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古今無双の傭兵が異世界へと行っちゃった話  作者: やまだ和興
クレナで生活する
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第184話―ジゲンとたまとギルドへ向かう―

 トウショウの里に帰り、ジゲンとたまを呼ぼうと、いったん屋敷まで向かった。すると、既に入り口の所に二人が立っているのが見える。

 たまは昨日買ってやった、髪飾りと綺麗な着物を着て、おめかししていた。

 俺に気付くと、たまは手を振って出迎えてくれる。


「あ、おじちゃんだ~! おじいちゃんの言った通り、早かったねえ~」

「ああ、ただいま、爺さん、たま……っと、それが例のカラーコンタクトというやつか?」

「うむ。どうじゃ? これならバレないじゃろう?」


 ジゲンは顔がよく見えるように、前髪を上げた。どちらも、黒目になっている。

 ただ、一応ということで、少しばかり化粧と、口元には付け髭を付けたり、眼鏡をかけたりして変装していた。ああ、これなら、誰もこいつをジロウとは思うまい。


「問題ないだろう……では、行くか」

「うん! たのしみ~!」


 アヤメに会えることを心待ちにしているたまも、久々に顔が見られると思っているジゲンも嬉しそうに頷き、花街を目指す。


 道を歩いていると、ジゲンが今日の依頼はどうだったかと聞いてくる。昨晩、あれだけ話したからな。気になるらしい。

 俺は、先ほどまで、行っていたデスニアの湖が毒に侵されていたのを、浄化した話をする。話を聞いたジゲンは何とも微妙そうな表情をした。


「……ふむ。ムソウ殿の取り組む依頼には、何かあるかも知れないと期待しておったが、そういうのは嫌じゃの……」

「どういうのでも嫌だよ、俺は」

「まあ、そうじゃろうの。じゃが、今回のは、ほとんど人災みたいなものじゃな。魔物を退治しても、周辺の住民たちが、困る結果になれば意味は無いからのお……」


 ジゲンの言う通りだ。魔物の被害が出ているからと言って、魔物を退治することだけを考えてはだめだ。前の状態に戻すということを考えなくてはならない。

 人間の勝手で、付近の生態系をいじっても駄目だしな。


 ……だが、そうなると、今まで俺がやってきたことも、何か駄目な気がする。魔獣の大山は浄化したし……まあ、いいや。あそこも元々は綺麗な山だったと聞くからな。その状態に戻っただけだ。

 少なくとも、綺麗だったものを汚くすることだけは駄目だな。今回の場合だと、あの村の人たちは困ることになるし、何より、あの美味い酒を呑めなくなる。湖を浄化したことは良かったことなのだろうと、静かに思った。


「まあ、とにかく、今回の依頼は初めての失敗となったわけだな。後でギルドに失敗した違約金を払わねえとな……」

「ふむ、それは腑に落ちん話じゃのお……」

「いや、大したことねえよ。あの酒が飲めなくなるよりはマシだ」


 ジゲンの気遣いにニカっと笑ってそう答えると、ジゲンは目を見開き、そうかと頷いて、微笑む。


「ムソウ殿らしいの。報酬よりも、酒か……」

「俺の生きがいだからな。無くては困る」

「じゃあ、今日も買ってあげる~!」


 たまもニコリと笑って、そう言った。よしよし、今日もあの酒が呑めるんだな。今日だけじゃなく、これからも呑めるんだ。なんだかんだ言って、今日の依頼は俺的には成功だなと、ほくそ笑んだ。


