第175話 ジゲンの過去 ―最後の依頼に旅立つ―
しばらく、口をあんぐりと開けているたま。目の焦点が合っていない。相当驚いたようだ。俺ではなく、ジゲンに。
まあ、この二人はずっと一緒に過ごしていたからな。流石に、初めて見たジゲンの様子に、たまは驚きを隠せないようだ。
ひとまず落ち着くまで待っていようと、たまを眺めていると、ジゲンが近づく。そして、たまの頬をつついた。
「何時まで続けるつもりかの?」
「ハッ! ……う、うん……だいじょうぶだよ~……」
たまは目をこすりながら、ジゲンの顔を見つめる。ジゲンがニコッと笑うと、たまは段々と落ち着きを取り戻していった。
「おじいちゃん……すごいんだね。おじちゃんよりも、すごかった……」
「ほっほ、ムソウ殿には負けてしまったがの……。いやはや、本当に大したものじゃわい……」
ジゲンはそう言って、そばにあった岩に腰掛ける。たまも横に座り、一息ついた。俺も腰掛けて、しばらく黙って、ジゲンが口を開くのを待った。ここまで来て、無理やり話させるのもいけないと思っていた。
そうしていると、ゆっくりとジゲンが口を開く。
「さて……何から話せばいいかの?」
「話したいことから話せばいい……」
そうか、と頷くジゲン。たまも神妙な面持ちになり、ジゲンを見つめた。ジゲンはたまの頭を撫でながら、自身の過去を語り出した。
……ジゲンの正体は、先ほどの戦いで判明したように、ここクレナで、“刀鬼”、“大侠客”と謳われたジロウその人だった。シンムの里に生まれ、コモンやミサキと同じ十二星天、“武神”サネマサの古くからの親友である。
そして、自警団ジロウ一家を設立し、現在の頭領であるシロウ、幼いナズナやショウブを育て上げた、過去を持つ。また、その頃には親を亡くしたばかりで、幼いながらも領主となったアヤメを補佐し、立派な領主へと導いたこともある。
だから、傭兵をやっていたというのは嘘ではない。資料に名前が無かったのは単純に「ジゲン」という名の男はこの世にいないのだから当然のことだ。俺に嘘をついていなかったということを確認し、安堵した。
そして、たまとの関係。これも嘘ではない。五年ほど前にトウショウの里を出て、たまの家族が営んでいた温泉地で、傷を療養したという。その時の恩返しとして、たまの両親が死んだ後はたまの世話をしながら、生きていたという。
それを聞いたたまも少し安心したようだった。
「ありがとね……おじいちゃん」
「良いんじゃよ。また儂に刀を握る強さと、新たな目的をくれたのじゃからな……」
ペコっと頭を下げるたまをジロウは優しく撫でる。過去を隠し、たまに近づくことに何か思惑があるのかと勘ぐってしまったが、今まで聞いてきたジロウの言葉に嘘は無かったようだ。
とりあえず、ジロウの経歴に嘘はないことを確認した俺は、次の質問をする。
「では、ここを出て、消息を絶った理由は何だ? アンタだったら噴滅龍を倒すことだって出来たはずだ。それをしなかったのは、姿を隠すためだろう?
