781【写景機の実演と説明】
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今話は、少し短めです。
全員が見終わったところで、説明する。
「なんで上下逆さまになるのか。それはこの」とピンホールの穴を指し、「穴から景色の光が入ってくるわけだけど、狭苦しいから、上の光は下に、下の光は上に、左の光は右に、右の光は左にと曲がってしまうんだ。光を細い棒だと思って。棒が穴を通ると、棒はまっすぐだから、当然どこから来たかによって、到達する先が決まるよね」
日本人組以外には、わかったような顔をしている者とわからない者と“ふぅん”と聞き流す者とに分かれている。もちろん、最後の者は、ウーちゃんである。
「まぁ、よくわからないかもだけど、そういうものと思ってくれればいいよ」
みんなは、とりあえずうなずく。
「で、これをどう使うかと言うと」とオレはテーブルの上の魔獣図鑑の上に、木箱の上下のないものを載せた。上から覗けば魔獣図鑑が見えるように。
その上に、魔導具を載せ、そのまた上に写景機を載せる。ピンホールの穴は開けたまま。
その上で、魔導具を起動する。
植物紙に魔獣図鑑が写る。
「見てくれ」
ダルトンをはじめに、まずはオレたちのパーティーから。
それから、《黄金の盾》の面々が見る。
なぜか、ウーちゃんも見る。
「おお」と声を上げるウーちゃん。「これは図鑑を持ち上げてるのか?」
「違うよ。ウーちゃんでたとえるなら、湖まわりに生える長くて固い草なんかはあるだろう?」
「うむ」
「水中からだと、水面で折れ曲がって見えない?」
「うむ、見えるな」
「あれは、水の中と外との違いでね。水か空気かで見え方が違うんだ。わかるだろう?」
「うむ。ふつうのことであろう?」
「そう。そのふつうのことを極端にすると、こうなるんだ」
「ほぉ。あれか、人が水の中の魚を突こうとして、見当違いのところを突いてるのと同じか?」
「そうそう。あれは、水の上からだと、そこに見えるんだけど、実際には手前にいるから、うまく突けないんだよね」
「あれは、滑稽じゃったな」とカラカラと笑う。
たぶん、グレイハート湖の名前の由来になった冒険者のことだろうな。
「よくわからないが」とオマル。「その上から書き写すのか?」
おっ、いい発想してるな。
「そういう使い方もできる。が、ここではここに写った絵を特別な紙に写す。それで写本しようというわけ」
「できるのか、そんなことが?」
「できる。あとは紙を用意できればいいだけだ」
「ほぉ。つまり、人が書き写す必要がなくなるのか」
「そう。でも写したあと、紙に定着しないといけない。それには手間が掛かるけど、ふつうに写本するよりも時間は掛からない」
「それは助かるかもしれないな」
「ああ。書かれている内容そのまま写せるから、書き間違いが減る。教育を受けていない者でもその作業が行なえる。写本の部数が多くなる」
「おいおい」と驚くオマル。「そりゃ、一気に本が安くなるんじゃないか?」
「うん。だが、写すための紙が特別製だ。薬剤を調合して、紙に塗布して、写したら定着される。それを考えると、既得権益で、最初はごたつくだろうな」
「あ、あぁ、そういう問題が出てくるのか」
「本を作るには、さまざまな職人が関わるからな」
「それがわかっていながら、なぜ?」
「これを作ったか?」うなずくオマル。「単純に写本して、手元に置きたいからさ。写本を待ってはいられないし、豪華な本にするつもりもないからな」
「なるほどな」
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