第10話 律儀なならず者達
食事を終え、各々が自身の用事にもどる、ルーシア様は訓練に、レナイト様は
「公務がありますので」
あの年齢で公務とは、人材が逼迫してるような様子は無いように見えた辺り、才能か本人の希望なんだろう
末恐ろしいものだ、大人びて見える箇所が多いのは、そういう所からなのだろう
「さて、と行くか」
ラナンさんは、相変わらずルーシアさんに騎士団の訓練所に連行されていった、なんか助けを求める声が聞こえた気がしたが、ルーシアさんの目は、近くに行ったら自分も連行されそうだったので、見なかったことにした
(仕返しが怖いなぁ)
一応用事もある、2人が離席した後、レナイト様からの頼み事があった、話にあったベンチャーギルドに関してだ
「協力申請を出して、総意を取れたとお話しましたが、実は一人納得してくれてない方がいまして」
要はその人からも理解と納得を取って欲しいとの事だった、しかも私を指定らしい、この戦線の責任者、或いは敵に関して知っている者を寄越せということだ
(何をされるか分からないなぁ)
道を歩きながら、通り過ぎる景色より早く不安が押し寄せる、とはいえ平和な声は絶えず聞こえていた、これを守るためなら、何がなんでも人手が必要だ
渡された小さい地図を見ながら歩いていく、道中というか所々、地図では分からないものがある、レナイト様、絵苦手なんだな
やっとの思いで、ギルド支部に着く、支部の中でも有数の規模であると言っていたが、思っていたより大きかった、さっきの店の数倍はある大きさの建物からは、荒々しい声がする
「ラナンさん、助ければよかったかな」
唾を飲み、深呼吸して中へ入る、酒場でもないのに酒の匂い、やたら大きい声が耳ざわりなほど、平和で大変結構、だが個人的には滅茶苦茶苦手だ、気が滅入る
「すみません、レナイト様から言われてきました、リーベルです」
受付の人に渡された書類を手渡しながら言う、しばらく確認され少々お待ちをと、奥へ引っ込む、話の通じない受付とかだったら、逃げてただろう
(なんなら、災のゴブリンとかよりこっちのが苦手かも)
こちらをジロジロ見る冒険者たち、名前を言ってから視線が集まるのを感じた、そこまで名前は広がってるのか、悪名、ではないだろうから、変なことには
「おい、お前」
ならないだろうと思ってたのに、とんでもなく図体のでかい男に話しかけられる
「お前が、リーベルか、戦線の責任者のひとり、外から来た旅人だっけか? 」
顔をのぞき込まれ、質問される、はい、と消え入るような声、で答えそうになるが、それでは不安ができるか
「そうだが、なにか」
「そうか、お前がなぁ」
ジロジロと体を見られる、しばらく見られた後、鼻で笑い、周りへと目配せをする
「お前みたいなやつに、この国を任せろと、王様は随分と血迷ったらしいな、あんなスピーチの裏の希望がてめぇみたいなやつに務まるのかよ」
そうだそうだと、ヤジが飛ぶ、いや彼なの視点なら、正論であり最もである、受付の人が後ろに人を連れてきて戻ってきた頃には、総意なんて取れたとは思えないほど、協力には懐疑的な雰囲気だった
「すみません、総意が取れたと報告しましたが、それはあなた次第と言ってまして」
「その通りだ、お前次第だ、こいつらの総意をとれるかは」
後ろにいる、青い髪の冒険者が言う、一際異彩なオーラを放つ彼は、ほかとプレートが違った
何より、出てきてから、他の冒険者の様子が変わる、まるで、彼の意思が、周りの冒険者全ての意思を決めているような、恐ろしいほどのカリスマ、若そうな見た目とは反対に、熟練のような佇まいだ
「お前が戦線の責任者の一人、リーベルか、丁度いいそこの机で話そう」
指を指すのは冒険者たちのど真ん中の机、受付さんが奥の部屋をというのを遮ってそこを指定する、見せしめか試しているのか、いずれにせよ、総意を取るなら
「わかりました」
受ける他ない
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「お茶です、ど、どうぞ」
受付さんが声と手を震わせ、何とかお茶を提供して去っていく、目の前の冒険者はそれほどまでにすごい人なのか、いやそれが無くとも、周りの冒険者の険悪さを見れば、普通は怖い、何より
