861【お嬢様の宝飾品】
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今話は、少し短めです。
朝食を済ませ、お茶休憩になると、騎士殿に呼ばれた。
そばに近付く。
「お嬢様がお呼びだ。宝飾品について」
騎士殿とともにテントに入る。
昨日と同じ配置。だが、みな、顔色がいい。ぐっすりと眠れたのだろう。
ご令嬢の前にひざまずく。
「おはようございます、お嬢様」
「うむ。それでだ。金子を用立てに、こちらのものを頼みたいのだ」
侍女が金属トレイをオレの前に見せる。
トレイには布がかぶせられ、その上に宝飾品が載せられていた。繊細な細工が施された銀製のティアラだった。宝石がいくつか飾られている。
すぐさま鑑定する。むっ!
「失礼ながら、こちらはお家に代々伝わる宝物ではございませんか?」
ご令嬢が悲しい顔をする。
「よくわかったな。そのとおり、我が家に伝わる宝物である」
「やはり。実を申しますと、わたくし、鑑定スキルを持っており、それでわかりました」
「そうであったか」
「はい。それで、これを売ってしまったら、手元には戻りません」
「わかっておる」
「それとですが、おそらく売れたとしても二束三文、つまり安く買い叩かれてしまうことでしょう」
それに驚いて身を乗り出すご令嬢。
「なぜ!」
「こんな町では、こうしたものを売りさばくことが難しいとかなんとか言われるのがオチかと。商人は、安く買って高く売るのが常識です。これだけのものであれば、王都に持っていき、オークションに掛けて、高額になるのを期待するはずです。となると、これを持っての旅程を組み、護衛を雇い入れ、王都へと向かうかと。つまり、輸送にお金が掛かりますから、王都に着いた時点でそれなりの値段になります。オークションでそれ以上の値にならねばなりません。ならば、最初に買い叩けば、王都に持っていけます」
「そうなのか?」と不安げに侍女や騎士殿を見るご令嬢。
騎士殿がオレに問う。
「そうならぬ方法はないのか」
「まず、このティアラはそのままお持ちなさいませ」
そう言うと、うなずくご令嬢。侍女を下がらせる。
「何か布地や古いドレスなどはございませんか? あるいは数の足らないカトラリーなどは?」
侍女が、すぐにご令嬢の耳に伝える。
「どちらもございます。多少、汚れているそうですけれど」
それをお見せいただく。ドレス三点とカトラリーはバラバラではあるが、十一点。
ドレスの汚れやカトラリーのくすみは、クリアを掛けてから、鑑定してみる。
「上等なドレスとカトラリーですね。こちらの方がいい値がつくかと思われます」
「理由を聞いても?」
「はい。カトラリーは、裕福な商人が自宅に欲しがります。娘がいれば、上等なドレスを着せたいと思います。しかし、たいていは王都に行かねば買えません。それだけ手間が掛かります。さきほどと同じですね。そこにポンッと欲しいものが出てきたら、迷わず購入するかと」
「なるほど」と納得。
「それにこちらの方が大事なのですが、宝飾品では出自が悟られやすいということがございます」
小首を傾げるご令嬢。
「どちらの貴族家の宝物か、簡単に調べがつく、ということです。あそこの貴族家は貧しいのか、と勘繰られたりします」
それに慌てるご令嬢。
「ご心配なく。そのためにも、宝飾品は避けたのです」
ホッとするご令嬢や侍女。
「カトラリーはバラバラではありますが、単品でも買う方はおります」
「お任せしますわ。ジャックス、ご一緒しなさい」
「かしこまりました、お嬢様」と騎士殿が一礼する。
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