855【焦り】
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今話は、ふつうの長さです。
それからのふたりの闘い方は、魔導具も使うようになった。もともと使う機会はあったのだが、それほどの多用はしていなかった。
ふたりだけの闘いは、ポーションによる回復ができないこともあり、連戦により疲れが蓄積していく。次第に動きにも素早さがなくなってきていた。冷静さも欠いていく。
***
三日も保たずに、ふたりは敗北宣言した。最後の闘いは、ふたりともケガを負っていた。
「わかった。まずは、マナミ、頼む」
「はい」
マナミが治癒魔法を使って、傷口を癒す。
それから魔力回復ポーションと体力回復ポーションを飲ませた。体力だけではなく、魔法もかなり使ったので、魔力が限界だった。
「落ち着いたか?」
「はい」とふたりともが返事した。
「連戦連勝は凄いが、ケガしてまで闘う価値があるのか?」
ふたりは下を向いて黙ったままだ。
「ここからは、闘いに参加するな。しばらく考えろ。みんなもそういうことだから、よろしくな」
うなずくみんな。
***
その後も魔獣は襲ってきたが、遠方からのコンパウンドボウによる攻撃により、次々に討伐していった。
倒した魔獣もバキューム。矢もバキューム。もちろん、キズを負っただけの魔獣は、矢以外は放っておく。
街道を閉鎖させずに済むからだ。
オーガの狩人と思われる集団が現れたが、コンパウンドボウでの攻撃を仕掛けたところ、致命傷にはならなかったが、すぐに撤退していった。
索敵さんで調べてみると、集落といえるほどの個体数ではなく、またメスや子どもで構成されていた。
おそらく、自分たちが倒れたら、彼らにエサを運べなくなると判断したのだろう。
***
そうして、旅を続けていると、エイジとハルキも反省したようで、野営時に謝罪してきた。
「すみませんでした」とエイジ。「なんか、焦ってたみたいです」
「焦りか。どういう焦りなんだ?」
「このまんまでいいのかなって感じ、でしょうか。正直、よくわかりません」
「オレもっす」とハルキも。
「先走ってしまうって感じか?」
少し考えてエイジが答える。
「そうですね」
「ハルキもか?」
「身体がうずくって感じっす」
オレはふたりの顔を見る。どちらもなんとも言えない表情だ。
「ふたりにとっては、大人になりきれていないゆえの感情なんだと思う」
ふたりとも、えっという顔をする。
「子どもから大人への通過点。年齢こそ二十歳だし、体格もそれ相応になった。別に子どもっぽいとか思っていないからな。ただ、心が身体の成長に追いついていないんだよ」
「心っすか?」
「そう。オレもそういうことあったよ。心が未熟だと“なんでもできる”って思っちゃうんだ。ところが、実際にやってみると、思ったとおりに動けなくてな。高校生から大学生を見たら、大人に見えただろう?」
ふたりともうなずく。
「で、大卒直後の大人を見ると、おっさんやおばさんに見えなかったか?」
また、うなずくふたり。
「でも、実際には、身体が大きくなっただけで、心が未成熟だから、失敗が多い。歳を経るごとに、そうした失敗が減っていく。心が成熟していっているんだ。すると、落ち着いているように見えてくる」
ふたりがお互いの顔を見合わせる。
「ということで、オレからの助言だ」
ふたりがオレを見る、真剣な表情で。
「足掻け」
「へっ?」と呆気に取られるふたり。
「足掻け。それだけだ。それでもその都度、必要な助言はするけどな。でも、自分たちなりにやっていかないと、納得できないだろう? ようするになんでも経験になるって話さ。ふたりにはその経験が足りないんだ」
ふたりは、なんとも言えないけれど、少し心が軽くなったようだ。苦笑いになったり、頬を掻いたりする。
「とりあえず、戦闘を許可する。ただし、仲間を頼れ。いいな」
はい、とふたりがしっかりと答えた。
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