891【スクライス】
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今話は、少し短めです。
三十分ほど待っただろうか。
ひとりの男性冒険者が入ってきた。ダークエルフだった。ガーネス・ブレイズファングではない。別のダークエルフだ。
彼はカウンターへと向かい、受付嬢と話し、受付嬢がこちらを指した。
彼がこちらへと来る。
「失礼だが、C級冒険者パーティー《竜の逆鱗》か?」
「はい」と三人。
「B級冒険者パーティー《高き青空》のリーダー、スクライスだ。で、そちらは?」とオレを見る。
「B級冒険者のサブと言います。よろしく」
「よろしく。で?」
「この三人は、うちのパーティーの者なんだが、うちのパーティーから独立したがってね。でも、あんまり自由にさせるのも心配なんで、それで分隊として仮登録をしに来たんだ。親バカだろう?」と苦笑いする。
「なるほど。つまり、あなたは、パーティーリーダー?」
「そう。この三人の実力は保証する。前衛ふたりと後衛ひとりだ」
「抜けるのは、痛いんじゃないか?」
「正直言えば。だが、十人中の三人だ。魔獣討伐はものによるが、できないわけじゃない」
「珍しいな。そんなに大所帯で」
「今回は王都への観光目的だったからね。それに、今度、クランの立ち上げを計画してる」
「なるほど。ほかのパーティーがいくつかいるが――」
続けようとするスクライスを手で制する。
「あぁ、細かいことは、三人と話して欲しい。これも独立に向けての訓練だ」
「わかった」
スクライスと三人は、オレから少し離れたところで、詳細説明と質疑応答をする。
説明が終わったところで、スクライスがこちらに来た。
「サブ、ちょっといいか?」
「三人のこと?」
「いや。サブのことだ。もしかして、先日のグリフォン討伐に参加したか?」
「ああ。アーチャーとしてね」
「そうか。サブの指示で手早く討伐できたと聞いた」
「みんなが役割を全うしてくれたからだよ」
「だが、知り合いは、“指示がなかったら、動けなかった”と言っていた」
「まぁ、指示出しは慣れてるからね」
「そのようだな。だが、とあるパーティーがそれで、こちらの依頼をキャンセルしてきた」
「あれ? 食中毒じゃ?」
「それは外聞を考えての言い訳だ」と苦笑。
「ああ。実際は?」
「グリフォン討伐で、指示がなかったら動けなかったと。それとあとから恐怖に襲われたんだと」
「あぁ、思い返しちゃったのか」
「そのようだな」
「それで大丈夫なのか? 彼らの今後の活動は。支障はないのか?」
「一時的なものだ。グリフォンさえ相手にしなければ、ふつうの討伐依頼はこなせるだろう」
「よく知ったヤツラなのか?」
「ああ。長年一緒にやってきたからな」
「なら心配ないな」
「ん?」
「いや、突然、食中毒で依頼をキャンセルしたと聞いて、疑ったんだよ。そいつらの仲間が襲撃するんじゃないかとさ」
スクライスが目をパチクリさせた。それから大笑いをしだす。
「いやいや、それはない」と目に溜まった涙を拭うスクライス。「だいたい、荷は盗んだところで、換金しにくい金属だ。しかも出どころも刻印されていて、出回れば盗品とわかる品だ。鋳潰すこともできるが、特別な設備が必要だから、ふつうの盗賊にはまず無理だ。狙ったとしたら、その盗賊は死を覚悟するしかない。なぜなら、オレたちは躊躇しないからだ」
その目が妖しく光る。言葉のとおりなのだろう。怖い怖い。
「三人もそのつもりでいて欲しい」
重々しくうなずく三人。
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