862【値段交渉】
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今話は、少し短めです。
騎士殿、改め、ジャックス殿とこの町の商業ギルドに赴く。ちなみにオレは装いを冒険者姿から多少は上等な服装に変えた。
時と場合により、見た目を変えるのは、大事だ。入社面接にスウェット姿で臨む者はいないだろう。極端な話だけど。
商業ギルドに入ると、すぐに待機していたスタッフが声を掛けてくる。
とある貴族家のものを売りたいので、相談に乗って欲しい旨を伝える。
スタッフがオレたちふたりをカウンターの受付嬢のところへと案内する。
それからオレが伝えたことを受付嬢にも共有してくれる。
受付嬢は、席を離れると、オレたちふたりを会議室へと案内してくれた。
「私はナンシーと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「私は鉄級のサブと申します。こちらは騎士爵のジャックス様でございます」
「よろしく頼む」
「こちらこそ」
互いに席に着く。
「とある貴族家のものをお売りになりたいと?」
「はい。名は申せませんが、それなりの家格のお方になります。今回は、ドレスとカトラリーを売りに出したいとのことです。どちらも品質は良いかと思います。こちらで、それなりの値が付けばありがたいのですが、希望額以下だった場合は購入していただけそうな方をご紹介してもらえたらと考えております」
「ご希望はわかりました。ものをお見せいただけますでしょうか?」
そうして、マジックバッグから、ドレスとカトラリーを出して、テーブルに置く。
彼女はカトラリーをひとつひとつ“鑑定”と小さく言って、鑑定していく。鑑定スキル持ちなのだな。
カトラリーすべてを見終わったところで、彼女は口を開いた。
「とても状態がよろしいものですね。装飾は控えめで上品です。こちらでの買取額は、金貨二枚、いえ三枚になります。詳細をお聞きに?」
「わかりました。ドレスをお願いいたします」
うなずく彼女。すぐにドレスのひとつを手にする。また“鑑定”と呟く。
それを三度繰り返す彼女。
鑑定を終えると、彼女はひとつ息をつく。そうして、オレを見た。
「どちらも丁寧に手入れがされております。目立った傷みはありません。生地もとても良いものです。それぞれ金貨二枚、二枚、三枚となります。カトラリーと合わせて、金貨十枚となります。いかがでございますか?」
「ドレスの価値の基準は?」
「最後の一枚は傷みが少なかった、そういうことです」
「それでもそんなに傷んではないのでは?」
彼女は少し悩んでから、口を開いた。
「では、金貨一枚を追加いたしましょう。それ以上は追加することができません」
「少し待ってください」
オレはジャックス殿に顔を近付け、小声で言葉を交わす。
「ここが落としどころかと」
「商人のところには?」
「手間を考えると、なんとも。一応、話を振ってみます」
彼がうなずく。
「買取額に少しだけ不満があります。もし、商人をご紹介していただけるとしたら、どうでしょうか?」
「はい。その場合は、おそらくドレスの買い取りはしていただけないかと。理由はお嬢様がおられませんので」
「あぁ、なるほど。それでは食指も伸びませんね」
「はい」
「わかりました。それで手を打ちましょう」
「ありがとうございます」
交渉がまとまり、金貨十一枚を受け取った。もちろん、金貨はジャックス殿に手渡した。
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