そこまでやって、正体を周囲に悟らせたくなかった理由を知りたい」
先ほどの手合わせで、ジロウなら、噴滅龍は狩れると思っていた。そうすれば、たまも温泉街で苦しむことは無かったはずだ。敢えてそうしなかったのは、自分が「ジロウ」だと、周りに隠すためだと思っている。
行方をくらましておいて、そんな目立つことをしたら、意味が無いからな。
皆から慕われていたジロウが、どうして、自分の存在を隠したかったのか、それが気になって仕方がなかった。
「ふむ……噴滅龍を倒せたかも知れないというのは、わからんのお。儂一人では難しいかも知れん」
「馬鹿言え。俺だって一人で倒せたんだからいけるだろ」
「それはムソウ殿が、“規格外”だからじゃ」
ああ……これはまた、話をはぐらかされそうだ。ここまで来たら、聞いておきたいのに。そう思いながら、ぐっと黙っていると、ジロウは微笑む。
「ほっほ、……まあ、そうじゃの……皆に黙ってここを出て、心配かけてしまったのは申し訳なかったの……仕方ない……話すとしよう」
そう言って、ジロウは自らが消息を絶った理由について語り出す。親友であるサネマサや、アヤメたちにでさえ、秘密にしているほどだ。俺とたまは真剣にジロウの話を聞いた。
◇◇◇
時は、二十年以上前にさかのぼる。その頃のジロウは、傭兵団「牙の旅団」に所属し、当時の仲間たちには、壊蛇を倒し、人界の英雄となっていた“武神”サネマサを筆頭とし、何人かの者達が所属していた。
トウショウの里を拠点にしながら、方々の依頼に応え、闘っていたという。ただ、その頃には、サネマサの方が武王會館設立のために、牙の旅団を離れることが多く、また、ジロウ達も歳をとっていたので、昔よりはそこまで、闘いは無かったということだ。
そのため、アヤメに領主として独り立ちするのを見届けた後は、主に家で静かに過ごしていたのだという。
そして、以前言っていたように、シロウやナズナ、ショウブなど、壊蛇の一件で、孤児となった者達や、俺のように花街の浮浪者を拾い、住む場所と共に、子供たちに教育をしていたのもこの時期である。大人には仕事を、子供たちには手習いをしながら、ゆっくりと、毎日を過ごしていた。
だが、そんなある日、トウショウの里の一人の貴族から、牙の旅団に依頼が入る。珍しいなとは思いつつも、依頼の詳細を聞いてみると、どうやら、未確認の強大な魔物が出現したとのことだった。
壊蛇の襲来後、そういったことは無かったこともあり、その魔物を倒すのは、当時クレナで最強だった傭兵部隊である牙の旅団に任せるという話になったという。
「ふむ……強大な魔物か……どんなものだろうな……」
依頼の詳細を聞いたジロウが、集合場所へ向かおうと準備をしていると、タッタッタと三つの小さな足音が駆け寄ってくる。
そして、ジロウの背中に重みがかかった。誰かが、おぶさりに来たらしい。こういうことをしてくるのは大抵……
「なあなあ、ジロウ! どこか行くのかの?」
「ショウブ、急に背中に飛びつかんでくれねえか? びっくりするだろう……?」
背中にしがみついていたショウブを下ろすジロウ。ショウブはいたずらっ子のような顔をして、ニヤ~っと笑っていた。
今年で10歳くらいというのに、その割には幼いな。心も……体も……。
そう思いながらジトっとショウブを見ていると、その後ろから声がかけられる
「ジロウさん、どこかいくの?」
「……さみしいよ~」
声の主はシロウとナズナだった。こちらはまだ、五歳ほどだ。この反応はまあ、年相応だなと苦笑いする。自分が居なくなることは稀だったからな。旅の準備をしているとどこかへ行ってしまうと思い、不安になってしまったようだ。
ジロウは優しく、三人の頭を撫でた。
「すこし、家を開けるだけだ。すぐに帰って来るから、楽しみにしておけ」
そう言って、ニコッと笑うと、三人ともパッと笑顔になり、頷く。
