778【習性の違いとカメラについて】
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今話は、ふつうの長さです。
食堂に戻った。
そこでは、まだまだ魔獣図鑑に取り組んでいた。
「あっ、お帰りなさい」とラーナがこちらに気付く。
「ただいま。どんな感じ?」
「意見が分かれていたりしてます」
「分かれる?」
「同じ魔獣なのに、お互いが知っている習性と違うんです」
「オーガとか?」
「はい」
オレの言葉に振り返ったのは、オマル。
「なぜ、オーガだと?」
「それなりにやり合ってるからね。集落によって、習性が違うってのはわかってるんだ」
「集落は討伐対象だろう?」
「人間に手出しするオーガって、実は森の中での遭遇がほとんどで、わざわざ村や町を襲うオーガはごく一部なんだ。なぜなら、森の中は、食べ物が豊富で、人間を襲うほどには飢えていない。でも縄張りに入った人間は獲物と一緒。だから、襲う」
「だとしたら、村や町を襲うオーガは?」
「いくつか考えられるけど、ひとつには飢えてるから。ひとつには村を集落にするため」
「集落にするため?」
「そう。一度、そういうのに遭遇したことがあってね。あとからオーガの痕跡をたどっていくと、集落が荒らされていたんだ。集落に残った痕跡からアーマードベアだとわかった。しかも三匹。つまり、オーガたちは集落を捨てて、村を襲ったんだと思われるんだ」
「それで村を新たな集落に?」
「らしい」
「だが、なぜ痕跡をたどった?」
「オーガの数が集落くらいいたし、オスのみではなくて、メスも子どももいた。となると、何か異変があったのだと考えられたんだ」
「なるほど。それで痕跡をたどったのか」
話が途切れたところに、エイジが口を開いた。
「それで“写真”は?」
「“カメラ”は、明日作る予定。まだなんとも言えないが、まぁなんらかの成果は出るはずだ」
「そうですか」
「詳しくは、あとでな」
「わかりました」
もう少し魔獣図鑑をやって、今日は終了とした。
自分たちの部屋に戻る。
「サブさん」とエイジ。カメラの話だろう。「それで?」
「さっきも言ったが、明日、“カメラ”を作る」
「ねぇねぇ」とダルトン。「さっきから“カメラ”って言ってるけど、なんなの?」
「この世界には概念もないだろうから、簡単に説明すると、魔獣図鑑なんかの図や文字を写し取ることを写本というよな」
うなずくダルトン。
「写本は、人間がやるから時間が掛かる」
またうなずく。
「それを機械でやるんだ」
「機械で?」
「そんな感じ。仕組みは説明してもうまく思い描けないだろうから、明日作るもので実演するよ」
「わかった。機械ってことは、魔導具?」
「ちょっと強力なランタンを使うけど、それ以外は箱と引き出しみたいな構造。そんなに複雑なものじゃないよ」
「それなのにずいぶんと時間が掛かってたじゃん」
「写す方の紙に薬剤を塗ってたんだよ。そうしないと写本できないから」
「薬剤?」
「そ。その薬剤の配合もおよそでしかないから、きちんと写本できるか、何度か試して、配合を決めるんだ」
「珍しいじゃん。鑑定さんじゃないの?」
「鏡と同じでさ。向こうの技術だから、それをこっちの素材で賄わないといけないんだ」
「あぁ、そういえば、材料はわかっても量がわからない、とか言ってたっけ」
「そう。それでもおおよその配合はわかってるから、それほどの時間は掛からずに微調整で済むよ」
「わかった。それでそれを使うと、どのくらいで写本できるの?」
「たぶん、写すだけなら、三十呼吸から六十呼吸くらい。そのあと、写本のインクを定着させるのに、同じくらいかな。あとは乾くのを待つ必要がある」
「えっ、意外と時間が掛かるんだ」
「それでも手書きで写本するよりも、マシだと思うよ」
「そうなの?」
「手書きだと挿絵はその人の腕が必要だし、文字の間違いもありうる。それを考えたら、こっちの方が労力は少なくて済むんだ」
「なるほどねぇ」
「そんなに」とエイジ。「掛かるんですか?」
「昔の“カメラ”みたいなもんだからね。科学の実験レベルさ」
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