865【チタラ城の新たな領主】
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今話は、少し短めです。
翌日。
お昼をまわったところで、チタラ城下の町門を潜る。
門衛のひとりに、チタラ城領主のマーカスのことを聞く。
「団長のお知り合いですか?」と門衛。
「去年、世話になったんだ。顔見せがてら、ご挨拶しようと思ってね」
そう答えると、彼は笑顔になった。
「マーカス団長は、今は領主様の側近ですよ」
「そういえば、“領主の代行だ”みたいな話をしていたな。なら、城に行けば、会える?」
「側近の仕事次第じゃないかな」とアゴをさする。
「まぁ、いいや。とにかく行ってみるよ。ありがとう」
***
「というわけで、来たんだが」
「何が、というわけで、だよ」とダルトンに突っ込まれるオレ。
ここは、チタラ城の謁見の間。そこにオレたちと貴族家の全員が入っていて、まわりを多くの兵士が囲んでいた。
兵士たちに警戒心や威圧感がないのが、気に掛かる。
オレたちは、城門で要件を門衛に伝えてもらったところ、戻ってきた門衛が首を傾げながらも案内してくれたのが、謁見の間だった。
謁見の間とはいっても、王城のそれとは違い、舞踏会もできる大広間に近い場所だ。せいぜい、領主の座るイスがあるくらいだろう。
しばらくして、後方の扉が開き、誰かが入ってきた。囲んでいた兵士たちが、そちらに向き、片膝をつき、頭を垂れる。
オレたちは、振り返りそうになるのを我慢して、その場で頭を垂れる。
足音がふたつ、貴族家の側ではなく、オレたち側へと来た。
「サブ殿!」と声を掛けられた。「久しいな!」
聞き覚えがあって、思わずそちらを見てしまう。
そこには、立派な貴族風の男性が立っていた。その横には前領主で現在の領主の側近であるマーカス・アイアンハートの姿も。
「シュナイダー団長?」
「覚えててくださったか!」と喜色満面の男性。
誰かといえば、ゴウヨーク国へと侵攻してきた騎士団の団長のひとりだった。
「お元気そうで」と懐かしくなり、そう声を掛けた。
「うむ。こうして、故郷の土地を踏めて、今ではここの領主だ」
「それは、おめでとうございます」
「渋々な。故郷の土を踏みたい騎士たちを引き連れての仕事だ」とまわりを見るシュナイダー団長、じゃなくて領主様。
「マーカスのところに客と聞き、その名を聞かされ、窓から門を見ると、サブ殿とその愛馬だったというわけだ。本当は執務室へと思ったのだが、今回は人数がおるとのことで、こちらに参ってもらったわけだ」
「なるほど」
話が途切れたところに、後ろから小さな声が聞こえた。
「お父様?」
領主様とオレがそちらを見ると、お嬢様が唖然としていた。
「ネイレリア!」
思わぬ再会に、オレを押しのけるように、お嬢様に駆け寄り、ガシッと抱き寄せる領主様。
ここで初めてオレは、お嬢様の苗字がシュナイダーだったことを思い出し、シュナイダー団長と結び付いた。親子だったのだと。
いや、名前の発音と契約書のサインとが一緒のイメージにならなかったんだよね。おふたりの顔の特徴も全然違うしさ。
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