やれやれ、嫁も居ないのに、すっかり人の親になってしまったなと、ジゲンはその時思ったらしい。
そして、屋敷の者たちに見送られながら、屋敷を出た。街を歩いているといろんな奴に声をかけられる。
「あ、ジロウ様! お出かけですか?」
「「様」なんてつけるな、むず痒い……。久しぶりに依頼があってな。これから討伐だ」
「ほえ~、歳食っても、流石はジロウ様ですね!」
「頼りになるわ~!」
街の住民たちは、そう言って、ジロウに近づく。そして、畑で作った野菜などを手渡していった。
それらを受け取っていると、人ごみをかき分けて、そろいの羽織を身に着けた男たちがやってくる。
「ん? なんだ……人が集まってるなあと思っていたら、頭領だったか……」
それは、当時のジロウ一家でジロウの補佐を務めていた者と、その部下たちだった。
「よお、見回りか? お疲れさん」
「どうもっす。頭領はこれからどっか行くんすか?」
「ちょっと依頼があってな。まあ、約四日後には帰って来るから、それまで屋敷の皆の世話、頼むぞ」
「がってんっす!」
補佐の男と、部下たちは、ジロウの言葉に頷く。拾ってきたときは、ずいぶんとやせ細り、ほとんど老人のようだったが、一緒に過ごすうちに、いつの間にか、力も付けて、この街の治安を守ってくれていることを確認したジロウは、喜んだ。
そして、ジロウは自警団の者たちと、住民たちと別れ、仲間たちとの集合場所に向かう。そこは、今で言うギルド、つまりアヤメの家の前である。すでにそこには牙の旅団の他の者たちも居た。
だが、辺りを見回したが、サネマサはいない。まあ、あいつはレインで最近、“武神”という名の二つ名を賜り、他の偉大な迷い人達と共に、「十二星天」と名乗って、人界の復興に忙しいみたいだからな。今日ここに居ないというのは理解できたジロウだった。そう思いながら、久しぶりに会う牙の旅団の者達に声をかける。
「よう、なんだか、懐かしいな」
仲間たちに近づくと、皆、パッとジロウの方を向いて、出迎えてくれた。
「お? 相変わらず、綺麗な眼してんな! それを見るのも確かに懐かしく感じる」
「よせよ。男に綺麗な眼と言われても、何も嬉しくないな」
「じゃあ、女にならどうかな?」
「お前は女というより……いや、やめておこう」
そんなやり取りをしながら、盛り上がる牙の旅団。男女合わせて十人ほどの部隊だが、それぞれの腕前は確かなもので、皆と共に、多くの魔物や、山賊を倒し、壊蛇の襲来さえも乗り切った、ジロウにとって、誇れる仲間たちだった。
「そういやあ、まだ、あの家で浮浪者たちを囲っているのか?」
「浮浪者というのは辞めてもらおう。皆、俺の大切な家族さ」
「あ、悪い……で、そのことなんだけどよ、俺達も何か手伝おうか?」
「いや、今のところは大丈夫だが……そうだな。子供たちに武術を教えたいときには呼ぼうとしようかな」
「お? サネマサみたく、道場でも開くつもりか?」
「あそこまで大したものじゃないが、俺の所の者達だけでも、強く生きていて欲しいからな」
「なるほどね。じゃあ、その子たちがもっと大きくなったら、私たちも手伝うよ」
「その時までに俺達が死んでなきゃ良いがな!」
最後の一人がそう言うと、またも笑いが沸き起こった。今は落ち着いてそれぞれ過ごしているとは言え、元は……というか、今も自分たちはクレナ最強の傭兵部隊だ。歳をとって、戦えなくなっても、そうやって皆と共に新しい世代に、強くなってもらうために一緒に闘いの術を教えるというのは悪くないかも知れないと、ジロウは思った。
そんなことを思っていると、たどたどしい口調の若い女の声が聞こえてくる。
「み、皆さん。き、今日……本日は、集ま……お集まり……」
「ん? 何だ、アヤメか。そんなに固くなるなよ。普段通りで良い」
