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順調?

ブックマーク、応援ありがとうございます。


更新遅くなりました。

すみません。

 グルルァアァッ


 俺が目視できる距離にいる加護憑きがまた田中たちの手によって消滅した。

 さすが邪神の手下がいるだけあって襲ってきた加護憑きはすでに二十は超えたと思う。


 それでも確実に一体一体仕留めて行っているからだろうけど、今のところこちらの加護が弱まるという現象は起こっていない。


「ははは……俺たちにかかればこんなもんよ」


「ああ、楽勝だな」


「なんで俺たちはあんなヤツらにビビっていたんだろうな」


「ほんとだな……」


 すでに災悪のダンジョンに入って二時間ほど経つが、田中たちが前衛……いや、前に出過ぎているので前衛とは言えないけど……

 それでもダンジョンを進むペースがかなり早くなった。


 ただ、俺たちが順調に進んでいるからこそ先に救助に向かったという180人あまりの王国騎士たち。結構な大人数だというのに合流はおろか、誰一人見かけることすらできないでいることに不安でならない。


「おい鈴木、今の俺どうだった」


「おお、バッチリ、で俺は……」


「決まってたぜ」


「ほら、見やよ騎士たちが向ける、あの目」


「くくく、おう……」


 ――はあ、また言ってるよ。


 そんな現状だというのに、加護憑きを倒し自信を取り戻した田中たちは、加護憑きを仕留めるたびにメイド騎士や女性騎士に色目を使う。特に自分付きのメイド騎士さんには、後に残ったキレイな石を拾わせ、その拾う姿をニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべて眺めている。ちなみにメイド騎士さんたちはミニスカートっぽい騎士服の上に騎士の鎧を着ている。

 だから、どこを見ているのかは男なら誰だってわかるだろう……たぶん。


 けしからん……じゃなくて、呆れてものも言えないとは、まさにこんな時に使うのだなとしみじみ思う。


 まあ、調子に乗って適性魔法をバンバン使ってくれているので俺は新たに火と水と風の鞭陣、木の槍陣を覚えることができてはいるんだけど……


 ――……ん?


 そんなことを考えていると、前にいる田中たちが突然立ち止まりきょろきょろと辺りを見渡したかと思えば、俺たちのほうに振り向いた。


 ――何かあったのか?


 けど、生憎俺と田中たちとはは距離が離れているので――


「田中、どうした……ぁ」


 俺は慌てて駆け寄ろうとした。けど、すぐにその必要はなくなった。


「どうかなされましたか、タナカ殿?」


 俺と同様、ほぼ何もしていない王国騎士、この隊の隊長ダンテさん。王国騎士たちは中衛の位置、つまり俺たちの前にいる。


 そのダンテさんが何事かと心配して素早く駆け寄ってくれた。


「ん? ああ……」


 田中もその騎士に話し始めたので、そのままダンテさんに任せて、俺は耳だけを傾けていた。


「いや、先生たちとは、たぶんこの辺りで()()()()はずなんだけど……」


 しれっと自分の都合のいいように言う田中に腹が立ったが、この後衛の位置ではっきりとその会話が拾えているのはたぶん聞き耳アビリティのある俺くらいだろう。


 現に真っ先に異と唱えそうなマルスさんも何事かといったような顔を向けているだけで、今は後方を警戒している。


 だから俺も聞こえてはいるけど、田中たちの会話にわざわざ口を挟むこともできず、ただ黙って耳を傾け続けた。


「何か目印になるようなものでもありましたか?」


「いや、それはないんだけど……ただ、少し傾斜になっていた、この辺りだと思ったんだ……」


 ――傾斜?


 見れば、田中が立っている辺りからゆるやかな下り坂になっている。必死に逃げてきたと言った割にはよく覚えているもんだと感心するが、どうやら鈴木は違う意見らしい。


「そうか? ……俺は逆、ゆるやかな上り坂に入った辺りだったと思うから、もう少し先だと思う。なあ、川田と小谷はどうだ?」


「うーん。わりい。俺はよく覚えてない……小谷は……?」


「俺は……鈴木と一緒だ。もう少し先だったと思う……加護が切れてて、上り坂がキツかったから」


「……そうか……うーん。なんかそんな気もしてきたな。オッケーオッケー。じゃあもう少し先に行こう……そこまで行けば何か先生の手がかりになるようなものがあるかもしれないしな」


