500【バステト神との対話】
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2話連続投稿します(1話目)
今話は、少し短めです。
しばらく、どちらも声掛けしない時間が過ぎる。おそらくたいした時間でもないのだろうが。
上空で風切り音がしている。ワイバーンの飛ぶ音だ。さっきからずっと周回しているのだろう。焦れているだろうな。
仕方ない、とオレが口を開こうとしたところ、彼女が右腕を持ち上げ、軽い感じで、オレを指差した。
それから肩越しにピラミッドを指差し、こちらに向かった腕を伸ばした。
「バキューム」と声を出した。可愛い声だね。
次に彼女は手のひらに円を描いてから、描いた円を掴み、空中にポイッとした。それでオレを見る。最後に首を傾げて。
そういうことね。
「バキューム、OK?」
うなずく彼女。
少なくとも、英語圏の人かな?
「マイネーム イズ サブ」と自分を指しながら言う。
「マイネーム イズ バステト」
あっ、そのままなのね。
というか、この英語、日本語英語では?
「ドゥ ユー スピーク イングリッシュ オア ジャパニーズ?」
少し考えてから答える彼女。
「ジャパニーズ。OK?」
「日本語で大丈夫なんだね?」
「それがいい。英語は、苦手」
「オレも苦手だよ。ともかく、話をしよう。さっき言いたかったのは、魔法陣をバキュームしたのはどういうことか、ってことかな?」
うなずく彼女。
「あの魔法陣は、使用を禁止されているんだよ。過去に何度も使われてきたから、空間にヒビが入っているらしい。ここまではわかる?」
またうなずく。
「この世界の神様が、禁止したんだ。でも直接干渉することができない」
「それであなたが?」
「その役目を与えられた。もともと地球の日本の出身だよ。その魔法陣でこっちに呼び出されてね。で、そのときに神様がオレに役目を与えたんだ」
「そういうこと」
「魔法陣が禁止されていることは、理解した?」
うなずく。
「それでも呼び出したい?」
またうなずく。
「理由は?」
「知識が必要だ。最初は、無意識だった。でも、ここの中を造ることができない」
「どういう意味だ? これだけ造れれば充分だろ?」
首を振る彼女。
「中は空っぽ。獲物をおびき寄せられても、少ししか獲れない」
「獲物は、魔獣か?」
「マジュー?」
「ここの生物だよ」
「なら、それだ」
「それでは満足できない?」
「足りない」
「それで魔法陣で人間を召喚しようと?」
「そう。知識を得て、ここ、立派にする。獲物、近付く。狩れる」
「なるほど。ところで、最初の人間の記憶はまだあるのか?」
「ある。必要か?」
「うん。どんな人間なのか知りたい。日本人というのはわかる。それ以外を知りたい」
彼女が語る人物は、引きこもりだったようだ。古代エジプトの神々とその活躍の場を強く想い描いていたようで、それがこのピラミッド型ダンジョンのもとになったそうだ。
「君自身は? 君はダンジョン・コアが、オレと話すための身体だよね?」
「ダンジョン・コア?」
「ダンジョンはわかる?」
首を振る。
「迷宮と言えば、わかる?」
「わかる。それがダンジョン?」
「そう。そのダンジョンを造り出した存在、それがダンジョン・コア」
「ならば、それは私……ここを造った者」
オレはそれをうなずいて肯定した。
「君はその?」
「本人ではあるが、本人ではない」
「コアはピラミッドの中か」
彼女はうなずかない。首を振ることもしない。場所は秘密か。
「君は、なぜバステト神の格好なんだ? 取り込んだ人間が古代エジプトの神々を崇拝していたとしても、バステト神を選んだ理由は?」
「黒猫を飼っていたそうだ。名前もバステト」
「あ、なるほど」
そこにバサバサと羽ばたきの音が聞こえてきた。
顔を上げて、そちらを見る。
フレックスと彼のワイバーンだった。
「サブ!」
「あー、すまないな! 長々と!」
安心させるためにそう叫んだ。
しかし、彼は腕を伸ばして、東を指す。
迷わずに、そちらを見た。
「オーガだ!」とフレックス。
まだ遠いが、こちらを目指して走っている。しかも集団だ。
彼女も見る。
「バステト」
「心配ない。久しぶりのエサ。吸収する」
「どうする?」
「狩る」
「オレは、空に上がる。いいか?」
うなずいた彼女は、ゆっくりとイスから立ち上がる。
オレは、浮遊の魔導具を起動して、フレックスのうしろに乗った。
フレックスにそのまま螺旋を描いて、上昇してもらう。
「大丈夫なのか!」とフレックス。
「あれは! ダンジョン・コアのしもべだ! 狩りをする!」
首を傾げるフレックス。
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