 さて、しばらく進んでいくと、花街への門が見えてくる。俺達は立ち止まり、ジゲンはたまをおんぶした。


「よいしょ……む? たま、少し大きくなったかの?」

「ほんと~!? やったね!」


 なるほど、この年齢くらいだと、重くなったと言っても女の子は逆に自らの成長をまだ、喜ぶようだな。これがあと五、六年ほど経ったら、不貞腐れてくるからな……。


 取りあえず、ジゲンとたまの準備が出来たことを確認すると、たまにいくつか約束事を伝えておく。


 まず、俺が良いと言うまで、おしゃべりは禁止。隠蔽スキルで隠れても、声までは隠せないからな。門を抜けるまでは、駄目だ。

 次に花街についたら、きょろきょろするのも禁止だ。見せたくないものを見せてしまうことになる。たまは少し不機嫌そうな顔をしたが、渋々頷いてくれた。


「よし、じゃあ隠れて良いぞ」

「了解じゃ。たま、しっかりつかまっておくのじゃよ」

「は~い!」


 たまが大きく返事をすると、ジゲンはスキルを使用する。前と同じく、足元からスーッとジゲンとたまの姿が見えなくなった。


「……ばっちりだな。じゃあ、ジゲンもそのまま門を抜けてくれ。俺が良いと言うまではその状態を維持だ」


 何も無い所に、はたから見たら独り言を言うというのはやはり恥ずかしいものだな。


 そして、俺は門のそばまで来る。門番たちはいつも通り、俺の顔を見ると、ジロっと睨んだ。


「チッ……いつもの野郎か……」

「さっさと始めろ……」


 などと言葉を交わし、門番たちは俺の体を調べた。今晩、ケリスの宴会があるだけに、いつもより入念な気がする。

 そして、ある程度調べが終わったら、門の中に入れてくれた。


「騒ぎは起こすなよ。今日は特にな……」


 分かってる。そもそもてめえらが何もしてこなけりゃ、俺も何もしねえんだよ。


 まあ、いいや。俺は門をくぐり、ある程度進んでいく。そして、辺りの気配を探り、ジゲンのものと、たまの気配がそばにいることを確認し、そちらに顔を向ける。


「良いぞ、スキルを解いても。今回も大成功のようだな」


 そう言うと、先ほどとは逆に足元からジゲンの姿が現れ、二人の姿を目視できるようになった。ジゲンはたまを下すと、やれやれと頭を掻いている。


「ふむ……毎度、このやり取りをする度に本当に自分が消えているのか、分からなくなるのお……」


 まあ、これが出来るのは俺ぐらいと言って、ジゲンの肩を叩く。しかし、ジゲンもツバキと同様に、俺の気配を探る能力に興味を示し始めていた。時間があったら教えると伝えると、ジゲンはニコリと笑い、ぜひ頼むと言ってきた。


 たまの方は、花街の景色をキラキラとした目で眺めていた。派手な装飾の妓楼、行き交う冒険者や、貴族たち、そして妓女。どれも、たまにとっては新鮮なもののようだ。


「わぁ~……きれいで、にぎやかなところだね~……」

「表向きはな……」


 たまと違い、この街の裏の部分も知る俺とジゲンは、率直なたまの感想を聞き、思わず苦笑いする。

 パッと見は綺麗で活気のある街なんだよなあ。ただ、ここの、そこかしこに、アヤメの頭を悩ませるものがちりばめられていると思うと、むしゃくしゃしてしょうがない。

 日々、この街で仕事をしているナズナには申し訳ないけどな……。そう思いながら、花街を進んでいく。


 やはり、アヤメと話したように、道のそこらで、まぐわう男女の姿が見受けられる。ジゲンはたまの手を取りながら、視線がそちらに行かないように、袖で顔を覆ったりしながら、ため息をついている。


「ふむ……ダイアン殿やアザミ殿たちを連れてきた時と比べても、この街は何かおかしなことになっておるのお……」

「爺さんもそう思うか。最近になって、俺も違和感を抱いている」


 ダイアン達を拾った、二か月ほど前はここまでひどくはなかった。急にこんな状態になっていることに俺も驚いている。アヤメもどうにかしたいとのことだったが、こればかりはどうしようも出来ないからな。俺も目を瞑っているが……。


 そうやって花街を進んでいくと、高天ヶ原が見えてくる。たまは、建物を見上げながら、口をあんぐりと開けていた。温泉街にもここまでデカい建物は無かったからな。

 それにぶら下げられた多くの赤ちょうちんに、花の装飾。やはり、初めて見たものはこういう反応になるらしい。

 そして、今晩宴会をするためか、妓楼の前には、闘宴会の長、バークと取り巻き二人が警護をするように、仁王立ちで立っていた。


 あいつがここに居るってことは、既に中にはケリスも居るってことか? ということはギルドには居ないか……。

 ジゲンを連れていくことに関し、鉢合わせになったら嫌だなと思っていたが、杞憂らしい。逆に、ツバキたちが鉢合わせになっていないか心配になるがな……。その辺は四天女やナズナが何とかしてくれているだろうと、思っている。


 ジゲンはバークの姿を確認すると、ポツリと呟く。


「あれが、闘宴会の長か……まあ、シロウよりは弱いかの……」


 ジゲンはそう言って、フッと笑う。正直、俺もそう思っている。魔刀を手にしたシロウは俺でも大した者だと思うほどだった。

 以前ここで聞いた、闘宴会が、仮にジロウ一家とショウブ一家に勝負を挑んできても、返り討ちに遭うというのは嘘ではないのだろう。バーク自体は、俺も認めるほど、弱いと思う。あいつらが、デカい顔をしているのは、ほとんど、貴族たちのおかげなんだろうなあと、ジゲンの言葉に頷いた。


「爺さんが言うのなら間違いないな。仮に闘宴会がこの街の覇権を手にしようとしても問題ないと思っている」

「じゃな。まあ、その時は儂も出るからの。闘宴会ごとき、敵ではない」


 ……一瞬だけ、ジゲンがジロウに戻った瞬間が垣間見えた。ジゲンならば、一つの自警団くらい、一人で潰してしまうだろうからな。


 さて、今日は妓女たちが、道行く者達に窓から手を振るということはしないようだ。ここに居ても仕方がない。高天ヶ原の綺麗な装飾と店構えにうっとりとしている、たまの手を引き、その場を後にした。