 その後もダンテさんと田中たちが、少し会話をしているようだったが、田中たちは巻き込んだ小西さんと大野さんの名前を口にすることはなかった。


 ――こいつら、小西さんと、大野さんのことは頭にないのか……


 ――――

 ――


 ゆるやかな下り坂でも加護憑きとコバルトは現れるも、田中たちがあっさりと倒し、下りはじめて三十分くらい経った頃に、今度は鈴木が立ち止まった。


「田中。ここだ、この辺りだ……」


「うん。俺もそう思う」


 鈴木が口を開くと、小谷がすぐに賛同する。


「おお、そうだそうだ。こんな感じだった……」


 田中も思い出したかのように肯定すると、俺たちのほうに振り返り大きな声を出した。


「みんな悪いけど、たぶん先生たちとはぐれたのはこの辺りなんだ、ここからは手がかりがないか探しながら進むから少しペースを落とすぞ」


「た、タナカ殿っ」


 ダンジョン内で大きな声を出した田中にダンテさんが慌てて苦言を呈している。


 田中は一瞬ムッとした顔を見せていたが、皆の視線が一斉に向けられていたことに気付き、慌てて言いわけがましいことを口にして、ダンテさんから逃げるようにそのまま鈴木たちに合流して周りを見ながら進み始めた。


「タナカ殿……」


 そんな姿を見たダンテさんも、しばらくは何かいいた気だったが、首をふり気持ちを切り替えているように見えた。


 そのあとは他の騎士たちに周りを警戒しつつ手がかりを探すよう指示出している。


 ――俺も探すか……


 そうは言っても、倒した魔物を一定時間放置しているとダンジョンに吸い込まれるように消えてしまうことを考えると、あまり期待はできない。


 これが魔物だけに限定されているのならまだ可能性もあるんだけど……


 期待はできないがそれでも探さないという選択肢はない。


 何か手がかりなるようなものであればと俺も辺りを見渡しながらも、皆から遅れないよう気をつけて前に進む。


 すると、俺の背後から――


「勇者様、こちらに来てもらえませんか?」


 お姉さんに声をかけられ、見れば壁際のほうで手招きをしている。


「お姉さん、何か見つかったのですか?」


 基本的に用があるとお姉さんが俺のほうに近づいてくるので、俺は不思議に思いつつ、お姉さんのいる壁際まで行く。するとお姉さんが何かを差し出してきた。


「勇者様、これを」


「これは!?」


 そのお姉さんの手には大野さんが髪を纏めるためによく使っていたヘアゴムがあった。


 生意気そうな顔をしたヒヨコの小さなマスコットがついていた個性的なヘアゴム。大野さんはこれを左右につけていた。これはそのひとつに違いない。


「これは大野さんのもので間違いないと思います」


「やはり、ではこの光は……」


「え?」


 そう言ってお姉さんが指した壁をよく見れば、壁から光が漏れていことに気がついた。ほんとうに僅か光。その光がトビラを縁取ったかのように壁の隙間から漏れている。


「トビラ? がある……」


 それもそのはずだ。このダンジョンは比較的明るい。しかも、その明るさは入ってからずっと一定しているため、松明など光を灯す必要もなかった。


 そして、今現在、ダンジョン内の明るさより明るいものといえば――


「えっ! じゃあ、この光はオーラ?」


「おそらく」


 俺ははやる気持ちを抑えつつそのトビラの取っ手がありそうな位置を調べてみた。


 ――!?


 するとすぐに僅かな凹みを見つけた。


「お姉さん」


「はい」


 お姉さんがこくりと頷くのを確認した俺が、そのトビラを開けようと手を伸ばしたその時――


 ドンッ


「山野木邪魔だ」


「おわっ」


 突然、横から誰かに押され俺はバランスを崩し、横にいたお姉さんのほうに倒れ込んだ。


「勇者様、大丈夫ですか」


 お姉さんは俺をしっかりと受け止めてくれたが、騎士の鎧を着ているのでお姉さんの柔らかさは感じない。


「あ……」


 けど、いい香りを漂わせつつ、そのキレイな顔を覗かせてくる。


 ――ち、近い、近い……


 俺は慌ててお姉さんから離れてお礼を言った。


「は、はい。お姉さんのおかげで大丈夫です。ありがとうございます。それでトビラは……」


 そして俺が再びトビラのほうに目を向けた時には――


「「「「先生っ」」」」


 田中たちがそのトビラを開け部屋へと入り、歓喜の声を上げていた。





最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

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