いっぱいいっぱいです
ブックマーク、ご感想ありがとうございます。
更新遅くなりました
すみませんm(__)m
再出発してすでに一時間が経つ。一時間毎に身体強化魔法を掛け直す手間はあったが、俺たちは順調にダンジョンを進んでいた。
とはいっても、俺は後方から襲ってきた普通のコボルトを三体倒しただけ。持たされていた槍でプスッと一突きでね。ダンジョン内では普通のコボルトも消えてくれるから気持ち楽に狩れる。
まあ、お姉さんなんて倍の六体、小西さんと、大野さんは魔法を放つ準備はしていたけどその必要はなく、彼女たちの執事騎士が四体ずつ倒していた。
「はい、ストーップ」
先頭に立つ田中たちが声を上げて立ち止まると、中衛の位置にいる騎士たちが止まり、そして俺たちが遅れて止まる。
――おおっと。
俺の目の前には小西さんと大野さんが歩いているので、ボーッと考えごとをしながら歩いていた俺は危なく彼女たちとぶつかりそうになった。
なぜかというと、俺は誰かと並んで歩いていると気を遣う。それがクラスメイトで異性だと特に。
何か面白いことを話さないとって焦ったりもするし、彼女たちだけのほうが気兼ねなく話せるかもって考えたりもする。
そんなことを考え出すと余計に言葉が出てこない。何を話せばいいのか分からなくなるんだ。だから……
結局は、気づかれないように少しずつ後ろに下がり、彼女たちの背後に回り一歩離れて歩く。これが一番気が楽だ。
――お姉さんは半歩後ろにいるし、先生とは、全力で走っていたから、話す余裕なんてなかったからな……
変に思われるかなとは思ったけどコボルトが襲ってきた後だったので、俺が背後を警戒していると思われたらしく(勝手にそう思ってる)誰からも指摘されることはなかった。よかった。
それで、立ち止まった田中たちはというと、すぐに重属性であることを活かして両手に展開させた魔法を前方に放つ。毎回こんな調子だ。
「ふんっ」
「はっ」
「それ」
「ははっ」
その敵に向かう魔法の速度はかなり速く、身体強化した俺の眼でも光の線にしか見えないが、その魔法は彼らの適性魔法である火の槍、木の槍、水の槍、風の槍だ。
――また細くしたのか? スピードも速くなってる?
使い始めた当初はもっと太くスピードも遅かったから、少しずつ手を加えているのだろう。
まあ、いくら手を加えたところで、その神紋魔法はすでに覚えているので、別の魔法を使ってほしいところなんだけど、無理だろうな、少し手を加えては先生の方をチラリと見ている。
――こんなこともできる俺、カッコよくね? なんて思ってるんだろうか……
加護憑きに命中した田中たちの魔法が激しく発光すると、遅れてバスンッ、バスンッと何かを貫くような音が重なり耳に届く。
『グァァ……ァァ……ガゴ……』
そのあとはお決まりの断末魔の叫びってヤツだ。いつまでも耳に残る嫌な叫びだ。
四体の加護憑きの胸部には、野球ボールより少し大きな穴が二つずつ開いており、身体をガクガクと小刻み揺らしたかと思えば、ぐらりと傾き倒れ消滅していく。小さな輝く石を残して……
あの加護憑きの魔物たちは、おそらく自分の身に何が起こったのかすら気付いていないのだろうな。何度見ても創造神の加護の力はすごい。
「ふふん」
田中たちも、すでに先生のほうに向き直っており、始末したぜ、と言わんばかりのドヤ顔だ。
「たわいもない」
「そうだな」
「楽勝」
「ザコだね」
だが、そんなドヤ顔してカッコつけようとも、俺の目は誤魔化せない。ちゃんと気付いてるぞ。
田中たちが、ドロップした輝く石を必ず専属のメイド騎士に拾わせ、その石を拾うためにメイド騎士がしゃがみ込んだ瞬間だけは、先生からメイド騎士のほうに視線を向けていることを。
つまり、田中たちは毎回メイド騎士たちの短いスカートの隙間を覗いているんだ。
――けしからんよな。実にけしからん……おぅふ!?
つい、釣られて俺もお姉さんのスカートへと視線を向けてしまったんだけど、なぜか、その過程でお姉さんと視線がバッチリ合ってしまった。
俺は慌てて顔を背けて、額の汗を拭く。
「また見てる。あいつら救いようがない」
――ギクッ。
「大丈夫だよアキちゃん。救う必要はないから」
――ギクギクッ。
「そっか」
「うん」
彼女たちが嫌悪感丸出しで会話をしている。一瞬俺のことかと焦ったが彼女たちは田中たちのほうを見ていた。よかった。
二人の会話聞くに、どうやら彼女たちも、田中たちがメイド騎士たちの下着を覗いていたことを知っている様子。俺だけかと思ったが、彼女たちもちゃんと気がついていたらしい。
――俺はセーフだよね……
俺もお姉さんの下着は見たことあるが不可抗力である。後ろめたさなんてない。ないんだけど……
できればその会話には交じりたくないと思った。俺は息をひそめ、空気アビリティに期待した。
――さあ、空気アビリティよ、今こそ存分にその力を発揮してくれ……ん?
