498【ダンジョン・コア】
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2話連続投稿します(1話目)
「ダンジョン・コアか」と呟いたのは、ロングだった。
「ロング、今なんて?」
「ダンジョン・コア、ダンジョンの核だ。ダンジョンの形態や規模はすべてダンジョン・コアにより形成される。あれだけのダンジョンだ。知性があってもおかしくはないのではないだろうか」
「ダンジョン・コアか。魔獣の魔石みたいなものか。その身体があのダンジョンと」
「そうだ。ダンジョン共同開発の話を父王から聞いて調べた。それでも知性があるダンジョンというのはなかった」
「まぁ、ダンジョンに知性があるなんて、誰も思わんよ」
「それでどうするつもりか」
「おそらく、魔法陣を描いたのは、ダンジョン・コアということには間違いはないだろう。描くたびにバキュームする手もあるが、オレが休まらん」
「それで?」
「倒すのも手ではある」ロングが反射的に言葉を発するのを制止する。「わかっている。倒せば、ダンジョンも死ぬ。共同開発の目が潰れる」
うなずくロング。
「だいたいオレが倒せると思うか? あんなダンジョンの中を踏破して、ダンジョン・コアにたどり着けると思うか?」
全員が首を振った。
「オレはB級冒険者とはいえ、テイムした魔獣のおかげでそうなっただけで、オレ自身の力じゃない」
そこで挙手したのは、ローレルだった。
「サブ、あなたのステータスからは、ここの誰よりも強いと思うのだけど」
「えっ?」
「何を驚く」とガルドガル。「剣の腕だけでも、オレは負けているぞ? 魔法に関しては当然としても」
自分のステータスを確認する。
いや、さっきも見たよ、確認のために。でもそれは称号のところだし、ほかはそんなに変化ないだろうと思って、しっかりは見ていなかったんだ。
ステータスは、以前に見たよりもレベルが上がり、騎士ふたりが言うように、強くなっていた。スキルの取得もいつのまにか増えていた。取得した場面にも思い当たる。
思わず、目を見開いたくらいだ。
「わかってなかったのか」とロング。
「それなりとは思っていたが、ここまでとは思わなかった」
力なく呆けたオレを見て、その場の全員が笑いはじめた。
オレは、そんなみんなを見て、膨れ面。
「そんなに笑わなくてもよくない?」
しばし笑いが続いた。
ようやくみんなの笑いが収まった。
「失礼した、サブ」とロング。笑顔を消して、真剣な表情になる。「それでどうする? ダンジョンについてだが」
「まず、さっきも言ったとおり、踏破は難しい」
みながうなずく。
「おそらく、これからも魔法陣は描かれるだろう。異世界召喚が必要なんだとダンジョン・コアが思っている限りな」
「なぜ必要なのだろうな」
オレは頭を振った。
「わからんよ、ダンジョン・コアの思惑なんて」
「それもそうか」
「あんなピラミッドがこの世界にあるなんてなぁ」
「ピラ……なんだ?」
「ん?」
「今、なんと言った? ピラ?」
「ピラミッド」
「それだ。なんだ?」
あれ? 知らない?
アイーシャ嬢も驚いて、みんなを見ている。
「あのダンジョンの形状、もしかしてこっちの世界にはないのか?」
誰もが首を振った。
「ダンジョンの形状は、いくつかある。しかし、あのような形状はどの文献にもなかった。おそらく初めての例だろう」
「ありゃ。じゃぁ、どんな魔獣が出るのかわからないのか」
「それどころか、一切が謎だ。調査するにも空から外観や周辺を調べるくらいしかできていない」
「そうか」
むー、なぜ突然ピラミッド型ダンジョンができたんだ? 何もなければ、ふつうのダンジョンができるはずだろう。それがこの世界では知られていないはずのピラミッド型ダンジョンが現れた。
ひとつ考えられるのは、異世界召喚魔法陣の存在だ。
「あー、そういうこと?」
オレは天を仰いだ。
「どうした、サブ」
顔を戻す。
「これはオレの勝手な想像なんだけどな」
「ふむ」
「ダンジョン誕生初期に、異世界召喚の魔法陣が起動された。召喚されたのは、オレの世界の人間。そして、ダンジョンに喰われた。もしダンジョンが人間の記憶を自身の知識として活用できたとしたら、どうだろう?」一拍空けたが、誰も何も思い付かない。「つまり、召喚された人間の知識から、あのダンジョンを造ったんじゃないか、とオレは思ったんだ」
「なるほど。サブの言うとおり、ダンジョンにそうした能力があるならば、可能性はある、か」
ロングが考え込む。
「だとしますと」とアイーシャ嬢。「新たな魔法陣で、異世界人を召喚して、取り込もうとしていると?」
「そう考えると、辻褄が合う、という話。確証は何もないよ」
「いや」とロング。「あながち、間違いでもないかもしれぬ」
「ん?」
こちらを見るロング。
「魔法陣に関してはわからぬ。しかし、こういう話を思い出した。洞窟型のダンジョンに優秀な冒険者が入っていき、出てこなかった。しかし、そのあと、そのダンジョンが人工的に造られた遺跡型のダンジョンになっていた、と」
「つまり、冒険者の知識がダンジョンに吸収された、と?」
「その冒険者はダンジョンを専門にやっていた。さきほどのサブの話と符合する話だと思う」
「確かに、辻褄は合う、か」
「異世界の知識がダンジョン造りに役立つものか?」
「現にピラミッドができてる。あとは中身だが、オレの知識では、中身は王の石棺までの通路だけで、迷路なんかはない」
「王の石棺?」
「ああ。王の墓として建てられた、という説が一般的な説だよ。でも王家の谷という墓場があるから違う、という人も多い」
「だとしたら、いったい」
オレは頭を振った。
「わからんよ。四千年とか五千年も前のことなんて」
「そんなに経ているのか、それは」
「うん。ともかく、あのダンジョンはオレの世界の人間の知識から造られたと考えてもよさそうだな。それでもその構造はダンジョンに準じているだろう。オレの言ったような構造では、ダンジョンとしては中途半端だと思うからな」
「わかった」
「だから、一度、寄ってみたい。滞在は少し調べる程度の時間で構わない。あっ、調べると言っても中には入らないからな」
「何を調べる?」
「わからない。何か攻略の糸口を得られないかと思ってな。アレがオレの世界のものを模したものならば、何かがあるのではないか、と考えている。もちろん、ないかもしれない」
「わかった」
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