863【契約の交渉】
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今話は、ふつうの長さです。
広場に戻ると、買い出しに行っているはずのみんながいた。
テント前で、ジャックス殿と分かれる。
「買い出しは?」
「そんなになかった」とダルトンが答えた。「冒険者ギルドにも寄ってきたけどさ。なぁんもなかったよ」
「そうか。こっちは商談成立したよ。商業ギルドだけで済んでよかった」
「売れたんだ」
「ドレスとカトラリーだけどな」
「宝飾品じゃなく?」
「そ。宝飾品だと、どこの貴族家か特定されそうだったからさ」
「なるほどねぇ」
自分でお茶を淹れて飲む。誰かに言えば、淹れてくれるけど、なんかそんな雰囲気でもないので、頼まない。別に変な雰囲気じゃなくて、たまたまそんな感じ。
しばらくお茶を飲んでいると、貴族家のテントから、ジャックス殿がこちらに来た。
「サブ殿」
「どうしました?」
「護衛依頼を受けてはもらえぬか」
「どうしたんです?」
「旅慣れた者と一緒の方が、苦労は少なかろう、とお嬢様が」
「ああ。いいですよ」
「おい!」と間髪入れずにダルトンが止める。
彼の耳元に小声でゴニョゴニョ言う。
それで引っ込むダルトン。
「報酬はいくらになるか」
「相場では、まぁ、金貨十枚というところですが、八枚でどうでしょう? ただし、オレたちのやり方に文句は言わないでもらいたいです」
「わかった。そこは任せる。食事も付けてもらえるか」
「いいでしょう」
依頼書を作成し、ご令嬢の署名をいただき、先に半額を受け取り、依頼達成でもう半額をもらうことになった。
本来ならば、こうした冒険者ギルドを介さない依頼は、契約不履行であとあと問題になるのだが、彼らなら大丈夫だろう。
出発する前に昼食を摂り、軽くお茶休憩。それからテントを畳み、出発する。
門を出て、街道へ。
そこでエイジが口を開いた。
「サブさん、なぜ護衛依頼を受けたんです?」
みんなも聞きたがって、オレを見る。
「まぁ、単にほっとけないってところだな。だが、彼らにとっては、とても費用対効果のある護衛だよな、オレたち」とほくそ笑むオレ。
オレの説明に、彼らは首を傾げる。
クククと笑うダルトン。
「ほぉんと、そうだよなぁ。護衛も完璧だし、早く到着できる。途中の出費も心配なくなるんだからさ」
「なんか」とハルキ。「ふたりだけわかってて、ズルいっすよ」
そこで計画を話して聞かせた。
***
陽が沈む前に到着した馬車留め。
貴族家の面々が、テントを張ろうとするのを止めた。
ジャックス殿がこちらに来る。
「なぜだ」
「全員を集めてください。侍女さんもお嬢様も」
「お嬢様まで?」
「こちらの指示に従ってください」
「むっ、わかった」
彼が全員に指示し、最後に侍女さんとお嬢様を連れてきた。
こちらも全員が配置に着いた。
「では、目をつぶってください。そして、十、数えてください。そのあいだに準備をしますので」
「何をするのか、教えてもらえぬのか」とジャックス殿。
面々は、不安げな表情をしている。
「十、数えたら、開けて結構です。さぁ、つぶってください」
ジャックス殿が全員に指示する。
全員がまぶたを閉じたのを確認して、うなずく。
すると、ひとり、またひとりと、面々が消えていく。
最後のひとりも消えた。
「あとは、馬じゃな」とウーちゃん。
「よろしくぅ」
ほい、ほいと馬を消すウーちゃん。
で、馬がいなくなった馬車をオレが消す。
「よし。これでオレたちだけの野営になるぞ。準備を頼む!」
おう、と答える仲間たち。さっそくそれぞれの仕事をしはじめた。
何をしたかといえば、ウーちゃんの空間魔法に人間と馬を収納してもらったのだ。
馬車はオレ担当。
そうなれば、あとはオレたちのいつもの旅になるわけだ。
目的地に到着したら、彼らを出す。
完璧な護衛だ。
旅の日数も短縮できるし。
オレたちはオレたちで、自分たちのペースで旅ができる。
ストレスのない旅、万歳!
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