ってください、あとは私が何とかします」
ラナンさんもそれを聞き、城壁上で叫ぶ
「魔法部隊は、それぞれ城壁内の魔物の排除にまわる、城壁上と内両部隊に別れて迅速に倒して」
「ローブストさんも、早く!」
「しかし1人でこれ全てを」
「いいから!早く」
殺されれば殺されるだけ敵は力を増し、負けが近づく、一つでも生かすためにも早く
ーー
「ティナさんも行って、私たちでここは止めるから」
「無理よ!いくらあなた達が強くても、それこそ神でもない限りは」
「だったらなおのことだいじょぶだから、リリーのこと任せるよ」
そういいラナンちゃんも城壁外へと飛び降りる、事態が進んでしまっている以上、止まることも、止めることもできなかった
ーー
開いた虚から、大剣を持ち出す、突如、白髪の少女の目の色が明らかに変わった、先程までどこか遠くを、無感情に見つめていた目は、今は明らかにその剣を警戒していた
私は、城壁内に戻らなかった、第1王女としてではなく、1人の騎士として、戻りたくなかった、私はそこで異質なものを見た
リーベル、彼が大剣を鞘から抜く、黒い風、その中心に白い光が輝く、あの大剣は以前、勇者が街に来るも、抜くことができず、以来鍛治屋の名物になった抜かれずの大剣だ、それを、彼はあっさりと抜いてしまっていた
後ろに気配を感じ、見ると、そこにはルーシアさんがいた、何となくそんな気はしていた、言われても戻らないだろうなと
「戻る気は無いと、ここで戦いますか?」
「当たり前だ、後ろは私の妹と、母上がいる、私がここを抑えるのが騎士として、家族の中での私の務めだ」
剣を構え直す彼女を見て、これ以上は無駄だと諦める
「手を出してください」
首を傾げながら手を出す、その手をとり、自身の持つ魔力と、割ける神秘をルーシアさんに渡す
「これは、なんて量の魔力、となんだこれ、魔力じゃねぇけど、体が軽く、」
「呆けてないで、行きますよ!」
得物を変え慣れないながらも、目の前の敵を斬り飛ばす
「ワイバーンたちは私がやりますので、ラナンさんとルーシアさんは集まってくる奴らをお願いします」
振り下ろされるワイバーンの爪を振り払い、五体の前に立ちはだかる、が突如ワイバーンたちが目の前で吹き飛ばされ、白い手が私を襲った
「リーベル!」「永守!」
二人の叫びが遠くなり、気づくと森のさらにその向こう、平原に白髪の少女と二人でそこに立っていた、少女が空に手をかざし、太陽を掴むように手を握る、すると、空から太陽が消え、夜空でもない暗い空が広がる、
違う、暗くはなかった、光はあるのに、限りなく黒い空、その光景に圧倒されていると、少女が口を開く
「守護神様、守りたいなら私を殺さないとですね」
無表情、嘲笑うでも殺意を持つでもなく、無感情に淡々とそう告げる
虚を開き、刀を抜く、星も、太陽も月も無い、淡く光る空の下、敵に向き直る
城壁内
部屋に残っていろと言われた、出ては行けないと、だけど、数刻前からあちらこちらから悲鳴が聞こえる、窓の外を見ると、恐ろしい魔物が、人を追いかけ回していた
幸い避難を早めに命令していたため、城の中、騎士団兵舎に一般人を匿っていた、だが間に合わなかったもの達は家屋の中で震えているのも見えた
ティナさんたちの魔法部隊がつくも、数が足らず押され気味、
「このままじゃ」
このままじゃ城の中の人たちは怪我、では済まないだろう
また見ているだけだ、ずっと、そうして見たくもない嫌な景色を見てきた、そしてそれを見たくないからこそ、強くなりたいと、リーベルさんとラナンさんにお願いしたんだ
ふと、一本の剣が目に映る、リーベルさんが以前貸してくれたものだ、あの時は全然振れなかったし、今でもそれは変わらない、けど
「見るだけは、嫌だから」