 花街を抜けて、上街の門が見えてくると、たまは立ち止まり、ジゲンの背中に上ろうとする。だが、ここは恐らく大丈夫だろうと思い、今回はスキルを使わずに普通に門を抜けると二人に伝え、そのまま、門に向かおうとした。


 だが、そこでジゲンの足が止まる。ジゲンは向かう先を見て、少しばかり遠い目をしていた。よく見ると、今日は、門にショウブとナズナの姿があった。

 ナズナは、今日はツバキを連れていないみたいだな。ショウブがここに居ることはしょっちゅうあるが、ナズナまで居るとは、珍しいな。

 ジゲンは二人の姿を感慨深げに眺めていた。


「……スキル、使うか?」

「……いや、このままで良い。どうせアヤメにも会うのじゃからの……」


 ジゲンはそう言って、ニコリと笑い、たまと手をつないで、門の方へと歩き出した。姿を偽っているとは言え、ここでジゲンの正体がバレるという可能性もある。

 だが、ジゲンは久しぶりに見るショウブとナズナに、面と向かって、会うらしい。

 俺は何も言わず、ジゲンを連れて、門のそばまで行った。


 すると、話し込んでいた二人は俺達に気付く。


「あ、ムソウさん……お久しぶりです」


 ナズナには、本当にあの宴会以来会っていない。久しぶりに顔を合わせたということで、ナズナは俺に笑って頭を下げる。


「おう、久しぶりだな。何かあったか?」

「今日はケリス卿の宴会じゃからの。ここからも貴族たちが行くことになる。その時の警護の打ち合わせと参加者の確認をの……」


 俺の問いに、ショウブが答える。今晩のケリスの宴会には、今ギルドに宿泊している、ケリスが呼んだ冒険者たちと、上街の貴族たちも参加する。ここからの護衛はショウブ一家で行うらしい。そのための打ち合わせを行っているようだ。


「大変だな、そりゃ……」

「まあの。じゃが、仕事じゃからな。アヤメの顔を潰すわけにもいかんし、そこはきちんとしておかなくてはの」


 ショウブは胸を張って、そう言った。貴族たちに何か起これば、アヤメの責任になるというわけか。

 なんともやるせない話だが、ショウブたちに任せれば何とかなるだろうなと、俺は安心している。


「で、今はケリスの野郎は何してんだ? 高天ヶ原で準備か?」

「はい。ですから、ギルドには安心して行けますよ」

「まあ、それは良いんだが、ツバキの方は?」

「ツバキさんは、私が戻るまで、リンネちゃんと自室で待機ということになっておりますので、ご心配はありません。

 宴会時も、なるべく表に出させないようにいたしますので、ご安心ください」


 ナズナは、いつものようにツバキを外に連れ出すと、多くの人間の目に触れると考え、自室で待機としたらしい。それなら、今も高天ヶ原でケリスと鉢合わせということにならないなと安心できるな。


「分かった……ありがとな、ナズナ。ツバキとリンネのこと、長く面倒見てもらって」


 俺は今までの感謝の言葉を、ナズナに告げた。すると、ナズナはフッと微笑む。


「いえいえ、お二人にはいつもお世話になっておりますので、これくらいは当然です。ただ、それも、あと少しと考えると寂しいような気もしますがね……」


 ナズナは少し寂しそうな顔をする。昨日アヤメに聞いた限りでは、花街の現状を鑑みて、ツバキとリンネが戻ってくるのを早くしたとのこと。もう少し長く居てほしかったなと言って、ナズナは落ち込む。

 ただ、こればかりは、俺も譲る気はない。申し訳ないと思いつつ、その予定通り、ツバキとリンネは返してもらうつもりだ。


「まあ、これからも二人を連れて遊びに行くことは出来る。それに、あと四か月も経てば、俺の所の奴らも花街で遊ぶことを許してやるから、その時はまた、よろしくな」


 そう言うと、ナズナは表情を明るくさせて、ニコッと笑う。


「かしこまりました。その時は精いっぱい励みますね!」


 ……何に励むんだよ。俺の所の奴らを骨抜きにはしないでくれよ、とナズナの言葉に苦笑いして頷く。


 そうしていると、ショウブが口を開く。


「ところで、ムソウ殿。この二人は誰じゃ?」


 ショウブはジゲンとたまを指さして聞いてくる。どう説明したらいいのだろうかと悩んでいると、たまがぱっと手を上げる。


「はいっ! おじちゃんのおうちでお世話になっているたまです!こっちはおじいちゃん!」


 たまはニパっと笑い、自分とジゲンの紹介を始める。

 元気だな~……。初めて会う人にも物おじしないところは、たまらしくて可愛らしい。

 そして、たまに続いて、ジゲンも口を開く。


「お初にお目にかかる。儂は、ジゲンと申す。縁あってムソウ殿の屋敷で、たまと奉公人として働いておる。今日は領主殿にお目通りさせていただきたく、参上つかまつった次第じゃ」


 ジゲンは二人に頭を下げながら、そう言った。すると、ショウブが目を見開きジゲンを見つめる……気づいたか?