何か話しづらそうにする、女。そこに居たのは、壊蛇の一件で親を亡くし、若くして領主となったアヤメだった。
この時、アヤメは18、9歳くらいで、ジロウの補佐から独り立ちしたとはいえ、やはりまだ、領主というのは大変らしいようで、少しぎくしゃくしながら、牙の旅団に歩み寄ってくる。
「ふ、普段通りって……い、いや、でも……」
ジロウの言葉に目を白黒させて、困り出すアヤメ。すると、牙の旅団の面々がニカっと笑って、アヤメの周りに集まった。
「ジロウの言うとおりだよ! ほら、肩の力を抜いて!」
牙の旅団の数少ない女戦士の一人、シズネはそう言って、アヤメのカチコチの肩を揉む。アヤメはビクッとして、顔を赤らめた。
「うわっ! ちょ、ちょっと、シズさん! くすぐったいですっ!」
「う~む……表情も少し、固いな。どれ、俺がもう少しほぐしてやろう」
部隊の中でジロウと、よく飲み比べをしていた男、コウシはアヤメの領頬を掴み、いじり出す。
「ほ、ほうはん! はへへっへ!(コ、コウさん!やめてって!)」
「あ、コウ、それは辞めてやれ。アヤメもまだ嫁入り前なんだ。男に顔を触られるのは嫌だろう」
牙の旅団で最も冷静かつ、的確な作戦を立てる、参謀ミドラが冷静にコウシを止める。あ、そっかと辞めて手を放すコウシ。すると、アヤメは両頬を抑えながら、俯く。
「はあ、はあ、はあ。酷いです……」
ガクッと落ち込む、アヤメを見て、他の牙の旅団の者達も大笑いする。恨めし気に皆を見つめるアヤメにジロウはそっと近づき、頭を撫でた。
「お前の気持ちや、心意気ってやつは分かるが、俺達の前では、普段通りで良い。そんなに固くなるな。
ただまあ、もう少し堂々とはしていろよ。領主として舐められたら終わりだからな」
「み、皆が居るのに……私が堂々とは出来ないよ、叔父さん」
「何時かきっと出来るさ。お前は俺の姪で、俺の兄貴の子供なんだからな」
ジロウが優しくそう言うと、アヤメはコクっと頷く。
……まあ、今となっては、堂々としすぎな感じもするがな。微笑まし気にその光景を眺めていた、当時の牙の旅団も、今ではアヤメが、“暴れ姫武将”と呼ばれるようになることなど、想像も出来なかっただろう。
さて、アヤメとそんなやり取りをしていると、今回の依頼を出した貴族がやってくる。そいつを見た瞬間、牙の旅団の者たちはジロウ含め、皆眉を顰めた。
「ほう……牙の旅団がそろい踏みとはな……。なかなかに壮観だ」
「ケリス卿……か」
そこに居たのは、当時すでにトウショウの里に居を構え、他の貴族たちの統率を図っていた、ケリス・ゴウン卿だった。
牙の旅団が眉を顰めたのも、仕方ない。若いアヤメを出し抜き、クレナの統治を狙っている節が多々あったからである。一応は、クレナが故郷の十二星天サネマサと、ジロウが睨みを利かせているということもあり、表立ったことはしていないが、時々、アヤメの統治にまで口を挟むということはこの頃からしていたようだ。
昔から、娘のようにアヤメを可愛がっていた牙の旅団の者達にとっては、嫌悪する対象として不思議では無かった。
気まずそうにするアヤメに、敵意をむき出しにする牙の旅団の面々を眺め、ジロウは深呼吸し、気を落ち着かせる。
「ふぅ~……それで、今回の依頼の詳細はどのようなものだ?」
「ふむ、聞いての通り、未確認の強大な魔物が現れたとの情報が入っている。今、ここクレナを始め、人界各地は壊蛇によってもたらされた被害の修復作業に追われている。十二星天の者たちもそれで忙しいようだからな。クレナ最強の傭兵部隊であるお前たちに、その魔物の調査、出来れば討伐を頼むというわけだ」
「その未確認の魔物が現れたという情報はどこからだ? 根拠のない情報は信用できない。情報元を明らかにしてくれ」
「私の私兵だ。……まさか、貴族であり、神人である私の言葉が信じられないとでも?」
