866【領主様との話・その一】
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今話は、ふつうの長さです。
「いや、失礼した」とシュナイダー領主様。「呼び寄せはしたが、まさかサブ殿と一緒とは思わなくてな」
そう言いながらも、娘を離そうとしない領主様。
それを恥ずかしそうに受け入れているお嬢様。
「我々も偶然に出会ったのです。まさか、閣下のお嬢様とは思いませんでした」
「閣下はやめてくれ」と笑う。
「では、ご領主様と?」
「それもやめて欲しい。まるで他人のようではないか」
「あはは。では、シュナイダー殿というのは?」
「そうしてもらえると助かる」彼はお嬢様のお付きの面々を見る。「おまえたちも、ご苦労であったな。よくぞ、ネイレリアを無事に連れてきてくれた」
面々は、褒められて笑む。
***
そのあと、主要メンバーのみになってのお話となった。
オレ以外のパーティーメンバーは、先にアキタ村に向かってもらうことにした。パーティーの中で、領主様と側近のマーカスと面識があるのはオレだけだから。泊まるようなら、ウーちゃんに念話すると約束して。
貴族家からは、お嬢様はもちろん、侍女とジャックス殿だ。
ちなみに、まわりを固めてた兵士たちは、侵攻軍の騎士たちだった。道理で警戒心や威圧感がないはずだ。いるとは思っていなかったから、誰もわからなかったが、よくよく見ると知った顔ばかりだった。
執務室に落ち着くと、さっそく領主様が口を開いた。
「しかし、サブ殿は顔が広いな。まさか、ここでの部下がサブ殿と面識があったとは。しかもマーカスによると、アキタ村との通商を仲介されたとか」
「ええ。アキタ村には、毎年いろんなものを買い付けに行くんですよ。主に食事の材料なんですけどね」
「それほどに美味いと?」
「我々の口に合っていた、というのが正しいでしょうね」
「いや、サブ殿」とマーカス。「あれは美味い。城下にも店ができてな。順調に客数が増えているぞ」
「繁盛しているんですか。受け入れるのは大変だったのでは?」
「最初はな。だが、オレや部下たちがかようものだから、興味本位で食べるヤツがいてな。それで少しずつ受け入れられている」
「なるほど。ありがとうございます」
「なぁに、本当に美味いのだから、当然の結果だろう」
「ならば」と領主様。「あとで訪れるとしよう」
領主様の言葉に、うなずくマーカス。
「話は変わるが、ネイレリアたちとは?」
それを待っていたかのように、口を挟むお嬢様。
「お父様、そのお話の前に」
お嬢様が侍女に目配せすると、侍女は懐から革袋を取り出し、そこから四枚の金貨をオレの前に置いた。
「サブ様、護衛任務、ありがとうございました」
「残り四枚、確かに受け取ります」
オレは、金貨四枚を懐にしまう。
「なるほど、護衛であったか。しかし、ジャックス以下騎士が付いていたはずだが」
「そこは私から」とジャックス殿。「我々は三十人ほどの盗賊団に襲われ、うまく対応できずにいたところをサブ殿のパーティーに救われたのです」
「盗賊団! なるほど。多勢に無勢だったか」
「はい。そこを救われたのです。その後、こちらの事情を話し、護衛任務を依頼いたしました」
「ふむ。だが、その盗賊団が出なければ、無事にここへと来れたのではないか」
「実は、我々は旅慣れておらず、途中から路銀が足りなくなるなどが発生し、お嬢様にもご負担を強いてしまいました」
「そう言えば、そうであったな」
「はい。そのことをサブ殿に打ち明け、お嬢様から持ち物を売ることを提案されました」
「持ち物? まさか、あのティアラを――」
「そのつもりでしたの」とお嬢様。「ですが、サブ様に止められました」
「あれは」とオレ。「さすがに市場には出せませんでした。そこでお嬢様のドレスをいくつかとカトラリーをいくつか売りに出しました」
「もう古いものでしたし、数が欠けたものでもありましたもの」
「そうか。ドレスやカトラリーは買えるが、あのティアラは代々のもの。買い戻せるかも怪しいからな」
「ええ」
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