「……ほう、そなたがジゲンか……確か、昔のジロウやサネマサ殿を知っているとムソウ殿から聞いたの……」


 ショウブに続き、ナズナもジーっとジゲンを見ている。ジゲンはショウブの言葉に頷いた。


「うむ……知っておるが、どうかしたかの? ショウブ殿にナズナ殿」

「あの……ジゲンさん……ジロウさんが、今どこに居るか、ご存じではありませんか?」


 ナズナはおずおずと、ジロウのことをジゲンに尋ねた。どうやら二人はジゲンの正体に気付いていないらしい。ジゲンの答えを心待ちにしているように、ショウブとナズナは、ジゲンの顔をまっすぐ見る。すると、ジゲンは首を横に振った。


「知らぬの。行方知れずと知ったのも、ここ最近の話じゃ。それに、儂とジロウはそこまで深い関係ではないからの」


 ジゲンがそう言うと、二人はそうか、と落ち込む。お前は本人だろうが、と野暮な突っ込みはしない。俺は黙って、たまと手をつなぎながら、三人のやり取りを眺めていた。


「そうか……ジゲン殿も知らぬか……」

「申し訳ないのう……じゃが、一つ聞きたいのじゃが、二人はどうしても、ジロウに会いたいのかの?」


 ジゲンの問いかけに、二人は何故か暗い表情をする。また会いたいと即答するかと思っていたが、違ったらしい。そう思っていると、ナズナから口を開く


「会いたい……気持ち半分、どうしよう、と言ったところでしょうか」

「ん? 何故じゃ?」

「私はジロウさんに育てられました。そして、ジロウさんへの恩返しとして、ここ、トウショウの里を護っていきたいと思うようになり、アヤメさんやショウブさん、そして、シロウと共に、ここで妓女として花街を管理する立場になりました……ですが……」

「結局のところ、ケリスの横行は止められず、町は分けられ、貴族たちをのさばらせるという結果になってしまっておる。これでは、ジロウに顔を合わせるわけにはいかんの……」

「私も、ジロウさんの心配をよそに、妓女になってしまいましたし……」


 そう言って、二人はうつむく。ジロウに任されたトウショウの里を貴族たちに侵されたことをやはり、今でも苦に思っているようだ。それは自分たちの力の無さを痛感するいい結果となっているらしい。

 シロウ同様、自分たちを育ててくれたジロウに、それは申し訳が無いということらしい。

 ナズナに至っては、普通に、良い所へ嫁ぎ、平和に暮らしていくというジロウの考えを振り切って、アヤメたちと共に、トウショウの里を護るという決意だったが、やはり、そのまま高天ヶ原で妓女になったことを、子としては、親に対してひどく申し訳ないと思っているようだ。


 ジゲンは二人の話を聞き、目を見開いて、優しく微笑んだ。


「……まあ、良いのではないか?」


 ジゲンの言葉に、二人は顔を上げて、不思議そうな顔をする。


「良い……とは、どういう意味ですか?」

「ショウブ殿も、ナズナ殿も、好きで選んだ生き方じゃろ? 結果がどうなったにせよ、親としては、立派にこの街で生きているということ自体が嬉しいものじゃと思うがの……」

