858【変わった貴族家】
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今話は、ふつうの長さです。
町に到着したのは、それからおよそ二時間後。
門衛には先にエイジを行かせて、説明してもらった。
貴族家の馬車はほぼスルー。こちらは全員のギルドカードを提示し、それから盗賊団の受け渡しが行なわれた。
盗賊団討伐には、さきほどの騎士に証言してもらった。
討伐報酬は、オレの口座に振り込んでもらうことで手続きを終えた。
そこで貴族家の馬車とはお別れになるかと思っていたのだが、違った。
なんと、騎士は門衛に広場の場所を聞いていたのだ。
オレも広場の場所は聞こうと思っていたので、そばで聞いていたのだが。
門衛も目をパチクリさせていたが、きちんと答えた。
門衛から離れたところで、騎士に尋ねた。
「失礼ですが、何かご事情でも?」
騎士殿は、苦虫を噛み潰すような顔をする。
「察して欲しい」
そういえば、ここまで近付いていなかったので気付かなかったが、彼から独特のニオイ。汗臭さも含めたニオイだった。
「わかりました。もしよろしければ、護衛という形で、我々をおそばにおいてください。依頼料の請求はいたしません。広場は貴族家が泊まるところではございません。単独での宿泊は、お家の沽券にも関わるかと」
彼がオレを怪訝な表情で見る。
「なぜか」
これはいろんな疑問を含んでいるな。
「我々はお金に困ってはおりません。それに貴族家との付き合いもございます。あっ、ゴウヨーク国ではございますが」
「ゴウヨーク国の者か」
「はい。ですから、状況判断もできます」
「ならば、わかっていての申し出か」
「はい」
すると、深いため息をつく騎士殿。
「よろしく頼む」と小さく言った。
「かしこまりました。詳しい話は広場にて。遮音結界を張りますので、それで」
“遮音結界”という言葉で、彼はギョッと驚いたが、それからうなずいて小声でこう言った。
「あいわかった」
そこから彼は口を開くことはなかった。
オレは、仲間たちに説明し、広場に宿泊することにした。
***
お互いのテントの設営が済むと、騎士殿に呼ばれた。
オレはダルトンに、指示を引き継ぎ、騎士殿のもとに。
「お嬢様をご紹介する」
オレはうなずき、テントの中へと足を進める。
そこには、別の騎士がひとりと、侍女がひとり、中央のイスに座るひとりのご令嬢。ほかの騎士たちはテントのまわりの護衛任務だ。
ご令嬢は若く、おそらく十代後半。旅の疲れとともに、服装の汚れがうっすらと見てとれる。
オレは、ご令嬢の前にひざまずき、頭を垂れる。
「お初にお目に掛かります。わたくしはC級冒険者パーティーのリーダーをしております、サブと申します」
「此度の助力、ご苦労であった」
「ありがたきお言葉、いたみいります」
「面を上げよ」
言われたとおりに顔を上げる。
「気を遣わせてしまったようで、すまぬな、サブよ」
「いえ。あの、失礼でなければ、話はそちらの方からでも。どうやらかなりお疲れのごようす。無理にわたくしに付き合わずとも」
「そうもいかぬ。これでも子女とはいえ、貴族である」
「失礼いたしました。では、話をする前に、ご休憩をされてはいかがでございますか? 狭いですがお風呂もご用意できますし。夕食も贅沢はできませんが、提供できますので」
ご令嬢は、騎士殿を見た。
一拍置いて、騎士殿がオレに問う。
「そこまでされる理由は」
「実は我々もお風呂に入る習慣がございます。すでに用意もしており、ひとりふたり増えたところで、気にしません。夕食に関しても同じです」
「だが、設備は」
「マジックバッグに入れて、持ち歩いております」
「なんと」
「広くはございませんが、侍女とおふたりであれば、それほど狭くはないかと」
「しかし」
「一度、ご覧になられますか? 侍女の方であれば、判断できるかと」
騎士殿はご令嬢と目を合わせ、待つ。
すぐに侍女がうなずいた。
騎士殿もそれにうなずき、言った。
「では、頼む」
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