表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/43

小ブリンだって

ブックマーク、評価ありがとうございます。



 俺が、村長夫妻を羨ましく思いつつドアのほうをずっと眺めていると――


「それで、山野木殿」


「はいぃ」


 突然イケメン騎士に呼ばれた。油断していたので上ずった声で返事してしまったけど、心臓飛び出るかと思った。


「ふふ……」


 所々どころからくすくすと笑い声が聞こえる。たぶん俺の顔は真っ赤になっているだろう。


「んっ、んん……それでジュリアに聞いたのですが、今回襲ってきたゴブリンの中に、おかしなゴブリンがいたというのは本当ですか?」


 そう言ったイケメン騎士がメイドのお姉さんに視線を向ける。


 ――ああ……お姉さんが先に報告をしているのか……


「えっと、はい。赤いオーラを纏ったヤツですよね? そいつらなら二体いました」


 そこで室内がざわついた。


「やはり……本当でしたか。我々はそいつらを加護憑きと呼ぶことにしたのですが、そうですか二体も…… それで、その加護憑きは山野木殿が討伐を?」


「え、いや、違います。俺が一体、ジュリアさんが一体です」


 そこでまた室内がざわついたけど――


「それは、勇者様の力添えがあったからこそです。私の力では……」


 隣のお姉さんが否定しようとする。


「いやいや、お姉さんは十分凄かったです。俺はあんなに上手く剣を振ることも捌くこともできませんし」


「ですが……」


 尚も食い下がろうするお姉さんを遮るように割り込んできたイケメン騎士が、神妙な面持ちで俺を見てくる。


「失礼……実はですね山野木殿」


 ――――

 ――


「……ということです」


 なんと驚いたことに、討伐に向かった先生と赤の騎士団のほうでも、オークとゴブリン五百体ほどの群れの中に、赤いオーラを纏った加護憑きのオークが二体、ゴブリンが二体の計四体いたらしい。


 ちょうど俺がゴブリンを相手にしていた時間らしい、だから村のほうから爆発音(俺の神紋魔法)が聞こえてきてもすぐには駆けつけることができなかったと、バツが悪そうな顔をした先生がすまないと謝ってきた。


 ――まあ、あんなやばい奴ら四体も残して先生だけ帰ってくるなんてできないだろうしね。


 俺はそう納得しつつも、こんなことがこれから先、もっとあるかと考えたら不安でたまらなくなった。


 ――これからは、体力だけじゃなく自衛もできなきゃやっていけないのか……ああ、考えただけで頭が痛くなってきた。


 けど、よく死者が出ることなく四体もの加護憑き魔物と五百体ものオークやゴブリンの群れを倒せたものだと感心する。


 それで、その加護憑き魔物の四体はというと……


 オークの二体は、二体同時に先生に襲いかかってきたから、そのまま先生が相手をすることになったそうだけど、なぜか近寄ってきたオークの赤いオーラは消えてしまったそうだ。


 ――んーと、つまり、オーク二体の加護力よりも先生一人の加護力のほうが強かったってことなんだろうか?


 それとともに、先生自身にも突如として現れていたオーラが、小さくなり焦ったらしいけど、身体が少し鈍くなる程度ですみ問題なく討伐することができたらしいけど――


「いやぁ、あの時のコウサカ殿ときたら……」


「ああ……」


 先生が黄金のオーラを纏って戦う姿が戦女神のようだったと、興奮して騒ぎ始めた騎士たちを見て、思わずため息が溢れた。


 ――はぁ……


「どうかなされましたか? 勇者様」


「え、いやなんでもないんです」


 隣に座るメイドのお姉さんがこちらに視線を向けてきたけど、これはどうしようもないことなんだ。


 だって、俺は黄土色のオーラなのに先生は黄金色のオーラ。これって、絶対みなのオーラも黄金色だろう。加護憑きと対峙したらバレるんじゃないかと思ってしまったのだ。


 ――ああ、もう……


 内心、気がかりでしょうがなかったけど、今は先生が話しているので、とりあえず相槌を打っておく。


「だがな、そのオークって魔物が……」


 途中から悔しそうに語る先生が言うには、オークって、二足立で大きくブタのような顔をしているらしいけど、体毛がふさふさなのに脂で湿っていて斬りにいった剣が滑る。ようやく斬れたかと思えば、皮膚の表面は硬く斬ったあとも脂肪が相当分厚かったらしい。


 俺はマンガやゲームでみていたオークの姿がいくつか脳裏に過ぎるけど、先生の話しぶりからして、それはどれも当てはまらなかった。


 想像とちょっと違うオークにちょっとだけ興味が湧いたけど、それだけだ。好き好んで会いたいとは思わない。魔物だし……


 だから先生も未知の生物魔物のオーク相手に結構な時間がかかってしまったと自分の未熟さを悔いているけど、俺は逆に、先生が普通にオークを討伐したことに驚き、剣先すらゴブリンに向けることができなかった自分が情けなくなった。