「ふん……他人からは何とでも言えるの」


 ジゲンの励ましに不貞腐れた態度で、キッと睨み返す、ショウブ。だが、ジゲンは物おじせず、更に優しく口を開く。


「そうじゃの……儂は他人じゃ。じゃが、他人の儂から見たこの街……特に下街は以前と変わらぬような感じじゃの。これはシロウ殿の力が大きいのかの……」


 ジゲンは最後に、ショウブを挑発するように、シロウの名を口にして、ニコッと笑う。すると、ショウブが声を荒げる。


「何じゃと!? お主は、妾やナズナがシロウに負けておると申したいのか!?」

「そんなことは言っておらんがの……じゃが、シロウ殿の態度は、街を治める自警団の長としての自信に満ち溢れておったがのう……」


 ジゲンは更に、ショウブの前でシロウをほめたたえる。子供の時から、シロウのことを下に見ていたショウブは、顔を真っ赤にしていく。そして、なおもジゲンの挑発は続く。


「……じゃが、それに比べると、ショウブ殿は先ほど、自分で言っていたように、自信が無さそうというか、頼りないように見えるのう……」


 ……おいおい、そこまで言って良いのか? そんなこと言ったらショウブが怒――。


 いや、もう遅いか。ショウブは顔を真っ赤にして、プルプルと震えている。


「嘘を申すでない! あのシロウがそんな態度のわけないじゃろう! あの泣き虫が、妾を差し置いて、そんなこと出来ておるわけないじゃろう!」

「ちょ、ちょっと、ショウブさん、少し落ち着――」

「ナズナは黙っておれ!」


 ショウブを落ち着かせようとする、ナズナの制止を振り払い、一喝するショウブ。ナズナは、ため息をついて、一歩下がった。

 怖いぞ、ショウブ。俺と手をつないでいるたまも少し震えて、怯えた表情になっている。

 だが、ショウブはなおも捲し立てるように、ジゲンに口を開く。


「大体のう! 妾に出来ないことはシロウに出来るはずなど無いのじゃ!」

「じゃが、実際出来ておるのじゃから仕方あるまい……?」

「何じゃと!? では、妾も出来るの! シロウに出来るのじゃからの!」

「ほう……それはつまり、この街は任せてくれと言っておるように聞こえるが、そう受け取っても良いのかの?」

「当然じゃ! シロウに出来て、妾に出来ないわけが無いからの! お主も下街から上街に住みたいと思うくらいにして見せようかの!」

「ほっほ、それは楽しみじゃの……では、安心して、それを待とうとするかの……」

「うむ! 妾に何でも任せるが良いわ!」


 ……いつの間にか、怒ったような感じではなく、胸を張って、笑顔になっているショウブ。自らを指さし、ジゲンに任せてくれと言う、ショウブを見て、俺も、たまも、近くに居るナズナまでも唖然としていた。

 そんな中、ジゲンだけが、ショウブに微笑んでいる。


「……その意気じゃ。ショウブ殿がそう思ってショウブ一家の長を務めていると知れば、ジロウも安心するじゃろうな。

 胸を張って、美しい女性になったところをジロウに見せつけてやれば良い」

「うむ! 大きく、立派に、威厳ある美しい女性になった姿をジロウにも見せてやらんとの!」


 二人の言葉に吹き出しそうになる。ショウブが「美しい女性」……どう、ひいき目に見ても、口の悪そうな、ガキそのものじゃねえか?

 だが、そんな野暮な突っ込みもしない。経緯はどうあれ、何となく丸く収まったなと思いながら、笑いをこらえていた。


 すると、口をぽかんと開けているナズナに、ジゲンは振り向き、口を開く。


「……ナズナ殿もじゃ。お主が妓女になったおかげで、仲間たちが無事じゃと、ムソウ殿も語っておった。結果的にお主が人のためになっておると知れば、今何をしていようとも、親としては嬉しいものじゃと儂は思うぞ」


 ジゲンの言葉に、ナズナはまだ、自信が無さそうにしている。


「そうで……しょうか……?」

「そうじゃとも。何時の世も、子というのは親の考えと違った道を選ぶものじゃ。じゃが、それは決して間違いではない。結果的に、子供が幸せなら、親というのは満足するものじゃな。

 それに、ナズナ殿は、高天ヶ原の妓女たちや、男衆を護っておるのではないのかの? 妓女たちも、トウショウの里に住む者達に違いはない。お主も立派に勤めを果たしておると思うがの……?」

「ですが、やはり妓女になったことは、ジロウさんに申し訳ないなと……」

「ほっほ、では、ジロウが戻ってきたら高天ヶ原で一杯、酌してやると良い。ショウブ殿同様、ジロウの思い通り、美しく、元気に過ごしている娘からの一杯というのは、何にも勝り、旨いものじゃと思うがの?」


 ジゲンはそう言って、ニコッとナズナに微笑む。

 ……すげえな、ジゲン。話の流れで、高天ヶ原で四天女と謳われているナズナを指名した。と、凄くどうでもいいことを考えてしまった。

 ナズナはジゲンの言葉を聞き、ハッとした様子になる。そして、コクっと頷いた。


「そうですね……それも、良いかもしれませんね……」


 そう呟くと、ナズナの表情は明るくなる。

 落ち込んでいたナズナも、ジゲンの言葉により、自信を取り戻したようだ。ナズナは微笑みながら、ジゲンに口を開く。


「ありがとうございます、ジゲンさん。おかげで、ジロウさんと再会するときの楽しみが出来ました。良かったら、今度遊びにいらしてくださいね」

「ほっほ、気が向いたらの」


 ジゲンはナズナの言葉ににこやかに頷く。


 流石、二人の「親」だな。あっという間に、二人の心を変えて見せた。ジロウに会うのは忍びないと言っていた二人の考えを、ジロウに会いたいようにさせたのは、二人のことをよく分かっているから出来たことなんだろうな。

