864【チタラ城下まであと少し】
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今話は、少し長めです。
そこからオレたちだけの旅が続き、魔獣の襲撃は何度もあったものの、なんなく討伐し、目的地であるチタラ城のある町へとたどり着いた。
もちろん、まだその手前の馬車留めでの野営だ。
出発前と似たような状況を作り出し、馬車を出し、馬を出し、それから貴族家の全員を出した。
十秒以内に、ウーちゃんが収納したので、すぐに目を開くだろう。
ジャックス殿が口を開いた。
「もう開いてもいいだろうか」
「ええ、どうぞ」
まぶたを開く面々。
オレたちやまわりを見て、違和感を覚えていない感じだ。
「それで」とオレに問うジャックス殿。
「みなさん、ピンときていないでしょうが、実は眠ってもらっていました」
「はい?」
「現在の場所は、明日にはチタラ城に到着できる馬車留めです」
「待て待て! なんの冗談か!」
「冗談ではございません。みなさまを安全かつ早期にお連れするのが我らの務め。なお、方法については、我らパーティーの秘密となっておりますので、話せません。ご容赦のほどを」
ジャックス殿以下全員が、口をパクパクさせている。
そんな彼らを放っといて、オレたちはテキパキと野営の支度をはじめる。
そんなオレたちを見て、ジャックス殿が声を張り上げた。
「まずは、テントを設営しろ!」
ビクッとする面々。
動き出した。
***
夕食後、貴族家のテントに行く。やはり、説明は必要だからな。
テント前にいる騎士がオレに気付き、中へと声を掛ける。
ジャックス殿の声で、中にとおされた。
「お邪魔いたします」
「サブ殿」とジャックス殿。「説明してもらえぬか」
「そのつもりで参りました」
折りたたみのイスを勧められるので、座る。
お嬢様の正面だ。
「まず、現状はさきほどお話したとおり、もうすぐチタラ城の町に入る手前の馬車留めです」
「冗談、ではないのだな」とお嬢様。
「はい。護衛のご契約をいただいた時点で、我々の旅は遅れておりました。その状態で、ふつうの護衛任務は難しく、さりとてみなさまと別れても、あとあと気になるだろうと思っておりました」
「そうであったか」
「はい。護衛のお話をいただけたことで、こちらも思い切った行動に出ることができました」
「それが今回の?」
「はい。いかにしてかはお話できません。ご了承ください」
「わかっておる。それで、あれから時間が経っておらぬように感じるのだが」
「みなさまに心理的な衝撃を与えぬために、同じ時間帯を選びました。時間的には、あれから数日が経過しております」
「数日」
「はい。おそらく、みなさまだけの旅では、ひと月は掛かったのではないかと」
「それが数日。にわかには信じられません」
「そうでしょう。しかし、護衛任務は完璧に行なえました。また、そちらの損耗もまったくございません。それとも何かございましたか?」とジャックス殿に問う。
「損耗はない」
「それを聞いて、安心いたしました。ほかに聞きたいことはございますか?」
ふたりを見る。
「方法については聞きたいが」とお嬢様。「おそらく聞いても答えてはもらえまい」
「はい」
「では」とジャックス殿。「明日のことを話そう。チタラ城下の町へは?」
「ここはその手前の馬車留めです。町に入れるのは、早ければお昼手前、遅くとも夕方には。そのまま、チタラ城へとご案内いたします。城で問い合わせれば、どちらへ行けばいいのかわかるはずです。また、城内で部屋を借りられるかと思います。なくても宿屋を紹介いただけることでしょう」
「なるほど。そこまで言えるということは、よく知る土地なのか」
「町には、買い物に行った程度です。その際に、その町を治めていた領主代行の方と知り合いました」
「領主代行?」
「はい。あそこはダイナーク国からゴウヨーク国へと移譲されたのだと伺いました。そのため、前領主はいなくなり、そのお方が一時的に治めることに」
「そういうことか」
「で、我々は城下にあるひとつの村に年に一度、物品の買い取りに行くことになっており、その物品がもう準備できているはずなのです。食料なので、遅れるわけにいかなかったのです」
「そういう事情か」とお嬢様。納得してくれたようだ。
「はい。ですので、我々はチタラ城へとあなた方を送ったあと、そちらの村へと参りますので、そこでお別れとなります」
「では、その後は」
「我々は、その村にしばらく滞在したあと、自分たちの屋敷のある町へと移動します」
「屋敷?」
「はい。冬を越すために購入しました。春までは、その町で雪掻きをして過ごします」
「雪掻き。大変でしょうね」
「はい。ですが、町にとっては死活問題なので、やらないわけにもいきません」
「わかりました」そう言って、ジャックス殿を見るお嬢様。
ジャックス殿もそれにうなずき、オレに礼を言う。
それでテントを辞した。
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