そういった時には既に、剣を持って走り出そうとしていた、が、持った剣は空中で動かなかった
「どうして、なんで動かないの」
何故か、君にはこれは使えないと、そう突きつけられたような感覚だった、
「わかってるけど、助けないと、、じゃないと、また嫌なもの、見ることになる、、、だからお願い」
剣に喋りかけても意味なんてない、わかってるのに、言葉が無意識に飛び出る、
「うわっ」
急に剣がその場から動くようになり、尻もちを着く
なんで、と考えるも分からず、慌てて城の扉まで走り出していた
やっぱり、扉の前には押され気味の騎士数人と、多数の魔物の群れが押し寄せていた
「ここは通してはダメ!絶対守り通すの!」
魔法部隊と騎士のみんなが、魔物の群れを食い止め、斬っている、だけど、相手は止まらず押し寄せる、
それを見て、足がすくむ、飛び散る血、魔物の血のような、変な色の液体、怪我をしている人や後ろで怯える人達
「これ以上は嫌だ」
自分が何ができるか、分からなかったしそもそもなにか助けになれるかさえわからなかった、だけど、何もせずにここにいる人たちがみんな居なくなった時、もっと後悔すると思ったから
剣を抜く、白く輝く、片方しか刃のないその剣は、おかしな空の下で光り輝くそれは、唐突に現れたひとつの星のようで、その場にいた誰もが、それを希望と信じてしまうほど、あるいは本当に希望になるのかもしれない
剣を抜いた瞬間、体を不思議な力が駆け巡る、魔力よりももっと軽くて、早く体に馴染むような
「これなら、私も」
習った基本の動作で、目の前の敵一体を切り付ける、その速度を、その場にいた誰も目で追えていなかった、まだ反応しきれていない隣の敵も切り付ける、一瞬で2体を片付けた
「すごい、こんなに」
間違いなく剣の力だ、だが振るっているのは私だ、守っているのは私だった
「あんな少女が」
「一体あの子は」
「どうでもいい、助けてくれたんだ」
騎士のみんなも、魔法部隊の人も、みんな顔が明るくなる
イケる!そう思い、最前線にたち、向かってくる敵を倒し続ける、
彼女は一本の剣を手に持ち、鎧も盾も持たず突撃する、剣の残光のような白い閃光が、私たちの前を飛び回り、敵を斬り飛ばす、その景色はまるで、ひとつの流れ星のようで、そこにいた私以外全ての騎士たちが、その戦いに圧倒された
10、15、35、50倒したあたりで限界が見えてくる、体力が持たない、視界がぼやけてくる
私たちが見たその光景は信じられなかった、ローブストと共に城の方にもどると、1人の少女が、向かってきていた魔物を数十体ほど、1人で片していたようだ、あのひ弱だった子供が
「、!だいじょうぶ!?」
体力も尽きたのか、倒れる寸前を受け止める、彼女が持っていた武器はどこか変わった武器だったが、そこの見えぬ、恐ろしさ、そして綺麗な力が見えた気がした
「ティナ副団長、その子を城の中に」
そう言われ足早に城の中にいれ、避難していた人たちに看病を任せる、終始、彼女の手から武器が離れなかった、まるで彼女ではなく、武器がそれを拒むかのようだった
平原にて
持っていた刀が少しばかり震えた、刀も武者震いなんてするのかと冗談めいたことを考えていたが、悪い感覚はしなかった
眼前にいる少女は敵、のはずだった、だが少女からはやはり、殺意も敵意も感じず、ただひたすらに無感情だった、ふと気になったことがありもうひとつの武器を取り出してみる
「この武器、何か知っているのか?」
そうやって見せた大剣、少女は明らかに表情を変える、それは憎悪と憤怒を孕んだ表情だった
「それは、私がいちばん嫌いな奴の、いちばん嫌いな過去だ」
最後まで読んでくださりありがとうございます
ここに何を書くか、次回から少しづつ話に関することを書いていこうかと思います