 久々に顔を合わせても、そこは流石に家族だから出来たことかと感心し、しばらく三人が笑い合っている様子を眺めていた。


 ふと、たまが俺の手を引っ張る。たまの顔を見ると、ニコっと笑っていた。


「良かったね~、おじいちゃん」

「ああ。そうだな」


 たまも楽しそうにしているジゲンを笑いながら、眺めている。今となっては、たまもジゲンの家族の一人、こいつらの妹分のようなものだ。

 そして、俺も、闘鬼神も、ジゲンの家族だ。


 俺と同じように、全てをなくしたジゲンに、俺と同じように、多くの人間が集まっている。


 全てが終わった後、皆でまた、宴会でも開いて、……サネマサも呼んで、家族全員で、ジゲンを楽しませてやろうと思った。


 さて、その後も盛り上がっていく三人を眺めているが、遅くなる前に、アヤメにも会わないといけない。そう思い、ジゲンに目配せすると、ジゲンは頷いた。


「それで、ショウブ殿。儂とたまは上街に行っても良いかの?」

「え……ああ、そうじゃったな……え~っと……ジゲン殿の昔のことについて、アヤメに申し開きと言うか、自己紹介も兼ねて挨拶に行くということで良かったかの?」

「うむ。大丈夫かの?」

「問題ない。過去を偽っていたというのは少し気になるが、クレナに昔から住んでいる者にはそういった者も多いからの。そこまでは気にしておらんと思うぞ。

 それに、妾同様、アヤメもお主のことについては悪い印象を持っておらん。じゃから安心して、アヤメに会ってくると良いじゃろう」


 ショウブはそう言って、ジゲンとたまが上街に行くことを許可する。ジゲンとたまはショウブに頭を下げた。


「ふむ、すまんの、ショウブ殿」

「ありがとー!」


 たまがニコッと笑い頭を下げると、ショウブはフッと微笑み、たまの頭を撫でる。


「可愛い子じゃのお~……ほれ、菓子は要るかの~?」


 ショウブは懐から、まんじゅうを取り出し、たまに向けた。たまは目を輝かせて、それを受け取る。


「ありがと~! ショウブお姉さん!」

「妾を“お姉さん”とな? 本当に可愛い子じゃのお~」


 ショウブはうっとりしながら、たまの頭を撫でている。屋敷に居る女中たちの時といい、たまには女を魅了する何かしらの魅力というものがあるようだ。

 特にショウブには効果てきめんだな。普段から「お姉さん」と言われることなど、無さそうだからな。

 自分をそうやって見てくれることはやはり、嬉しいようだ。


 初めて見るショウブの様子に、俺も、ジゲンも笑いそうになるのをグッとこらえている。その後、ひとしきり、ショウブがたまの頭を撫でて満足すると、俺達は上街に向かおうとした。


 だが、ここで、今度はナズナが俺の方に寄ってくる。


「あ、あの……ムソウさん」

「ん? なんだ、ナズナ」

「えっと……先ほどちらっと聞いたのですが……シロウは下街で元気にやっているようですが、本当ですか?」


 おかしなことを聞くなあと俺とジゲンは顔を見合わせた。頻繁に連絡は手紙などで取り合っているようだが、それではやはり分からないのだろうと思い、ナズナの問いかけに答える。


「ああ。元気にやっているぞ。下街の住民たちからも、自警団の者達からも慕われているようだしな」

「そうですか……良かった」


 何故か少し顔を赤らめて、安心するナズナ。そんなに心配だったか。

 まあ、ジゲンの話を聞く限り、いつも一緒に居たらしいからな。弟のように思っているので当たり前かとジゲンと共に納得した。


 その後、俺達は門をくぐり、二人と別れた。


「では、ショウブ殿、ナズナ殿、またの……」

「うむ。いずれまた会おう、ジゲン殿。そして、たま、元気でな」

「お二人とも、お体にお気をつけてくださいね」

「じゃーねー!」


 たまは手を振る二人に、大きく手を振り返している。そして、俺とジゲンと手をつないで、上街を進んでいった。二人の姿が見えなくなったころ、ジゲンがポツリと呟く。


「何も……変わってないのう……」

「そりゃそうだろ。まだ五年しか経っていないからな」

「それもそうじゃが、責任感が強いナズナと、シロウのことになるとムキになるショウブ。子供の時から、本当に何も変わっておらんかった……会えて良かったのう……」

「そいつは、良かったな」


 二人の成長をしみじみと感じ取ったジゲンはフッと笑みを浮かべながら、歩いて行く。アヤメには何を感じるかな、と思いながら、ギルドを目指していった。


 ◇◇◇


 そして、ギルドに着くと、先に用を済ませるからと言って、ミオンの方に向かう。依頼が達成できなかった報告を行うことにした。二人を待たせ、ミオンの所に行くと、いつものように、机で何か作業をしている。


