860【騎士たちの汚れ】
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今話は、少し短めです。
夕食後のお茶休憩。
「それで、どうするのさ」とダルトン。
「あぁ、それな。知り合いのお嬢様だったわ」
「へっ?」
「エルゲン国の侵略軍がゴウヨーク国に入ってきただろ。あのご令嬢は、その騎士団の団長のひとり、その娘だった」
「ありゃ」
「で、旅の経験がなくて、甘い見積もりで旅に出てしまったらしい」
「思わぬ出費で、お金がなくなったのか」
「食費はあるが、宿代は難しいみたいだな」
「なるほどねぇ。で?」
「一応、手助けくらいはするよ的な話はした。とりあえず、質草があるみたいだから、明日はそれを売りに行く予定」
「質草?」
「お嬢様の宝飾品だって」
「こんな町で、買い取ってもらえるかなぁ」
「商業ギルドに行ってみるさ。あそこなら、それなりになるはずだからな」
「まぁ、いいけど。じゃぁ、こっちは補給を目的に、買い物することにする?」
「頼む」
「了解」
みんなを見る。
「悪いが、今夜は不寝番を頼む。騎士たちが交代で風呂に入るはずだ。困っていたら、手を貸して欲しい」
わかりました、と答えるみんな。
「ありがとう。ほかの冒険者たちが絡んでくることはないと思うが、気を付けて。近付いてきたら、やんわり遠ざけて欲しい」
全員の了解を得て、不寝番の順番を決める。
***
翌朝。
目が覚め、顔を洗う。
珍しいことに、ウーちゃんが起きて動いていた。
「おはよう、ウーちゃん。どうしたの?」
「おお、サブか。おはようなのじゃ。なに、風呂の掃除をな」
「おお、さすがだね」
「やはり、男衆が入るとな」
汚れが気になるんだね。
「頼むよ」
「うむ」
貴族家のテントを見ると、まわりを守る騎士たちの姿が目に入る。みな、表情が明るい。やはり、風呂に入り、垢を落としたのが幸いしたのだろうな。
気になる点がひとつあるのだが。
オレは、ひとりの騎士に近付く。
こちらに気付き、警戒心を緩めて、笑みを向けてくれる。
「おはよう。服は着替えなかったの?」
そう言われて、固くなる表情。
「失礼するよ」と彼の肩に手を置く。「クリア」
クリアの魔法で、防具や服が一気にきれいになる。
「お? おお!」
そうして、次々と騎士たちをクリアしていく。
着替えがないわけではないらしいが、おそらく着替えを洗えずに来たのだろう。
外のようすを確認するために、騎士殿がテントから顔を見せた。
「何かあったか」と部下に問うている。
部下が説明すると、騎士殿はテントの外に出てきた。こちらを見る。
「おはよう、サブ殿」
「おはようございます。あなたもですね」と近付き、肩に手を置き、クリアする。
「魔法か」
「ええ。生活魔法と呼ばれるものです。魔力さえあれば、誰でも使える類いのものです」
「生活魔法、初めて聞く」
「貴族の屋敷では、それほど必要はないかと。冒険者でも一部の者しか使いませんし」
「なるほど」
「顔を洗うお水は、ございますか?」
「い、いや。まさか、それも魔法で」
「いえいえ。こちらをどうぞ。水袋ですが、マジックバッグの仕組みを組み込んでありますので、かなりの量が出ます。あとで、お返しいただければ、構いませんので」と水袋を渡す。「入っている水は、濾過と煮沸消毒を行なった清潔な水です。そのまま飲めますよ」
「助かる」と受け取ってくれる。
「では、のちほど、朝食を持ってきます」
オレは、すぐに自分たちのテントへと戻った。
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