「それから……」


 加護憑きゴブリン二体のほうはというと、予想通り、そのゴブリンも先生のほうへと向かってきたらしいんだけど、そこは騎士団の精鋭(隊長クラス)たち。ゴブリン一体につき十人ずつの計二十人で行手を遮り、先生から上手く引き離したそうだ。


 さすがは騎士団の精鋭、と言いたいところだけど、実際は、たった二体のゴブリンなのに、精鋭騎士たちは全く歯が立たず、防戦一方だったらしい。


 このままでは死者も出てしまうという状況まで追い込まれていたそうなんだけど、そこは教師をしていて視野の広い先生。すぐに気づいて身体強化の魔法を騎士たちに施したそうだ。オーク二体を相手にしながら。


 ――先生、凄すぎ。


 それからはウソのように状況が一変し、強化された精鋭騎士たちによってあっさり討伐できたそうだ。


「山野木のおかげだ」


 先生が身体強化魔法の検証をしていてよかったと、普段からと褒められる機会のない俺を褒めてくれた。褒められるとすぐに気分の良くなる単純な俺。だけど――


「次にこれなのですが……」


 気分が良いところに水をさして平気なのがイケメン騎士。そのイケメン騎士が懐から取り出して見せてくれたのは四つの綺麗な石だった。


「これは、加護憑きを倒したあとに残っていたものです」


「へぇ……ここからでもキラキラして見える。綺麗な石ですね」


 俺がもっと近くで見たいと思ったところで――


「勇者様」


「はい」


 ――お、お姉さん。どこに手を入れて……


 メイドのお姉さんも同じようにおっぱ、じゃなくて……懐から二つの綺麗な石を取り出した。


 それを俺に手渡してくれるけど微妙に温かい。


 俺が、両手の平に転がる綺麗な石を眺めひとり悶々としていると――


「これは、あのゴブリンを倒したあとに落ちていたものです」


「そ、そうなんだ」


 ――あの時は、すぐに先生から首根っこ掴まれたから気づかなかったよ。


 当たり前だが、この世界の魔物も、倒したところで普通に死骸が残るらしい。


 ――ゲームじゃないもんな……


 けど、この加護憑きだけは泡のように消え、そのあとにこの綺麗な石だけが残った。


 これはとても不思議なことで、詳しく調べたいからしばらく預かりたいとのことだった。なんでも魔導課に預けて調べてもらうらしい。


「わかりました。それでいいですよ」


「ありがとうございます。それで、最後にもう一度確認なのですが、山野木殿が倒された、また村に襲ってきたのは小ブリンだったのではありませんか?」


「小ブリン?」


 俺は意味がわからず眉間にシワを寄せただけだけど、隣のメイドのお姉さんは珍しく少し強い口調で言葉を発した。


「そんなはずありません。あれは間違いなくゴブリンです」


 あとになってメイドのお姉さんに聞いたんだけど、小ブリンというのはゴブリンに良く似た魔物だけど人は一切襲わない、というか襲えるほど力のない魔物らしく村人でも簡単に討伐できるくらいのレベル。


 普段は人を見れば逃げ、自分よりも小さいな獣や川魚を取って生存し、無害にも等しい魔物らしい。


「ジュリア。いいかい。君がここの誰よりも腕が立つことはわかっているが、それでも我々十人を同時に相手して勝てるほどではないだろう?」


 ――え、お姉さんってそんなに強いの。ああ、そうだよ。あのゴブリンの相手をするときも、白い変な膜を纏ったりもしてたし、絶対あれは能力アップの何かに違いない。よし……


「それは……はい」


「では、ジュリアが相手した加護憑きゴブリンは赤いオーラが消えていたのかい?」


「……いいえ」


 そこで、メイドのお姉さんは俯いたけど、ゴブリンと小ブリンの違いなんて分からない俺は、別のことで頭がいっぱいだった。


「理解してくれたようで嬉しいよ。私もこの点だけがずっと引っかかっていてね。

 よく考えれば、オークやゴブリンも加護憑きに誘導され、操られているような感じだった」


 そこでイケメン騎士は他の騎士たちに顔を向けていたけど、ほかの騎士たちは頷いて応えている。

 つまり、他の騎士たちもそう感じたということらしい。


「だから、普段は人に対して無害な小ブリンも同じように加護憑きに誘導され、操られて村を襲ってきたのだろう」


「くっ……」


 そこで話は終わりお開きとなった。


 表情のないお姉さんが、珍しく悔しそうに見えたけど、俺は、今後の自衛のためにも、お姉さんにどう教えを請おうか、思い悩むのだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます^ ^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