(さっきの図体でかいヤツ、なんでずっと私の真後ろにいるの? )
逃げようものなら首でもへし折る気だろうか、そんなことを考えていると、向こうから沈黙を破った
「さて、見ての通り我々は総意で反対だ、そちらの書類には総意で賛成、協力するとあるだろうが」
「少なくとも、レナイト様から聞いた限りでは、違うということはあれは嘘ですか? 」
「いや違うとも、協力はしたい、だがお前が責任者にいるなら話は違う」
「なら私が外れ、騎士団やほかの重鎮が責任者になればいいですかね」
「そうすれば今度はそんな簡単に変わる責任者を据えた、国そのものに疑いが出るな」
そうだった、ベンチャーギルドは中立、そもそも国に協力しない手もあるんだ、話を聞いて分からなかったが、そもそも中立と言うだけで、雰囲気なんて微塵もわかっていなかった、しくじった
「お前がそういうということは、それだけ雑に決められた責任者なのか? 」
「もちろん違います、敵を知っているからおそらく王様は私を一人に加えたのでしょう、話が言っているならご存知の通り、敵のことに関して、知ることが少ないのがこの国の現状、そしてあなた方も」
「その通りだ、だからそもそも私たちは戦う必要がない、だがお前たちが助けて欲しいと言う、だが当のお国様は責任者にお前のような素性も一切わからん、こちらからすればさらに実力が見て取れないやつと来た」
「ごもっとも、ですが少なからず話に聞くとおり、私は歯が立たない相手も、私ともうひとりの連れなら撃破することができている」
「それは既知それだろう? 実力の証明の話なら、それは別の話だ」
平行線だ、ならいっその事
「実力が問題なら、今ここで全員をものの数秒て戦闘不能にできるといえば分かりますか? 」
「ほう、大きく出たな」
後ろの男が、低く響く声で応える、だが目の前の青髪の男は動じず、手をかざし男を制止する
「嘘かどうか、今は問わない、長々と言い回したがこちらが言いたいのは至ってシンプルだ」
"お前は何がしたい? "
「守りたい、と言うだけです」
「何を持ってそれを信用しろと? 私たちが益よりリスクが高くても、お前を信用するに際して、貴様が守りたいと言うからそれを信じろと? 」
その通りだ、そもそも中立であるということは、基本国勢や国事情には、余程自分たちに得がない限りは動くことがない、ましてやギルドそのものにお願いをするなら、それは尚のこと求められる得が大きくなる
しかしこれはただの防衛戦、しかも明かせる事実は私のも、敵のも含めても極わずか、そもこれで国が信じてくれたのは、それ以上に自身たちに牙を向かれたからに過ぎないのだろう、私やラナンさんを信用してくれた者など、極わずかかもしれない
「話にならないな、やはり我々は今すぐこのギルドから離れるべきだ」
青髪の冒険者は言う、周りも頷き、総意は逃走ムードだ
何か、なにかないか、この人達を止められるだけの得、協力してもらうだけの
「何を差し出せば、貴方達は手伝ってくれますか? 」
俯きながら発した声は、それでもこの人達をとどめようとした、もう無理だと思っていても
「まだ言うのか、ならそうだな」
青髪は、指で机をトントンと叩きながら、考えるような素振りをする、そして思いついたかのように目を開け
「報酬、お前が貰う報酬の4割を頂く、責任者なんだ、莫大な報酬だろう」
金か、最もだ、だがそもそも私は金のためでもなければ、このことに関して報酬の金銭が発生することを今まで考えていなかった、ならないも同じだ
「10割」
周りが静まる、聞き間違いかと言わんばかりに、目を見開くもの、困惑の声がヒソヒソと、聞こえていないはずがない
「10割、全て貴方達に回そう、それなら協力してくれるな? 」
「全てだと? 正気か?それともヤケになったか? 」
嘲るように見えるが、額の汗がある、そりゃそうだ、自身で莫大といい、その4割と言ったものが残り6割もやる、と、莫大な報酬を渡されるだけのことを、金という形になるものをなしにやるというのだ、それはもう善人ではない、狂人の類と、理解している