「よお、ミオン。ちょっといいか?」

「はい! あ、ムソウさん! 依頼達成の報告ですか?」


 ミオンは何か期待するような目になり、笑顔でそう言ってきた。


 ……言いづらいな。だが、それではいけないので、正直にすべてを話すことにした。


「いや、その逆だ。依頼不達成の報告に来た」

「……え」


 俺の言葉を聞き、ミオンの表情が固まる。そして、先ほどとは逆に、信じられないという目で、俺を見て、台に手をついて、俺の方にグイっと寄ってきた。


「む、ムソウさんが、依頼失敗!? 何かあったのですか!? また「不測の事態」が起こったのですか!?」

「まあ、そうなんだが……あのな――」

「ひょっとして何か強大な魔物が現れたとか!? ムソウさんにも手に負えないような、強い魔物が!?」

「違うって。実はな――」

「こうしてはいられません! すぐにアヤメ様に!」


 などと言いながら、慌てて席を立とうとするミオン。人の話を全く聞かない。なんで俺が、依頼を達成できなかったといって、そういう考えになるのだろうか。俺はアヤメの所に行こうとするミオンの肩を掴んだ。


「そうじゃないって。聞けよ、ミオン」

「いいえ! 緊急事態ですよ!? すぐにアヤメ様に!」

「聞けって、取りあえず俺の話を――」

「あ、そうです! ムソウさんも私についてきて状況を……」


 ……ダメだ。全然俺の話が耳に入っていないようだ。仕方ない。少し可哀そうだが……


 ―死神の鬼迫―


「きゃっ!」


 ミオンに弱めに殺気をぶつけると、ビクッとしてミオンの体が固まる。そして、怯えるような表情で、俺の顔を見てきた。


「……話を聞いてくれるか?」


 ぶるぶると震えながら、ミオンは何度も頷く。俺は殺気を解き、ミオンを椅子に座らせた。


「じゃあ、話すぞ。ちゃんと聞けよ。最後まで聞けよ。途中で席を立つなよ」

「……はい」


 シュンとして縮こまるミオン。ああ、この娘には死神の鬼迫は使いたくなかったなあと、思いながら、俺は今日の出来事を話した。


 そして、最後まで話し終えると、ミオンも不思議そうな表情を浮かべる。


「なるほど……そういうことだったのですね。ですが、今のところ、その冒険者の一行というのはこちらに来ておりませんね……」

「ふむ、そうか……まあ、何にせよ、俺が依頼を完遂しなかったのは事実だ。違約金を払うぞ」


 そう言って、俺は異界の袋を取り出し、金を払おうとした。だが、ミオンは手を出して、それを制する。


「いえ、その必要はありません。デスニアはすでに倒されているのですから、違約も何もないので」

「そういうものなのか?」


 ミオンは頷き、説明してくれた。


 本来ギルドでの依頼の受注というのは、討伐依頼の場合、依頼主による、必ず倒して欲しいという願いに対し、絶対に倒すという契約のもと行われる。だから、依頼を達成しなかったということは、その約束を反故にしたということになり、違約金を払わないといけない。

 まあ、主に、ギルドからの支給品の代金だが、それには依頼主からの報酬とは別に、払われている案件もあるのだという。

 一方、今回の場合は、俺は依頼をこなしているわけではないが、依頼内容であったデスニアの討伐はすでに済んでいるため、違約金を払う必要は無いという。何もないのに、俺がデスニアのはびこる湖を見に行っただけ、ということで、それが罰みたいなものだとミオンは語る。


「なるほど……今朝の苦労がすでに俺への罰ってところか」

「罰と言うと、聞こえは悪いですが、要はそういうことです。もちろん、その冒険者達には報酬を払うつもりですよ。証拠があれば良いのですけど、ムソウさんの報告を証言、ということにすれば、それも滞りなく済みますが、いかがいたしましょうか?」


 あ、そう言えば、デスニアの死骸は放置だったからな。素材の査定に出すことも出来ないので、その冒険者の一行は、ここで何を言っても、報酬を受け取ることは出来ないというわけだな。俺の一言次第で、例の冒険者たちへの報酬が決まるようだ。


