845【グリフォン討伐その十一】
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今話は、少し短めです。
「サブ」
不寝番をしていると、ケイナから声掛けられた。
「ん?」
「サブは、向こうの世界で、どんな生活をしていたのだ?」
「サラリーマンだよ。ブラック企業一歩手前の会社のね。若いやつらが起こした会社で、中途で入ったオレが営業。帰宅してバタンキューな毎日だったな」
「なぜ、そんな会社に?」
「給料が出るから。それ以上の思い入れはなかったよ。そろそろ転職しようかなっと思ってたら、こっちに転職してたんだ」
「あぁ、渡りに船だったのか」
「まぁね。まさか、勇者召喚に巻き込まれて、さらに神様に用事を言い付けられるとは思わなかったけど」
「未練は?」
「向こうに? ないね。天涯孤独になってたし、友人らしい友人もいなかった。これといって、趣味とか推しとかもなかったし」
「推しくらいはいたんじゃないのか?」
「帰ってバタンキューな人生に? ないない。まぁ、若いころの、アイドルくらいだな。彼女も引退しちゃって結婚しちゃったし」
「今の方が、充実していると?」
「ああ。仲間もいるし、彼女もいる。やりたいことをやってる感があるよ」
「それは大事だな」と笑む。
「ああ。ケイナは?」
「私は、転生者だからな。もう帰れないとわかっている。“マホコイ”の世界に来れたのはうれしいが、自分が悪役令嬢役の人物で断罪対象となると、さすがによろこんではいられないがな」と苦笑する。
“マホコイ”とは、ケイナが読んでいたラノベ『魔法と剣と恋する乙女』のことだ。
「剣や魔法に振り切ったおかげで、路線変更ができて良かった」
「そのままだったら、断罪が?」
「おそらくな。そのままだと、学園の卒園式で、エスコートを直前に断られ、虚しくパーティーに参加する。ところが、相手のエスコートしていたのが男爵家令嬢の主人公。そのあと婚約破棄。それから主人公に対する過度な嫌がらせで断罪されて、死刑になる。そんな筋書きだ」
「なるほどな。だが、主人公の陰謀なのだろう?」
「否定して、誰が信じる? しかも、証人もいてな。私をいつも疎ましく思っていた令嬢だった。証人がいるだけで、いわれのない罪を着せられる、という、なんとも失礼なものだよ」
焚き火を枝でつつく彼女。寂しそうではない。
ふと、ほくそ笑む。
「今は、《竜の逆鱗》のみんなと旅ができていることが、うれしい」
「そりゃ、よかった」
そんなことを話していたら、交代の時間になっていた。
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