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異世界に勇者召喚されたけど、冒険者はじめました  作者: カーブミラー


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855/864

855【焦り】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。


今話は、ふつうの長さです。

 それからのふたりの闘い方は、魔導具も使うようになった。もともと使う機会はあったのだが、それほどの多用はしていなかった。


 ふたりだけの闘いは、ポーションによる回復ができないこともあり、連戦により疲れが蓄積していく。次第に動きにも素早さがなくなってきていた。冷静さも欠いていく。


 ***


 三日も保たずに、ふたりは敗北宣言した。最後の闘いは、ふたりともケガを負っていた。

「わかった。まずは、マナミ、頼む」

「はい」

 マナミが治癒魔法を使って、傷口を癒す。

 それから魔力回復ポーションと体力回復ポーションを飲ませた。体力だけではなく、魔法もかなり使ったので、魔力が限界だった。

「落ち着いたか?」

「はい」とふたりともが返事した。

「連戦連勝は凄いが、ケガしてまで闘う価値があるのか?」

 ふたりは下を向いて黙ったままだ。

「ここからは、闘いに参加するな。しばらく考えろ。みんなもそういうことだから、よろしくな」

 うなずくみんな。


 ***


 その後も魔獣は襲ってきたが、遠方からのコンパウンドボウによる攻撃により、次々に討伐していった。

 倒した魔獣もバキューム。矢もバキューム。もちろん、キズを負っただけの魔獣は、矢以外は放っておく。

 街道を閉鎖させずに済むからだ。


 オーガの狩人と思われる集団が現れたが、コンパウンドボウでの攻撃を仕掛けたところ、致命傷にはならなかったが、すぐに撤退していった。

 索敵さんで調べてみると、集落といえるほどの個体数ではなく、またメスや子どもで構成されていた。

 おそらく、自分たちが倒れたら、彼らにエサを運べなくなると判断したのだろう。


 ***


 そうして、旅を続けていると、エイジとハルキも反省したようで、野営時に謝罪してきた。

「すみませんでした」とエイジ。「なんか、焦ってたみたいです」

「焦りか。どういう焦りなんだ?」

「このまんまでいいのかなって感じ、でしょうか。正直、よくわかりません」

「オレもっす」とハルキも。

「先走ってしまうって感じか?」

 少し考えてエイジが答える。

「そうですね」

「ハルキもか?」

「身体がうずくって感じっす」

 オレはふたりの顔を見る。どちらもなんとも言えない表情だ。

「ふたりにとっては、大人になりきれていないゆえの感情なんだと思う」

 ふたりとも、えっという顔をする。

「子どもから大人への通過点。年齢こそ二十歳だし、体格もそれ相応になった。別に子どもっぽいとか思っていないからな。ただ、心が身体の成長に追いついていないんだよ」

「心っすか?」

「そう。オレもそういうことあったよ。心が未熟だと“なんでもできる”って思っちゃうんだ。ところが、実際にやってみると、思ったとおりに動けなくてな。高校生から大学生を見たら、大人に見えただろう?」

 ふたりともうなずく。

「で、大卒直後の大人を見ると、おっさんやおばさんに見えなかったか?」

 また、うなずくふたり。

「でも、実際には、身体が大きくなっただけで、心が未成熟だから、失敗が多い。歳を経るごとに、そうした失敗が減っていく。心が成熟していっているんだ。すると、落ち着いているように見えてくる」

 ふたりがお互いの顔を見合わせる。

「ということで、オレからの助言だ」

 ふたりがオレを見る、真剣な表情で。

「足掻け」

「へっ?」と呆気に取られるふたり。

「足掻け。それだけだ。それでもその都度、必要な助言はするけどな。でも、自分たちなりにやっていかないと、納得できないだろう? ようするになんでも経験になるって話さ。ふたりにはその経験が足りないんだ」

 ふたりは、なんとも言えないけれど、少し心が軽くなったようだ。苦笑いになったり、頬を掻いたりする。

「とりあえず、戦闘を許可する。ただし、仲間を頼れ。いいな」

 はい、とふたりがしっかりと答えた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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