初めて意識して使用してみたが、使用不可? なんとなくそんな感覚がある。
――なんで……?
だが、その疑問はすぐに解決した。
「そういえば、たまにタロもあんな感じ」
――あんな感じって、うおっ!?
「お、大野さん」
そう、俺の右肩には大野さんの左手が乗っていた。もしかしたら、空気アビリティは誰かに触れられていてはダメなんじゃないだろうか。
「タロ?」
大野さんが俺の顔を覗き込んでくる。
――おわっ、近いっ。
普通なら異性から肩を触れられ顔を近づけられたのなら、俺のこと好きなのかもって勘違いしてドキッとしてしまうシュチュエーションなのだが、今は大野さんが発した言葉の意味のほうが気になり、心臓だってバクバクしている。
「アキちゃん。男の人はみんなそうなんだって、ね。タロウくん」
今度は小西さんが意味ありげに左肩をぽんっとソフトタッチ。
――グハッ……
これも男ならされて嬉しいはずなんだけど、おかしい。俺、追い込まれてる気がする。
「え、あ、いや、その……」
尋ねられたことを普通に答えるのは簡単だ。そうだよって言えばいい。例外もあるだろうけどスケベな男は多いだろうし。
ただ俺の場合は内に秘めているのでむっつりが付くけど……
なんて思っても答えれるはずもなく、俺は言葉に詰まりただ焦るのみ。
「はは、ははは……」
いっぱいいっぱいだった。もう笑って誤魔化すしかないと俺は思った。
――分かってる。分かってるんだ。彼女たちが、こんなことで簡単に引き下がるなんてことは……
彼女たちは何事もなかったように前に向き直っていた。
――あった……?
勘違いかもしれないけど、心なしか機嫌が少しよくなっている感じすらある。彼女たちに何か心境の変化があったのだろうか。よく分からないが助かった。
「ふーん。だからタロは私たちの後ろを歩いていたんだ」
――ぶはっ。
そうじゃなかったらしい。
「うん、そうじゃないかな」
「ふーん」
どうやら、彼女たちからしたら、俺に対する評価も、話をしてくれる分、田中たちよりは少しマシってだけでかなり低いことが分かった。だから俺は思った。これ以上は無理、話題を変えたいと……
「と、ところで小西さんたちは、このダンジョンのどこまで進んでいたの?」
でもぼっちだった俺は喋り慣れてないから話題を振るのが苦手なのだ。でもこれが精一杯。
――唐突に話題を変えて変に思われただろうか?
少し不安になったが、何故か小西さんから生暖かい視線を向けられた。
「ふふ、そうだね。たぶんもう少し先、かな」
「うん、もう少し先。もう少し先にある十字路辺り」
大野さんに限っては僅かに笑みまで浮かべている。理由は分からないが、これなら話題を変えることに成功したと判断してもいいだろう。
「もう少し先?」
「うん」
「そう」
ほっとすると少しずつ冷静さが戻ってくる。
――じゃあ、この時点で、すでに加護力は弱くなっていた? でも、あれ?
そして、疑問も思い浮かんだ。
それは同じ進路でダンジョンを進んできたが、先に進めば増えると思っていた加護憑きの数がそれほど増えているように感じなかったってことだ。
加護憑きの数が多かったから、みんなの加護力が負けて、力が使えなくなったはずなのに……
――どういうこと? あ、それともダンジョン内に加護力を奪うような仕掛けでもあるとか?
そう思い、辺りを見渡したが、ぱっとみてそれは分かるものでもない。だから俺は尋ねた。
「仕掛けはない。そもそも先生と合流する前に早くダンジョンを攻略しようとしたバカたちが原因」
「うん。最初は慎重だったけど、途中からはザコばかり相手してられないって言い出して、襲ってくる周りの敵を無視して、一気にボスのところまで駆けて行こうとした結果なの」
「そう、気づいた時には手遅れ、加護力が使えなくなっていた。すごく焦った」
「うん、あの時は焦ったね」
そこまで話を聞いたところで二人の顔が少し険しくなっていることに気づき早く話を切り上げることにした。
「な、なるほど……そういうことだったのか、ありがとう」
「うん」
それからは、また二人の後ろを歩き、もう一度休憩を挟んけど、俺たちは如何にもボスの部屋っぽい大きな扉の前に辿り着いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^
やっとボスです。
ちなみに今現在の太郎の状態です。
――――主人公能力――――
【名前】山野木 太郎
【性別】男
【年齢】17歳
【状態】健康
【恩恵】
☆没地神の加護
――適性スキル――
〈軟化制限解除〉
――適性魔法――
〈神紋魔法〉
玉系 コンプリート
槍系 火、水、風、木
爆弾系なし
鞭系 火、水、風、木
特殊系 身体強化、状態回復
――アビリティ――
〈体術D〉〈聞き耳C〉
〈空気〉 〈体力B〉
〈脚力B〉〈持久力B〉
〈筋力強化B〉〈剣術D〉
〈闘気術、未〉