 確かに、湖を汚染したということもあってこのまま報酬がそいつらに行くというのは納得できない。

 だが、デスニアの討伐という目的は果たしている。それも、他にデスニアの姿は見えなかったので、恐らく完全達成だ。

 悩みに悩んだが、冒険者たちに金が行かないとなると、向こうはそれで納得しないかもしれない。面倒なことになりそうだなと思い、一人納得した。


「わかった。一応、そいつらに報酬は渡るようにしてくれ。ただし、完全達成だったというのは不確実なことだ。相応に渡しておけ」

「はい、かしこまりました。それにしても、何とも言えない結果ですが、ひとまずムソウさんがご無事で何よりです……」


 ミオンはニコッと笑ってそう言った。この言葉を聞く限り、ミオンは俺のことを心配してくれていたようだ。屋敷の者達でも俺のことを心配しないというのに。

 ……ああ、やはりこの娘には死神の鬼迫を使うべきではなかった。俺はミオンに謝る。ミオンは、私も取り乱してごめんなさいと、俺のことを許してくれた。


 その後、俺はミオンに別れを告げて、ジゲンたちの元に戻った。


「よお、待たせたな」

「うむ……では、行くとしようかの」


 俺はジゲンとたまをアヤメがいつもいる執務室の前まで連れてきた。

 今日は急だから罠を仕掛けてはいないだろう。安心して、部屋の戸を叩く。すると、中から声が聞こえてきた。


「ん? 誰だ?」

「冒険者のムソウだ。昨日言っていた、ジゲンとたまを連れてきたが、今は大丈夫か?」

「おお、ムソウか! また、急な話だな~。まあいいや。入れよ」


 ふむ。やはり急な話だったようだが、今は大丈夫とのことだ。俺は扉を開けようと手を伸ばす。すると、ジゲンが俺の肩を叩いた。


「ムソウ殿。ここは儂が行こう」

「え゛ッ! 大丈夫かよ?」

「心配するでない。久しぶりに……じゃれてみようかの……」


 先ほどは安心したが、俺が声をかけた途端、扉の向こうから怪しげな気配が漂い始める。今回もか、と頭を抱えたが、ジゲンは笑いながら、俺にたまを任せて刀に手を置いた。

 ふと、たまを見てみると、ニコリと笑いながら、何かうずうずしているようだ。何かする気か?

 取りあえず、たまに危害が及ばないように、俺は少し下がる。ジゲンはそのまま戸を開けた。すると……


 ブンッ


 空気を切る音を立てて、ジゲンに刃が迫ってくる。いつものように俺が入ってくると思ったアヤメが、やはり攻撃を仕掛けたようだ。罠ではなかったが、この女、闘鬼神の説教を反故にしやがって……。


 だが、今日は俺ではない。ジゲンだ。意気揚々としていたアヤメの表情は、ジゲンを確認すると、目を見開き、刀を止めようとする。だが、その勢いは止まらない。


「うおっと!? 誰だッ!? てか、避けろ!爺い!!!」

「……遅い」


 ジゲンは、慌てるアヤメが持つ、眼前の刃を躱し、懐に飛び込む。それと同時にみぞおちに刀の柄を当てた。


「がフッ!?」


 一つうめき声を上げると、だらんとその場に突っ伏すアヤメ。それを見下ろしながら、ジゲンは肩をすくめる。


「……やれやれ……ムソウ殿に領主様から話があると聞かされて会いに来たのに、まさか斬られそうになるとはの……よほど、儂にここに住んで欲しくないようじゃの……」


 そう言って、ガクッと俯くジゲン。すると、たまがジゲンに駆け寄る。


「どうするの? おじいちゃん……」


 たまは泣きそうな顔で、ジゲンを見上げる。ジゲンは深くため息をつくと、たまの頭を撫でた。


「仕方ないのう……この街を出るしかないか……」

「やだよ……やだよお……」


 たまはジゲンの袴に顔をうずめた。ジゲンはしゃがみ、たまをギュッと抱きしめる。

 すると、痛みに悶えながら、アヤメが口を開く。


「ま、待てって! き、急に斬りかかって悪かった! 謝るから話を聞いてくれないか!?」


 アヤメが倒れながら、頭を下げると、たまはアヤメに近づき、しゃがみ込み、アヤメの顔を不安そうな表情で覗いた。


「……もう、おじいちゃんを襲わない?」

「襲わない! 絶対、襲わないよ、嬢ちゃん!」

「……おじいちゃんとお話しする?」

「するする! 何もせず、ただただ、爺さんと会話する!」


 たまの質問に何度も頷くアヤメ。手にしていた刀を放り投げ、必死にたまとジゲンに頭を下げている。すると、たまはニコッと笑った。


「やくそくだよ! りょーしゅさま!」


 そう言って、たまはジゲンに駆け寄り、ジゲンと共に手を叩き合っている。


 ……何だ、この茶番。よくもまあ、あんな上手なウソ泣きが出来たものだな。誰に教わったんだ、たま……。


 後で、聞いたところによると、会話の主導権をこちらにしたいと思ったジゲンが考えたらしい。そうすれば下手なことを言って、正体が知れるのを防ぐことが出来るからな。


 昨日言っていた、たまを連れていくことで話せることもあるというのはこのことか……。目論見通り、アヤメは恐らくジゲンにそこまで深い追及はしないだろう。たまを泣かせたくないからな。

 何となくたまが末恐ろしいということと、ジゲンの頭の切れに驚きつつ、アヤメに対しては、同情のような気持と、毎度襲ってくる度に、困ったことになっているなと呆れにも似た感情が、今日もまた渦巻いていた。


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