501【獲物の吸収】
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2話連続投稿します(2話目)
バステトは、イスから立ち上がったままだ。そのイスがいつのまにかなくなっている。スフィンクスの前の石畳も閉じられていた。念のためだろう。
オーガは七匹が駆けてくる。おのおのに武器を持って。多くは棍棒レベルだが、オーガの膂力から繰り出される棍棒は、かなりの威力を持つ。
オーガたちがバステトまで五メートル圏内に入ってきた。
オーガたちの攻撃がはじまる。棍棒を振り上げ、殴りかかる。
それまでたたずんでいたバステトが消えた。いや、素早く動いたのだ。
最接近していたオーガを通り過ぎて、次へ次へと、オーガに接近していく。
その刹那で、オーガは事切れていた。目ではわからないが、鑑定さんの警戒網からは、消えていく。
バステトが立ち止まったときには、すべてが終わっていた。オーガたちはゆっくりと傾いていき、バタバタと石畳に倒れた。
オレは、フレックスの肩を叩き、指でオレを指し、下を指す。それから浮遊した。
ワイバーンが離れていき、オレはバステトのそばへと降りていく。
「終わったのか?」
「終わった。吸収する。サブは降りるな。一緒に吸収してしまう」
魔導具を操作して滞空する。
オーガたちのまわりには血は流れていない。いや、傷口から流れているが、広がらないのだ。石畳に吸収されていっている。
「身体は?」
「もちろん吸収する。だが、時間が掛かる」
「なるほど」
オーガたちの身体が石畳に沈んでいく。いや、しぼんでいっているようだ。そうしたビデオを早回ししているみたいに見える。
五分ほどで、オーガたちは吸収された。血汚れもなくなった。
「もう降りてもいい」とバステト。
地上に降り立ち、魔導具を切る。
「凄いな」
首を傾げるバステト。
「バステトの狩りの動き。オレじゃ相手にならないよ」
「黒猫は狩りがうまかった」
「あぁ、それでか」
上からオレの名が呼ばれた。
見ると、ロングだった。
「みんなを降ろしても大丈夫か?」
うなずくバステト。
ハンドサインで、着陸を促す。
「それで?」とロング。
みんなはすでに石畳に降り立っている。
「彼女はバステトと言って、ダンジョン・コアのしもべだ。勇者召喚したかった理由は、ダンジョンの構造をさらに構築したかったんだそうだ」
「さらに?」
「あのピラミッドの中は、空っぽなんだそうだ。どうやら召喚された人物は中身に執着していなかったらしい」
「では、ダンジョンとしては?」
「単純な構造みたいだな。だから、さっきみたいに、石畳の上で魔獣を狩り、吸収していた」
「そういうことか。しかし、それだとダンジョン都市にはしづらいか」
「これからだよ、ロング。これから構造を変えていくんだ。その知識を欲しくて、勇者召喚しようとしていたんだからな」
「つまり、人が増えれば、知識は得られると?」
「吸収すれば、だな」バステトに振り返る。「話し合いで、中の構造を変えることはできないか?」
「多少は。だが、彼らの言葉がわからない」
「それは学習すればいいだけだな、お互いに」
「わかった。しかし、疑問がある。それをして、人間たちが得られるものはなんだ? メリットがなければ、そうした助言の必要はないだろう?」
「あー、まだ話してなかったな。ダンジョンには人が集まるものなんだ」
首を捻るバステト。
「ダンジョン攻略して、そこから金銀財宝を得ようとな。ダンジョン側はそうやって人々を集めて、倒して、吸収する。お互いに利益があるわけだ」
「さっきみたいに倒していいのか?」
「いや、倒すのは、ダンジョンの中だけ。それと人々を倒すのは魔獣。倒された方が吸収される。君だと全員倒されちゃうよ」と笑ってみせる。
「わかった。金銀財宝は用意した方がいいのか?」
「ああ。フロア毎にそういう宝箱を用意して、そこをフロアボスに守らせる」
「フロアボス以外は?」
「ボスよりは弱い魔獣を配置すればいい」
「さっきの?」
「オーガね。確かに案のひとつだけど、フロアを攻略するたびに強くなるようになっていれば、攻略者もやり甲斐を感じると思うよ」
「勉強になる」
ふと、日本人的だな、と思い、苦笑いした。それからロングに向き直る。
「今、基本的なダンジョンのことを教えた。それで多少は構築されるはずだ」
ホッとするロングたち。
「では、ダンジョン都市には問題はないのだな?」
「おそらくね。冒険者が吸収されれば、それをもとにダンジョン構造を変える可能性は高いよ。人が死ぬのが前提になっているけど、それはダンジョンなら当たり前だろ」
彼がうなずく。
「問題は」とオレ。ロングが次を待つ。「コアとのやり取りができるのは、オレしかいない点だな」
「どうにもならないのか?」
「誰かがダンジョンに吸収されれば、言葉はすぐに学習できるらしい。だが、自ら進んで、そうなりたいヤツはいないだろ。犯罪者とかも考えたけど、変な記憶で変なダンジョンになるのも困る」
うなずくロング。
「どうする?」
「冒険者に潜らせるしかないな。できれば、ダンジョン経験者がいいだろう」
「そうだな。その旨、報告することにしよう」
オレたちは、当初の予定を変更して、ここで宿泊することにした。
ロングたちとバステトとの話を仲介しなければならないのが、シンドいが。
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