「敵はそもそも私たちが倒さなきゃいけないものです、金銭は私の連れも、そもそも考えていません、なら最初からないも一緒なので、あなた方に差し上げます」
周りの冒険者たちは疑念の声を上げながらも、ならやってもいいかと言った具合、金で動く冒険者が大多数なのがわかった、だが
(こいつは違うんだろうなぁ)
机の前で、眉間に皺を寄せた男はより信用ならないと言った具合で、こちらを見る、がやがて溜息をつき諦めたと言った具合に首を振り、立ってこちらへ歩み寄る
「わかった、お前は信用ならないが、お前がここを守ることだけはひとまず信じる」
そういい手を出す、意図を察して、たってその手を握る
「感謝します、これでまた守れる命が増えます」
「何言ってる、これで全員救える、誰一人死なない、少なくともこのギルドの人間はな」
「それにな、お前の真後ろにいた男がお前に借りがあってな」
この図体のでかい男が? あったことあったかな、記憶を探すがなかなか見つからない、歳? いやそんな事考えるような年齢じゃないし
「街道沿いでワイバーンが出た時、あんたが撃退してくれたおかげで助かったんだよ、あん時は近くで見てるだけだったがな」
街道沿いのワイバーン、この世界に来た時の初めての災の接触か、たしかにあの時、先を走った馬車を逃がしたが、あの時の人だったとは、なんというか運が良かった
「私は最初反対だったが、こいつが協力を頼んで仕方なくてな、それでお前を呼んだんだ」
思いもよらないところで、人の縁で助かった、胸を撫で下ろしていると、青髪の男がそれぞれに指示を出し、何人かは散っていたった
「自己紹介がまだだったな、私はアースディーという、残念だが今回は別用で今日ここを発つが、できる限りフリーの奴らをここに残って貰うよう頼んだ、力になるだろう」
そういい、アースディーと名乗った彼も帰っていく、先程まで賑やかだったギルド内は、一瞬で準備に急ぐもの達で溢れかえった
アースディー、次会ったらお礼を言わないと、そう思い、受付さんに再度協力申請書を出す
これが後でレナイト様に届くらしい、一安心と力を抜くと、受付さんが話しかけてきた
「良かったです、アースディーさんすごい方なんですけど、いかんせん頭が固いので、協力しないなんてこともありそうだなと、思ってましたので」
「そんなすごい方なんですか、冒険者全員、彼次第みたいなとこありましたけど」
「ご存知ないんですか!? たしかに知らないとあれほど対等に話すのはとも思いましたけど」
「? 全く知らないです」
「あの方は冒険者の中でもトップクラスの一人、特殊プレート、ウェイスタープレート保持者です、同時にアトラスプレートレベルとも言われてる、現在冒険者の中でも一番発言力がある方です」
そもそもプレートから分からないが、とにかく冒険者の中でも1、2を争う有名人だということはわかった
「結構若いように見えましたけど、見かけに寄らないものですね」
「いや実際若くて、25歳ですよまだ」
とんでもない人だな〜、しかしそんな彼から協力の一言を取れたのは大きい、最も自分のことはまだ信用出来ないと言われてしまったが
書類を出して外に出る、もう日が落ちかける中、やけに疲れた足取りで帰路へ着く、ひとまずできる対策はしてある、あとはそれらが上手く機能すれば本当に死者ゼロ人に抑えられるかもしれない
「守れたものは多い方がいい、理想論はないと後に着いてくる現実がより悲惨になる、か」
昔父が言った言葉だ、現実主義者だと思ってた父が言った時、意外だと思って以来、何故かこれは自分の心情にもなりつつあった
最初こそルーシア様がならず者の多いところだと言っていたが、協力が決まった瞬間、準備に忙しなくしはじめたり、恩があるから返そうと必死に繋ぎ止めるものがいたり、律儀な人達だった
ひとまず期待に応えないと、あとでギルド内で悪評が広まって、動きずらくなっても困る、必ず守りきらないとだな
協力申請だけだと言うのに、気が引き締まる時間だった
着々と、国の準備は整いつつある、響くギルドたちの声、帰路にある騎士団から響く木刀同士のぶつかる音、明日ねと普通の会話を続ける国民達の声を聞いてそう実感した