ケリスはそう言って、ジロウを睨む。その瞬間、牙の旅団の者たちは腰を落とし、臨戦態勢を取ろうとした。
だが、ジロウはそれを制する。ここで、ケリスとぶつかっても何も良いことは無い。深くため息をつき、ジロウは頷いた。
「分かった。その依頼、受けよう。……で、場所なんだが……」
などと、ジロウとケリスは、依頼についての打ち合わせを始める。聞けば、俺が、大鎌カマキリたちと闘ったあの密林にその魔物は出たということらしい。あそこは元々、魔物の数が多く、密林自体も広いということもあり、そういった未確認の魔物や、強い魔物が確認されやすい場所だったという。
今回もそれだろう、とその時のジロウは思っていた。そして、一通りの資料と付近の地図を受け取ると、ジロウが口を開く。
「分かった。まあ、様子を見て、俺達だけでは無理そうならサネマサに魔法を飛ばすからな。アンタはここで、ゆっくりと待ってろ」
「フッ……さすがは“刀鬼”ジロウだな。いい報せを期待している」
そう言って、二人は握手をする。その後、ケリス卿は去っていき、牙の旅団とアヤメは、ふう、と力を抜いた。
「やれやれ、依頼主がケリス卿とはな。面倒なことになりそうだ」
依頼の資料を眺めながら、ボソッと言うと、アヤメが申し訳なさそうに近づいてくる。
「ごめん、叔父さん。どうしても断れなくって……」
「気にすんなって。断る気なんざ、さらさらねえよ。そんなことしたら、お前にまた迷惑がかかるからな」
そう言って、アヤメの頭をポンポンと優しく叩くと、コクっと頷くアヤメ。
「ただ、お前らはもう少しおとなしくしてろよ。コウシに至っては手が刀に届いていたぞ」
と、先ほどまでピリピリしていた仲間たちをジロッと睨むジロウ。
「だってよ……アイツ嫌いだ。アヤメちゃんの邪魔ばっかするし……」
「そうだよ。いつかきっとぎゃふんと言わせてやるんだからね!」
「ジロウも随分と、丸くなったものだな……」
などと、ジロウの言葉に言い返す牙の旅団の面々。ジロウは深くため息をついて、頭を抱える。
「あのなあ、あの馬鹿を斬ったところで、アヤメの立場は悪くなるだけだ。サネマサが許しても、貴族が許さなかったら意味ねえだろ。
あと、俺は別に丸くなってねえよ。いつも冷静なお前が冷静じゃなくなったら、誰がこの部隊の暴走止めるんだよ。もし、サネマサがここに居て、お前らと同じ考えだったらと思うとぞっとするぞ」
ジロウが説教をすると、恨めし気にジロウを睨む仲間たち。ジロウの言うことは筋が通っているし、正しい。何も言い返せないようだ。しばらくジロウとにらみ合っていたが、はあ、とあきらめたかのようにため息をつき、ジロウの言葉に頷いた。
「わかった。取りあえず、今回の依頼はこなそう。その魔物を倒したら、まだ俺達には力があるということの証明にもなって、ケリスへの牽制にもなるだろうしな」
「そうね。それが一番、良い解決法かもね」
「ここで仲間同士で言い争っていても意味ないからな……」
取りあえず、ジロウに納得したようだ。ジロウは安心して、皆の方に寄っていく。そして、荷物の確認を終えた後、アヤメが用意してくれた馬車に乗り込んだ。
「じゃあ、アヤメ。行ってくるよ」
「気を付けて……叔父さん……それに……皆も……」
「な~に、ちゃちゃっと終わらせてすぐ帰ってきてやるからよ!屋敷の奴らと安心して待ってな!」
「ジロウの言うとおりだ。また旅の話、聞かせてやっからな!」
「アヤメちゃんも、お仕事頑張ってね~!」
「帰ったら、また、手伝えることは何でも手伝うからな!」
牙の旅団は、頷くアヤメに手を振って、馬車を動かした。
いつものようにすぐに帰れる。そしたら、またここで皆とゆっくり生きていこう。そう信じて、牙の旅団はその日も笑って、トウショウの街を出ていった。
……だが、それが、アヤメが最後に見た牙の旅団の姿だった。




