872【ニホン人】
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今話は、少し短めです。
夕食の調理は、ほぼ全員参加になった。
オレだけ、ミサトさんに呼ばれたので、その中には入っていない。
「みんな、よろこんでたよ」
今日の買い物についてだな。
「よかった」
「町に行っても、買いたいものがどこにあるのか、わからないからねぇ。これまで我慢してたんだよ、みんな」
「でしょうね。特に言葉の壁があって、そこまでの気持ちにはなれないんでしょう」
「あぁ、そうだね。勢いつければ、とは思うけどねぇ」
「それに村の中だけで、なんとかなるんでしょ?」
「まぁねぇ。それも町に行かなくてもいい理由なんだよねぇ」
困ったもんだ、という顔をするミサトさん。
***
夕食は、みんなのそれぞれの要望が混ざった和洋折衷な料理が並んだ。もちろん、コロッケもある。
戸惑っているのは、ミサトさんだ。
「なんだい、これは」
「すみません」とキヨミ。「みんなが欲しい料理を出したので。わけわからないですよね、ミサトさんには」
「まぁねぇ。でも美味しいんだろう?」
「マズいものはない、かな」と苦笑するキヨミ。
「それは好みによるって感じだね。気にせず食べな。こっちは適当に摘んでみるから」
***
「どれもこれも美味しかったけど、珍妙だったねぇ」とお茶を啜りながら言うミサトさん。
それに対して、オレたちは苦笑い。
今は、食事を終えてのお茶休憩。
「こんなのが、ふつうに食べられているのかい。信じられないねぇ」
「いや」とオレが訂正する。「ここに並んだ料理の多くは、オレたちだけのものです。お貴族様でも知らない調理法もありますし」
「なんだって? お貴族様も知らない?」
「ええ。だって、ほら、私はニホン人ですから」
ミサトさんには、初めて会ったときに、オレが日本人だと変装の魔導具を切って見せている。“握り飯”を“おむすび”と呼んだことで疑問を持たれたのだ。“おむすび”と呼ぶのは、ニホン人だけだと。ニホン人ならば、黒目黒髪という特徴を持っているはずだと言われ、変装の魔導具を切ったのだ。
一瞬キョトンとしたミサトさん。だが、すぐに思い出したようだ。
「あぁ、そうだったそうだった。黒目黒髪じゃないから、つい忘れちまうよ。そうかい、今日の料理はニホン国の料理だったのかい」
「そうです」
「なるほど。ならお貴族様でも知らないねぇ」と笑む。
もともとミサトさんは、ニホン人やニホン国のことをそれなりに知っていた。どうしてなのかは聞いていないが、おそらくアズマノ国の教育を受けた者であれば、誰もが教えられてきたのだろう。
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