497【本来のバキューム遂行】
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2話連続投稿します(2話目)
ゴウヨークへのワイバーンでの旅は続き、国境が近付いたとき、それは起こった。
オレの頭の中で、アラームが鳴ったのだ。
オレはすぐさま、反応して、叫んだ。
「バキューム!」と。
オレが腕を伸ばして叫んだので、オレの前に座るフレックスが振り返った。
「どうした!」
「すまん! なんでもない!」と肩を叩く。
それで彼は前を向いた。
バキュームしたのは、オレが神様に依頼された異世界勇者召喚の魔法陣だった。
そう、誰かが使おうとしていたのだ。
だが、いったい誰が?
オレはフレックスの肩を叩き、意識を向けさせた。
「この方向に! 何がある!」
オレはその方向を腕を伸ばして指した。
フレックスは、太陽の位置とまわりを確認した。わかってはいるが、再確認したのだ。
「遺跡! ダンジョンだ!」
彼の肩を叩く。理解した、という意味で。
アラームが鳴った、ということは、新たに描かれたことになる。しかも例のダンジョンで。
いったいどういうことなのか?
バキュームしてから、しばらくして、夕方を迎える時間に、地上に降りて、野営準備をする。
そこにふたたびアラームが。
すぐにバキュームする。
その動作に、準備していたみんなが、こちらを凝視する。叫んでいるから当然だな。
「あとで話す!」
緊急ではないと判断してくれた。
夕食を終え、お茶を飲む時間。
オレは全員を見た。みな、説明を待っている顔だ。
「説明する前に、ひとつ内密の話をしなければならない。内密に頼む」
全員がうなずく。
「オレは、ゴウヨーク国の勇者召喚で、異世界からこの世界に飛ばされてきた」
この中で、オレが召喚されたのを知っているのは、ロングたち竜騎士とアイーシャ嬢だけだ。リリアス嬢とふたりのゴウヨーク国の騎士は知らない。
三人が驚いている。
「その際に、オレは神様に会った」
これは眉唾物とされても文句は言えない。そこでオレはステータスの隠蔽を解いた。
「ステータス・オープン。これがオレ本来のステータスだ。普段は隠蔽スキルで隠している」
そこには称号である“神に役目をもらいし者”と“勇者を助ける者”が書かれている。
全員が覗き込む。それほど近くに来ないけど。
ステータスの見え方は、人によって異なるようだ。グレイハート湖での訓練の際に知った。ちょっとした話題から、キヨミが地面にステータスを描いたのだ。それを見て、ほかの若者三人がそれぞれのステータスを描いて、違うことが発覚したのだ。
文字の読めない人間でもステータスは見れることから、本人がわかりやすい図や絵になっている可能性がある。
オレたち日本人は、日本語や英語で表示されることからもわかる。
全員が落ち着くのを待って、話し出す。
「神様から依頼されたのは、異世界からの召喚術の回収だ。その召喚術により、オレたちは無理矢理にこの世界に召喚された。その召喚術というか召喚の魔法陣の回収だな。床や書物に描かれた魔法陣を回収する」
「どうやって?」とロング。
「オレには、バキュームというスキルがある。どこからでもなんでも吸い込むスキルだ。吸い込んだものは、アイテムボックスに入る。マジックバッグの上位版的なスキルだ。時間経過なし、容量無制限というな」
「あぁ、以前に聞いたな。そこに吸い込まれるわけか」
「そう。で、今日の話になる」一拍置く。「オレのスキルに鑑定があるが、これはなんでも鑑定するんだが、常時発動して必要なものが見つかったら、知らせてくれるようになっているんだ」
「大概ですわね」とアイーシャ嬢。呆れている。
オレは彼女にうなずいたが、話を続ける。
「その知らせがあった。看過できないものだったから、バキュームした。召喚の魔法陣だ」
「つまり」とロング。「新たな魔法陣が描かれた、と?」
「そうだ。しかも二度だ。フレックスによれば、その向きは例のダンジョンの方向だった。そして、この方向に二度目の魔法陣が描かれてバキュームした」と片腕を伸ばして指す。「この先は、ダンジョンか?」
竜騎士三人がうなずいた。
「とすると、異なる二点から確実にダンジョンとわかるな。ダンジョンで召喚をしようと魔法陣を描いた者がいる、ということになる」
騎士ふたりが小声でひそひそと話している。
「ガルドガル、どうした?」
呼び掛けにこちらに意識を向けたガルドガル。
「あー、いや、悪い。少し理解が追いつかなくて……どうして方向だけで、位置を特定できるのか」
「簡単だよ。今、君の後ろにウルフがいる、と思ってくれ。気配はわかるよな」
うなずくガルドガル。
「だが、暗闇で見えていない。気配でおおよその方向はわかる」うなずく彼。「ローレルも同様にわかるな」ローレルもうなずく。「今、ふたりはアイーシャ嬢を守るためにその位置にいるが、少し離れていると考えてくれ。お互いの姿は見える距離だ。ふたりがウルフの気配を指したら、どうだ? ウルフのいる場所の範囲が狭まるよな」
ふたりが、あっ、となった。
「それと同じ。異なる二地点から指した方向に線を引いたら、どこかで交わる。そこに目標物がある。今回はそこにダンジョンがあった」
「理解した。すまない。話を続けて欲しい」
「了解。ダンジョンで召喚の魔法陣が描かれた。二度も。問題は、この世界にあるすべての魔法陣は、オレが吸い込んでいる、ということだ。召喚の魔法陣はとても複雑で、人間が記憶をもとに正しく描くのは、非常に困難なんだ。すでに魔法陣を描いた文献はないんだから、描けるはずがない」
「ダンジョンに魔法陣を描ける存在がいる、ということか」とロングが結論にたどり着く。
「そうだ。人間ではない何か、としか言えないな。それも知性のある存在だ」
「なんだと思う?」
オレは首を振った。
「わからん。あれだけのダンジョンを作った存在と同じでも、おかしくない」
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