499【黒猫】
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2話連続投稿します(2話目)
朝、いつものように、ワイバーンで飛び立った。
本来ならば、ゴウヨーク国への旅路。
だが、今日はダンジョンに寄る。
オレが考えたとおり、ダンジョン・コアが魔法陣を描いて、勇者召喚を行なおうとしている、としての寄り道だ。
向かっている最中に、また魔法陣の警報。素早くバキュームする。
これで三回目だ。誰かが意図的に消していることに、気付いただろうな。
そうはいっても、“誰が?”と考えたとしても、答えはそこにない。
到着した。まずは上空から様子見。
ピラミッドは白く、陽光に光り輝いていた。
ゆうべのうちに例の知識の書でピラミッドのことを調べておいた。
現代地球のエジプトのピラミッドは、巨石の階段状だが、本来は白い岩が表面を飾っていて、頂上にはキャップストーンと呼ばれる小さなピラミッドが載せられていた。現在は博物館に保存されている。
ピラミッドのそれぞれの面は東西南北を向いており、天文台の役目もあったのではないか、と聞いたことはある。
ここのピラミッドは単体で、そのまわりは開けており、砂漠ではなく、石畳で覆われている。ピラミッドを中心とした正方形だ。
石畳の上には、何もない。
いや、よく見ると、東側に何かある。
フレックスの肩を叩き、指差す。
乗っているワイバーンがそこへと向かう。
その何かがはっきりと見えてきた。
スフィンクスだ。塗装が施されていて、鼻もある。
だが、とても小さい。
某デパートのライオン像ほどの大きさしかない。
だが、ここにあるということは、こっちがピラミッドの正面ということだろう。
「降ろしてくれ!」と叫ぶ。
そのスフィンクスの横に降り立つワイバーン。
滑り降りる。
スフィンクスはさまざまな色で彩色されており、写真で見たことがある壁画を思い起こさせる。
土台には、ヒエログリフが刻まれていた。こちらにも彩色が施されているが、控えめである。
異世界言語で読もうとしたが、意味をなしていないらしく、何も読めない。それらしく掘られているだけだ。
それでもカルトゥーシュは読めた。“トゥトアンクアメン”、つまりツタンカーメンだ。有名どころだな。
これだけでもこのダンジョンが、現代地球の人間の知識をもとにしたものだとわかる。
「何かわかったか?」とフレックス。彼はワイバーンから降りていない。
「やはり、オレの世界の人間の記憶を取り込んだと思われる。だが、そのまま使ったんじゃなくて、それらしく真似ただけのようだ。この像は、本当はもっと大きいものなんだよ。それがこんな程度で、適当な模様を付けている」
「その模様、本来は意味があるのか?」
「ああ。これは」とカルトゥーシュを指差す。「王の名前で、これだけは正しいんだが、オレの世界のピラミッドの近くで多く見られるものだ。意味があるようには思えないな」
「そうか。これからどうする?」
とりあえず、スフィンクスのまわりを歩いて調べる。押したり叩いたりして。変化なし。
そこに、鑑定さんのアラート。すぐさま腕をその方向に伸ばして叫ぶ。
「バキューム!」
「また魔法陣か」
「ああ」
十秒ほどすると、足に振動を感じた。地震じゃない。何かがズレるような振動だ。
「おい!」
フレックスの声に振り返ると、彼がスフィンクスを指していた。正確にはスフィンクスの前の地面だ。
見ると、石畳が割れはじめていた。
オレは、魔獣用装備を身に付けた。魔獣が現れるかもしれないから。
石畳の割れ目は、まるで石材が左右に分かれていくように開く。そこに暗い穴が出現していく。
「フレックス、上空に! 魔獣が飛び出してくるかもしれん! 早く!」
ワイバーンの羽ばたきの風を感じた。
石材の動きが止まった。
暗い穴は、一メートル四方の大きさ。
その暗い穴を覗き込む。
次の瞬間、黒い何かが飛び出してきた。
思わず、ステップバックして、離れた。ショートソードを構える。
石畳に降り立ったのは、小柄で美しい黒猫だった。
古代エジプトの像を思わせる装飾品を身に着けている。金のイヤリング、金の鼻カン、首には金と青い石の首飾り。
黒猫はその場に座り、こちらをジッと見つめている。
オレは警戒を解かずに、ゆっくりとショートソードを鞘に収めた。それからゆっくりと片膝を付く。目線を近付けるために。
そのようすをジッと見つめていた黒猫が、動き出した。
その場で、ゆっくりとまわりはじめる。自分の尻尾を追い掛けるようだが、何かの意味があるようだ。
黒猫の身体が少しずつ大きくなってきていた。それが次第に別の存在へと変貌していく。
最終的に、黒猫は後ろ脚で立ち上がり、150センチほどの小柄な猫獣人になった。薄手の布をまとって。
古代エジプトの像で、そっくりなものを見た覚えがある。彼らの神のひとりだ。詳しくは知らないが。
彼女のうしろにいつのまにか黒い木製の華奢なイスがあり、彼女はそこに座った。
敵対するつもりはないらしい。
彼女が、オレにも座るようにと促す。
オレはまさかと思って、ゆっくりと肩越しにうしろを見た。同じイスがあった。
それにそっと座る。華奢に見えるが少しも揺らぐことはない。
彼女を見る。
鑑定さんが情報を教えてくれる。
名前はないが、古代エジプトの“バステト神”を模したダンジョン生成物。ダンジョン・コアとつながっている。
知ってた、なんとなく。
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